小野賢章が語る「マイティ・ソー バトルロイヤル」|“宇宙一の裏切り王子”ロキと、声優・小野賢章の共通点

「アベンジャーズ」シリーズでおなじみのソーを主人公にしたバトルアクション映画「マイティ・ソー バトルロイヤル」が、このたび11月3日に全国公開される。

これを記念し、コミック、音楽、映画の各ナタリーによる3ジャンル横断企画が始動。コミックナタリーでは声優・俳優・歌手など多岐にわたるジャンルで活躍し、大のマーベル映画好きだという小野賢章へのインタビューを実施した。ソーの弟で、“宇宙一の裏切り王子”と称されるキャラクター・ロキに縁を感じるという小野。その言葉の真意とは……? 記事末には小野のフォトギャラリーも用意しているので、併せてお楽しみあれ。

取材・文 / 大谷隆之 撮影 / 佐藤類

「アベンジャーズ」の最新作と言ったほうが近いかもしれない

──小野さんはマーベル映画の大ファンだと伺いましたが、原作マンガもお好きだったりするんですか?

小野賢章

これがまったく読まないんですよ。手を出したら際限なくハマッちゃいそうな気がして。今はまだ我慢しています。去年「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」を観たときは、あまりに面白くてつい原作も買いそうになったんですけど。なんとか思いとどまりました。

──じゃあ、今のところは純粋に映画として楽しんでいると。

はい。まだ(日本語吹き替え版の)声優としては出ていないですけど(笑)。今日も気合いを入れて、マーベルTシャツを着てきました。これ、ロゴのところが3Dプリントになっているんですよ。

──本当だ! ではさっそく今日の本題。11月3日に公開される「マイティ・ソー バトルロイヤル」。小野さんはどうご覧になりました?

「マイティ・ソー バトルロイヤル」より、主人公・ソー。

めちゃめちゃ面白かったです! まず驚いたのは、シリーズ1作目の「マイティ・ソー」(2011年)や2作目「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」(2013年)とは、作品のトーンがガラッと変わっていたこと。以前はけっこうシリアスな感じも強かったけれど、今回は思いっきりエンターテインメントに振り切っているというか……。冒頭から笑えるシーンが満載でしょう?

──オープニングは、ソーがいきなりスルト(ソーの故郷アスガルドと敵対する炎の巨人)に囚われているという意外な展開で……。

そうそう。詳しい内容は観てもらってのお楽しみですけど、冒頭、あの巨人とのやりとりがまずおかしかった。緊張感を高めておいてからの、あえて外す感じとかは、完全にコメディタッチで……。で、バトルシーンが始まると、BGMにレッド・ツェッペリンの「移民の歌」が流れるという。

──ハードロックの名曲中の名曲ですよね。

僕、高校時代は軽音楽部だったので、あのギターのリフが聞こえてきた瞬間にテンション上がりました(笑)。名曲すぎてちょっとパロディっぽくなっている感じも含めて、今作の世界観にすごくハマッてた。ああやって昔のヒット曲をがんがん流すやり方は、これまでの「マイティ・ソー」シリーズより、むしろ「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」(2017年)に近いのかなと思いました。あと、軽妙な会話とバトルシーンが絶妙にミックスされているところは、やっぱり「アベンジャーズ」シリーズの流れかな。

──たしかにソーも、アベンジャーズのメンバーですからね。つまり小野さんにとって本作は「マイティ・ソー」シリーズの3作目というよりは、「アベンジャーズ」の最新作という印象が強かった?

「マイティ・ソー バトルロイヤル」より。左からソーとハルク。

だと思います。設定も「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」から2年後とのことですし。そもそも僕は、マーベル映画で最初に観たのが1作目の「アベンジャーズ」(2012年)で。そこを起点に「アイアンマン」シリーズや「キャプテン・アメリカ」シリーズなど、各キャラ単体の作品へと遡っていったタイプなので。「マイティ・ソー バトルロイヤル」もその流れで違和感なく入っていけました。

──マーベル映画は、多数の作品が複雑に絡み合って、マーベル・シネマティック・ユニバースといわれるひとつの世界観を構築していますが、いろんなアプローチができるのも大きな魅力なんですね。

もちろん、公開された順に観ていければベストなんでしょうけど……。でも、実際は僕みたいな順番で好きになった人も多いと思うんですね。そうやって作品数を増やしていけば、ヒーロー同士の繋がりも次第に見えてくる。今回も父親のオーディンを探しに地球に降り立ったソーが、ドクター・ストレンジと絡むシーンがあったりして。内心「おおっ!」と思いました。

ファンのニーズにきっちり応え、ロキがやっぱり裏切ってくれる

──新監督に抜擢されたタイカ・ワイティティは、ニュージーランド出身の42歳。俳優・コメディアンとしても活躍し、ディズニー・アニメーション「モアナと伝説の海」(2016年)の脚本にもクレジットされています。

なるほど。やっぱりギャグや笑いのセンスがよくわかっている方なんですね。ソーの弟のロキなんて、前の「マイティ・ソー」シリーズとは完全にキャラが変わっていて驚きましたけど、それを聞いて納得しました。

──今回のロキ、なんだか別人みたいでしたね。

「マイティ・ソー バトルロイヤル」より、ソーの弟・ロキ。

最高でした! 彼はもともと、兄に対してすごいコンプレックスを抱えているキャラじゃないですか? 実は出自にも秘密があって。「マイティ・ソー」の1作目は、その兄弟の葛藤がストーリーの軸になっていた。で、ソーに負けてアスガルドから追放されたはずのロキが、次の「アベンジャーズ」では新たな敵と手を組んで地球を侵略するわけですけど……。今回はそういう陰鬱な感じが払拭されて、めちゃめちゃファンキーな神様になっていました(笑)。

──ソーと並んで、マシンガンみたいな武器をガンガン撃ったりして。

そうそう(笑)。でも、ロキを演じたトム・ヒドルストンって、表情とかセリフの言い回しとかは飄々としているでしょう。そこがソーを演じたクリス・ヘムズワースの熱血ぶりとは対照的で……。いいコンビだと思いました。いただいた資料を読むと、トムさん、実は6年前にソー役でオーディション受けていて。監督にロキ役を薦められたみたいですね。

──へええ、そうなんだ。すごいエピソードですね。

小野賢章

シリアスなお芝居とギャグの切り替えが瞬時にできる人なんでしょうね。今回「マイティ・ソー バトルロイヤル」を観ても思いましたけれど、コメディっぽい空気感がずっと続いていても、この人がちょっとキリッとした顔をしただけで作品の雰囲気がピシッと締まる。キャラクター的にも、一瞬「あれ、ロキって正義の味方になったの?」と思わせつつ、裏切るところはしっかりと裏切ってくれて。とにかくファンのニーズにきっちり応えている。この映画を観てロキがますます好きになる人、少なくないと思います。

「マイティ・ソー バトルロイヤル」
2017年11月3日(金・祝)より全国ロードショー
「マイティ・ソー バトルロイヤル」
ストーリー

「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の戦いから2年。アベンジャーズでもっともアツい雷神ソーの前に、復讐に燃える死の女神ヘラが現れた。究極の武器ムジョルニアをもたやすく破壊するヘラによって、ソーと義弟である宇宙一の裏切り王子ロキは宇宙の辺境・惑星サカールへ飛ばされてしまう。そこでエキセントリックな独裁者グランドマスターに捕らえられ、格闘大会へ出場させられたソー。目の前に現れた対戦相手は、なぜか大会の“絶対王者”として君臨するアベンジャーズの盟友ハルクだった。そんなとき、ヘラがアスガルド崩壊をもくろんでいると知ったソーは、ハルクとロキ、さらにワケあり女戦士のヴァルキリーと即席チーム“リベンジャーズ”を結成し、故郷へ急ぐ。

スタッフ / キャスト

監督:タイカ・ワイティティ

出演:クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、ケイト・ブランシェット、イドリス・エルバ、ジェフ・ゴールドブラム、テッサ・トンプソン、カール・アーバン、マーク・ラファロ、アンソニー・ホプキンスほか

小野賢章(オノケンショウ)
1989年10月5日生まれ、福岡県出身。「ハリー・ポッター」シリーズの日本語吹替版で全作にわたり主人公ハリー・ポッター役を担当した。俳優、声優、歌手などジャンルを超えて活動し、近年の出演作にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」、劇場アニメ「映画『聲の形』」「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」、テレビアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」「恋愛暴君」、実写映画「燐寸少女 マッチショウジョ」など。2018年にはメインキャストとして出演するテレビアニメ「アイドリッシュセブン」「封神演義」が1月にスタートするほか、劇場アニメ「映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』」の公開も初春に控えている。