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「ヤングアニマルZERO」「ゴッドタン」の名物プロデューサー・佐久間宣行インタビュー|令和のエンタメ戦国時代、みんなに届く鍵は“個人の本気(マジ)の熱量

ヤングアニマル(白泉社)の新増刊・ヤングアニマルZEROが9月に誕生して早2カ月。「ベルセルク」の三浦建太郎・スタジオ我画による新連載をはじめ、「うらみちお兄さん」の久世岳が描く若手芸人のシェアハウス物語、「覆面系ノイズ」で知られる少女マンガ家の福山リョウコの青年誌デビュー作、押切蓮介のヤンキー読み切りといったマンガ好きに刺さるラインナップが話題をさらった。

11月9日に発売される第2号に先がけ、コミックナタリーではテレビ東京の番組「ゴッドタン」の名物プロデューサー・佐久間宣行へのインタビューを実施。ヤングアニマル編集部が「いま自分がイチバン面白いと、部員が思う作品が載ってる雑誌」と豪語するZEROは、マンガ好きとして知られ、自身も挑戦的な番組づくりを続ける佐久間に刺さるのか。話題は佐久間のマンガ愛から仕事論、そしてエンタメが溢れかえる現代においてコンテンツの魅力を届ける方法まで多岐にわたった。

取材・文 / 三木美波 写真 / 高原マサキ

マンガ誌はCOMIC CUEの作り方に戻ったほうがいい?

ヤングアニマルZERO、読みましたよ。読みながら「やべえ、全部1話じゃん!」と思って。

佐久間宣行

──新増刊の第1号ですからね(笑)。

いや、掲載作がほとんど新連載の1話か読み切りってすごくいいなって思いました。読みやすい。

──佐久間さんがマンガ、アニメ、舞台といったエンタメ作品を貪欲に摂取しているのはラジオやSNSから伝わってきますが、マンガだとどんなジャンルがお好きですか?

けっこうなんでも読むんですよ。「ダンジョン飯」「進撃の巨人」は好きですね。最近だと「映像研には手を出すな!」や「水は海に向かって流れる」「メタモルフォーゼの縁側」「もういっぽん!」も面白かったし。それによしながふみさんの出された同人誌もほぼ持ってますよ。「執事の分際」とか「西洋骨董洋菓子店」とかの。

──マンガがお好きなのが伝わってくるラインナップです。マンガ雑誌は読みますか?

週刊少年ジャンプ(集英社)とか月刊アフタヌーン(講談社)とか、編集作業の合間に読んだりしますね。「ONE PIECE」はもう単行本が家に置けない量なので、ジャンプで読むことにしてて。

──もう100巻に届きそうですからね。

そうそう。「本棚3つ分以上の本を持たない。その中でやりくりする」って嫁との約束があるんですよ。「『ONE PIECE』を入れたらもう限界だな……」って。

──本棚3つ分だと断腸の思いでのセレクトがありそうですね。佐久間さんは、雑誌のいいところってどこだと思いますか?

一番いいのは、目当ての作品を読んだあとに偶然の出会いをすることだと思うんですよ。「あ、俺こんなマンガが好きだったんだ」って発見できる。ただ僕は電子も紙も区別なく買うタイプなんですけど、電子だと雑誌でも単話買いができたりするのでその出会いは少なくなりますよね。例えばZEROだったら、僕は三浦建太郎さんの「ドゥルアンキ」を読みたくて買うと思うんです。でも雑誌を読んでみたら「数学ゴールデン」という作品もかなり面白くて。そういう出会いがあるので、雑誌1冊まるごと買うことは意義があると思います。

──まだ見ぬ傑作との出会いを求めて雑誌を買う人もいると思うんですが、「読まない作品がいくつもあるなら雑誌を買うのはもったいない」という意見もよく聞くんです。

なるほど、偶然の出会いをそもそも求めてない人もいるでしょうしね。とにかく今の時代はコンテンツが多すぎて、面白いか面白くないかわかんないものを読む時間がないのはわかります。僕、最近の傾向として「信頼する人が推薦しないと読まない」っていうのもあると思うんですよ。「『このマンガがすごい!』で入選したら読む」とかも似たような感じかもしれませんが。

──例えば佐久間さんの感性を信頼している人が、佐久間さんがラジオやSNSでオススメしたマンガを手に取ってみる……というような?

1996年発行のCOMIC CUE Vol.2(イースト・プレス)。「カバー・バージョン特集」を謳い、松本大洋の「ドラえもん」、和田ラヂヲの「あしたのジョー」など、作家たちによる名作マンガのカバーが掲載された。

そうです。雑誌はもしかしたら、COMIC CUE(※)みたいな作り方に戻ったほうが読者は買いやすいのかもしれない。「誰かが全部選びました!」みたいな。信頼できる推薦者と雑誌のマッチングがうまくいけば、ブーストがかかっていくような気がするんです。

※COMIC CUE

1994年にイースト・プレスから創刊されたマンガ雑誌。創刊号からVol.3までは江口寿史が責任編集長として雑誌を支え、Vol.4以降は編集者の堅田浩二が編集長を担当。「愛」「コラボレーション」など毎号1つのテーマが決められ、それに沿ったアンソロジーが掲載された。

──一案ですけど、有名な編集長や編集者の名前を全面に出した雑誌とか?

そういう感じです。例えば、「進撃の巨人」編集の川窪(慎太郎)さんとかは知ってる人が多いじゃないですか。

──バックさんの愛称で親しまれてますよね。

「彼が本気で面白いと思ったものが4つ入ってます!」って言われたら、「1回は読んでみようかな」となったりする。今の時代は薦める人と薦め方がけっこう大事になると思います。

「ドゥルアンキ」版の「蝕」が怖い

──ヤングアニマルZEROで、面白いと思った作品はありましたか?

ありましたよ! まずは「ドゥルアンキ」。もうね、王道で本当にワクワクします。創刊号に2話まで入ってるのもすごくいいですよね。1話までだとどうなるか全然わかんなかったんですが、2話まで読んだら不穏なところもありつつ、面白い活劇が始まりそうだと思って。

──不穏というのは?

神々の中にも派閥があるというのはなんとなく伝わってくるし、人間の争いもちゃんとある世界なんだと思ったんです。主人公のウスムガルが住んでるのはノアの箱船っぽいし、もしかしたら人間が何回か失敗を繰り返した世界なのかなって勝手に考えて。あと、ウスムガルが魅力的でした。やっぱり主人公がいいマンガって、当分は読んでみようかなと思います。

三浦建太郎「ドゥルアンキ」第2話より。

──先日三浦さんにインタビューをしたんですが、両性具有である主人公のキャラメイクにはかなり力を入れたそうです(参考:ヤングアニマルZERO特集 「ドゥルアンキ」「ベルセルク」三浦建太郎インタビュー&スタジオ我画潜入レポート)。

確かに、少年っぽさと少女っぽさがうまい具合にブレンドされてて絶妙なかわいさなんですよね。

──三浦さんの「ベルセルク」はお読みになっていますか?

もちろんです。高校1年生くらいのときにハマって、大学生のときに「蝕」を迎えて本当に傷付いて……。

──ああ……。

かなり傷が深くて「蝕」からマジで2~3年読まなかった思い出があります。鷹の団のエピソードがめちゃくちゃ面白かったから余計に切なくて……。だから、「ドゥルアンキ」も油断できないんですよ。すっごくかわいらしい雰囲気で始まったじゃないですか。でも……。

──佐久間さんの中に「蝕」の記憶が。

そう、トラウマがある。「ドゥルアンキ」版の「蝕」にまた傷付けられるのではないかっていう(笑)。さすがにもう40代なので耐えられると思いますけど。

──ほかに面白かった作品は?

「メテオライト」と「ニラメッコ」、それにさっきもちょっと出ましたが「数学ゴールデン」が刺さりました。

──では「メテオライト」から順番に聞いていきます。超巨大隕石の落下があと4時間後に迫るという絶望の中、少年たちののんびりした最後を描いた短編で、作者の夕海さんはこれがデビュー作になります。どこが気に入りましたか?

純粋にめちゃくちゃ面白い。「隕石が落ちて死ぬ」ってSFのモチーフとしてはけっこう“あるある”ですけど、それにあえて挑戦して。パニックものにしないで、家の中だけの人間関係にしたのがすごくいい。

夕海の読み切り「メテオライト」より。

──雰囲気もZEROの中では異質ですよね。

ええ。これがデビュー作なら新人だと思うのですが、絵柄のタッチは90年代の僕が好きなマンガにけっこう近くて懐かしい感じがしました。ちょっとサブカルの匂いがするじゃないですか、こういうのすごく好きなんです。よしもとよしともさんとか南Q太さんとか、COMIC CUEみたいなテイストが僕には感じられて。

──夕海さんは浅野いにおさんのアシスタントだそうです。

へー! そうなんですか!