ソーとロキの関係は、「アイナナ」の天と陸に近い?
──ちなみに今回の「マイティ・ソー バトルロイヤル」は、ずっと対立していたソー&ロキ兄弟によるチーム結成も大きなポイントですが、これまで小野さんが出演された作品で、思い出深い兄弟役ってなんでしょう?
来年1月から始まる、「アイドリッシュセブン」がそうですね。僕が演じる七瀬陸っていうキャラクターは、双子の弟。子どもの頃から病気がちで、お兄ちゃんに対して劣等感を抱いてるという設定なんですよ。一方で斉藤壮馬くんが演じている兄の九条天は、見た目は小悪魔風なんだけど内面は超完璧主義者というアイドルで。そのプロ意識にずっと憧れているという。
──おお、ちょっとロキっぽい。
「マイティ・ソー」1作目のロキかな(笑)。あと、血は繋がっていないけど兄弟に近い存在だったら、少し前に放送された「終わりのセラフ」というアニメもそうかもしれませんね。これは同じ孤児院で育ったんですけど、僕だけ吸血鬼に連れ去られてしまい、10年後に再会するというお話。こちらもまた、どちらかというと僕が、内面に複雑な思いを抱えたロキ的な立ち位置だった気がします。
──そういう役柄、意外に多いんでしょうか?
そうですね。ロキっぽい屈折キャラのお仕事をいただくことは、自分でもけっこう多いと思います。たぶん声質もあるんじゃないかな。おかげで世間では、「小野賢章がやるアニメキャラって、けっこう不幸になるよね」なんて言われてたりするんですけど(笑)。
──そういう、少し湿り気のあるトーンを出すコツってあるんですか?
それはテクニカルな側面よりも、むしろ気持ちの部分が大きい気がしますね。やっぱり原作や脚本あっての声なので……。屈折した心を抱えたキャラクターを表現しようと思えば、自然にそういう声質になっていく。ただ、役作りのうえで大事にしていることはあります。
──具体的にはどういうことですか?
思いの強さ、でしょうか。屈折したキャラクターは大抵、心の中に強い感情を押し込めてるんです。例えば信じていたものに裏切られ続け、「お前だけは見放さないでくれ」と思っているとか。あるいは誰かに認めてもらいたくて、そのためには手段を選ばないとか。人には言えない心の叫びみたいなものは、常に意識しています。その気持ちが結局、声に滲むと思うので。
──それってまさに、父親オーディンに認められたいと願っていた前作までのロキに当てはまりますね。
そうかもしれない(笑)。
──そういえば小野さんもお兄さんいらっしゃるんですよね?
兄貴がいます。実は今日、誕生日なんですよ。
──そうなんですか。おめでとうございます。いくつ離れてるんですか?
2つ上です。ソー、ロキと違って、うちはとても仲良いですよ(笑)。
仮面ライダーや戦隊ものに夢中になっていた、あの感覚
──(笑)。映画に話を戻しまして、ほかに見どころを挙げるとするならば?
やっぱり、ソーとハルクのバトルですかね。「アベンジャーズ」好きとして、この2人がなぜ戦うのかは予告編の映像を観たときからずっと気になっていたんです。実際、僕は予備知識をまったく入れずに観たので、「こいつは、本当にハルクなのか?」「ハルクに見えるけど、バナー博士ではない別のハルクなんじゃないか?」とか。スクリーンを観ながらいろいろ考えちゃいました。
──ブルース・バナー博士に戻る前から、けっこう話してましたね。
「何だよ、普通に会話できてんじゃん」みたいな(笑)。あと個人的にツボだったのは、ソーとハルクが別の惑星ですったもんだしている間に、最強の敵である死の女神ヘラが、故郷アスガルドをどんどん制圧しているじゃないですか。その緊迫感との落差がすごいので、この2人がどんなに苦難に陥っても「一方その頃……」みたいなコメディ感が漂って、どこか笑えてしまう。それもまた、「マイティ・ソー バトルロイヤル」の好きなところでした。
──なるほど。
あと、そうだ! 僕、日本人にとって「マイティ・ソー」シリーズの魅力は、やはり浅野忠信さんが出演されてることも大きいと思います。本作でも記憶に残るシーンがありましたし。日本の俳優さんがマーベル映画に出演している事実そのものに夢があるなと。毎回、エンドロールでも日本人の名前を探したりもしますね。もしかしたら自分にも、スタッフとしてマーベル映画に関わる人生もあったんじゃないだろうか、とか。想像がいろいろ膨らみます。
──小野さんにとって、マーベル映画の魅力というのはそもそもどこにあると思われます?
シンプルに、心の底からワクワクさせてくれるところかなあ。もしかすると、子どもの頃に仮面ライダーや戦隊ものに夢中になっていたあの感覚に近いのかもしれない。ヒーローたちがピンチに陥るドキドキ感と、でも最後には絶対勝つという安心感。加えて、それぞれ単体でも強いヒーローたちが協力して戦うという集合感(笑)。しかもそれが、ハリウッドのクオリティで映像化されていて……。初めて「アベンジャーズ」を観たときに、大人になってこんな素敵な気分を味わえるんだって、びっくりしたんです。
──出演者もスタッフも超一流ですからね。
そうですね。実は僕、韓国映画もすごく好きで。昨日もパク・フンジョン監督の「新しき世界」(2013年)という作品を観てすごく面白かったんですけど。そっちはとにかく重い。ハッピーエンドなんてほとんどなく、「世の中そんな甘くないぞ!」みたいなテイストの映画ばかりなんですね。でも、僕の中では両方アリ。現実を突きつけてくる韓国映画と、純粋なエンタメとして楽しめるマーベル作品。2つのラインがあるほうが、僕にはいいみたいです。
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ヴァルキリーが見せるドヤ顔に、「きたー!」って
- 「マイティ・ソー バトルロイヤル」
- 2017年11月3日(金・祝)より全国ロードショー
- ストーリー
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「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン」の戦いから2年。アベンジャーズでもっともアツい雷神ソーの前に、復讐に燃える死の女神ヘラが現れた。究極の武器ムジョルニアをもたやすく破壊するヘラによって、ソーと義弟である宇宙一の裏切り王子ロキは宇宙の辺境・惑星サカールへ飛ばされてしまう。そこでエキセントリックな独裁者グランドマスターに捕らえられ、格闘大会へ出場させられたソー。目の前に現れた対戦相手は、なぜか大会の“絶対王者”として君臨するアベンジャーズの盟友ハルクだった。そんなとき、ヘラがアスガルド崩壊をもくろんでいると知ったソーは、ハルクとロキ、さらにワケあり女戦士のヴァルキリーと即席チーム“リベンジャーズ”を結成し、故郷へ急ぐ。
- スタッフ / キャスト
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監督:タイカ・ワイティティ
出演:クリス・ヘムズワース、トム・ヒドルストン、ケイト・ブランシェット、イドリス・エルバ、ジェフ・ゴールドブラム、テッサ・トンプソン、カール・アーバン、マーク・ラファロ、アンソニー・ホプキンスほか
- 「マイティ・ソー バトルロイヤル」公式サイト
- 「アベンジャーズ」(@AVG_JP) | Twitter
- Marvel (@MarvelJP) | Facebook
- 「マイティ・ソー バトルロイヤル」作品情報
©Marvel Studios 2017 / ©2017 MARVEL
- 小野賢章(オノケンショウ)
- 1989年10月5日生まれ、福岡県出身。「ハリー・ポッター」シリーズの日本語吹替版で全作にわたり主人公ハリー・ポッター役を担当した。俳優、声優、歌手などジャンルを超えて活動し、近年の出演作にミュージカル「ロミオ&ジュリエット」、劇場アニメ「映画『聲の形』」「劇場版 黒子のバスケ LAST GAME」、テレビアニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」「恋愛暴君」、実写映画「燐寸少女 マッチショウジョ」など。2018年にはメインキャストとして出演するテレビアニメ「アイドリッシュセブン」「封神演義」が1月にスタートするほか、劇場アニメ「映画『文豪ストレイドッグス DEAD APPLE』」の公開も初春に控えている。