テヅコミの電子書籍、絶対買いますよ
──ちなみに「サーチアンドデストロイ」が連載されているテヅコミが、この春から電子書籍としても配信されるようになります。梶田さんは電子書籍って使われていますか。
もう90パーセント以上が電子ですね。本来なら部屋を圧迫するほどの蔵書がスマホ1つに収まっちゃうわけですから、やはりこちらを選んでしまいます。あと、読みたいと思ったときにタイムラグなく手に入るのもいいですよね。ただ紙には紙の強みがあって、例えばサイズ感もそうですし、見開きのインパクトっていうのは敵わない。作家さんが想定されている迫力を、余すことなく受け止められるのはやっぱり紙。とはいえ、そこを差し引いても電子の便利さを最近だと選んでしまいます。マンガ家さんとか出版社さんにとっても、読んでもらえることが結局大事だと思うんですよ。電子で、そりゃ多少画面が小さくなったりしても、最優先すべきはやっぱり読んで面白さに触れてもらうことでしょう。俺は電子書籍に大賛成で、だからテヅコミの電子化も喜ばしいですね。
──バックナンバーも手に入れやすくなったりしますもんね。テヅコミも創刊号から配信されていくそうです。
絶対買いますよ。書店に行くことが減っちゃったから、紙の新しい雑誌にはなかなか気が付けないんですよね。「サーチアンドデストロイ」も知らなかったもんなあ(創刊号をパラパラとめくりながら)。
──テヅコミではいろんな作家さんが「火の鳥」「奇子」といった手塚作品をオマージュした作品を連載しています。「サーチアンドデストロイ」と同じタイミングでは、マンガ家トリオ・武礼堂さんによる「新約・リボンの騎士」1巻が発売されます。
現代的でかわいらしい絵柄ですよね。サファイア姫が手塚先生とは違う方向でかわいくなっていて。思えば男装ヒロインというのも不朽のテーマですよね。
──絵柄もそうですが、第1話からいきなり“もう1人のリボンの騎士”というワードが登場したりして、物語的にも新しい視点で楽しめると思います。
おお、これも大胆ですね。「火の鳥」のリメイクはどれですか?
──「火の鳥」は和田ラヂヲさんが描いていて、変化球的な作品になってます。第1話では主人公が、マイホームを買った同僚の家に、お祝いを持って遊びに行く話なんですが、その手土産として“火の鳥”が登場して……。
これは……マンガの「火の鳥」を差し入れに持ってきてるってことですか?
──いや、この“火の鳥”がなんなのかは、結局読んでもわからないんですよ(笑)。マンガかもしれないし、そういう名前の銘菓なのかもしれない。しかも第2話では打って変わって、火の鳥という名前の寿司屋が舞台になるんです。
すごい発想だな……。これは和田ラヂヲさんにしか描けない(笑)。それを許しちゃう手塚プロさんもすごいですよね。これ、基本的にはその作家さんがやりたい原作を描いていらっしゃるんですか?
──基本的はご希望を伺って、それを描いてもらっているそうです。
へぇ。やれるものならやりたいって作家さん、いっぱいいると思いますよ。それこそ俺、羽海野チカ先生と仲良くさせていただいているんですが、手塚作品、特に「リボンの騎士」の大ファンで、描けるものなら描きたいって言ってましたから。まぁスケジュールがそれを許さないでしょうけれども……(笑)。
手塚マンガを読まないのは、マンガ好きとして損
ああ、ちゃんと短編を題材にされている方もいるんですね。俺の好きな短編も取り扱ってほしいな。
──長編ではない作品だと、何がお好きなんですか?
いくつかありますけど、「百物語」がめちゃめちゃ好きですね。冴えない武士が悪魔と契約して、一度はものすごい富と権力を手に入れるんですけど、やがて破滅していく。その途中で武士が悪魔と愛情を育んでいって、最後は結局武士が死ぬんですけど、悪魔が契約を破棄して、手に入れるはずだった魂を逃がしてあげるんですよ。「どこへでも飛んでお行き!」って。めっちゃ切ないんです。あと「荒野の七ひき」とか「安達が原」とか……手塚先生の自伝的な「ゴッドファーザーの息子」も好きですね。そういう短編にもスポットライトを当ててほしいです。あ、これ手塚先生のマンガも載ってるんですね。
──そうですね、毎号いろんなテーマが設けられて、その切り口に沿った手塚作品が再掲されています。それこそ有名ではない作品との出会いもあると思います。
いいですね。テヅコミは想像もしてなかった組み合わせや出会いが楽しめるのが魅力だなって思います。マンガ好きの人って昔と比べても増えたと思うんですが、手塚治虫を一切読んでないって世代も出てきてるんですね、我々からしたら信じがたいことに。
──「ブラック・ジャック」という名前は知っていても、1話も読んだことないって人もいるでしょうね。
マンガが好きなのに手塚治虫を読まないのは、もったいないですよ。これは懐古とか老害の説教じゃなくて、絶対に読んだらハマる。テヅコミに関しては、旧来からの手塚作品ファンは放っておいたって読むと思うんです。そういった人たちじゃなくて「手塚マンガ? 世代じゃないから全然知らない」「名前だけは知ってるけど、実はちゃんと読んだことない」っていう人たちの入門にも最適だと思うんですよ。なんせリメイク元のマンガも載せてるじゃないですか。どの作品も、第1話を読んだら絶対「続きを読みたい!」って思ってもらえるはずなんで。
──ちょうど面白くなってきたくらいで“続く”になりますもんね。
そうそう。「どろろ」も目がポロッと取れて、「えっ、ここからどうなるの?」ってところまでだった(笑)。だからテヅコミは、今読める一番新しい手塚マンガと、昔から存在するオリジナル手塚マンガの、両方の美味しいとこ取りができる雑誌なんじゃないでしょうか。これはぜひとも、1冊だけでもいいから開いてみてほしいっていうのが、俺からこのインタビューを読んでくださった皆様へのメッセージですね。繰り返しますけど、手塚マンガを読まないのはマンガ好きとして損しちゃいます。あんまりこういう、押し付けがましいことは言いたくないですけれども……。とにかく俺は今、「サーチアンドデストロイ」と出会えた喜びに震えています。この物語、絶対に最後まで見届けますよ。
- カネコアツシ「サーチアンドデストロイ①」
- 発売中 / マイクロマガジン社
-
コミックス 680円
「捜し出し、破壊しろ!!」
手塚治虫の名作「どろろ」を大胆にアレンジした、カネコアツシ渾身のSF異形譚がここに開幕!!
内戦後──兵士や労働力として大量に生産されたクリーチャーと呼ばれるロボットが街に溢れ、あるものは路上に、あるものは裏社会に身を置き、市民との軋轢を生んでいた。
ある夜、盗みを働きヤクザクリーチャーに捕らえられた孤児ドロの前に、一見、人間ともクリーチャーともつかない少女が現れる。
獣の毛皮を身にまとい、怒りに満ちた眼差しで親玉キックに襲いかかる少女。
その機械の四肢には、最強の武器が装備されていた……!
手塚治虫生誕90周年記念マンガ書籍「テヅコミ」にて掲載された「サーチアンドデストロイ」が待望の単行本化!
©カネコアツシ
「どろろ」©TEZUKA PRODUCTIONS
Produced by MICRO MAGAZINE
- 「テヅコミ」第7号
- 発売中 / マイクロマガジン社
手塚治虫生誕90周年記念マンガ書籍「テヅコミ」第7弾!
「七色いんこ」「どろろ」「バンパイヤ」などの名作を人気作家がトリビュート!
過去の手塚治虫作品も収録! 月刊・全18号予定。
©TEZUKA PRODUCTIONS
Produced by MICRO MAGAZINE
「新約・リボンの騎士」
©武礼堂
「リボンの騎士」©TEZUKA PRODUCTIONS
Produced by MICRO MAGAZINE
- マフィア梶田(マフィアカジタ)
- 1987年10月14日生まれ、中国・上海出身。フリーライターとして、ゲームサイト「4Gamer.net」や声優情報誌などで記事を執筆している。また「杉田智和のアニゲラ!ディドゥーーン」「RADIO 4Gamer」などでラジオパーソナリティとしても活躍。そのほか「シン・ゴジラ」に出演するなど俳優としても活動の場を広げている。「GOHOマフィア!梶田くん」ではマフィア梶田を“材料”に、「ポプテピピック」の大川ぶくぶが4コママンガを執筆。