コミックナタリー Power Push - 「スーパーマリオくん」
祝!50巻発売 “まだやってる”マリオくんと沢田ユキオの25年間
吉本新喜劇版マリオ=「スーパーマリオくん」
──先ほど「ゲームから離れたところで『マリオくん』を描いてる」とおっしゃってましたが、沢田さんが「マリオくん」を描く上で一貫して大切にしているものって何かあるのでしょうか? というのも、初期の頃の単行本を読み返していると、絵柄だったり作品のテンションだったり、細かな変化は見られても、基本的なところはまったく変わらないのがすごいなと思ったんです。沢田さん自身の中にブレない柱みたいなものがあるのかなと。
僕の中の柱は吉本新喜劇ですね。それはずっと変わらないです。26年ぐらい大阪で育ってきたので、日常が吉本だったんです。だから「マリオくん」を描き始めた頃から、「吉本の舞台でマリオをやったらどうなるんだろう」っていうのがあって。それを今も描き続けている。僕自身、お笑いが好きっていうのが根底にあるんでしょうね。だから「マリオ」のゲームをやったことがない子でも笑えるようなマンガにするっていうのは最初から決めて描いてました。
──家庭によっては、コロコロは買ってもらえるけどゲームは買ってもらえない子というのもきっといますもんね。確かに「マリオくん」はどんな子供でも笑えて楽しめる作品だと感じます。
読者の子供たちから送られてくる手紙の中には「イジメられてるんです」とか、結構重い内容のものもあるんですよ。でも「『マリオくん』を読んでるときだけは笑えます」とか「つらいことを忘れます」って書いてくれてる。僕がその状況をどうこうできるわけではないんだけど、「嫌なことがあっても読んでる間は忘れられます」って言ってもらえるような存在になれているなら、それでいいのかなとは思いますね。
「まだやってるの?」は一種の挨拶
──そういったファンレターなどもですが、描き続けてきた25年の間には多くの読者の方からいろいろな反応をもらったのではないかと思います。
これは僕の自慢話なんですけど……確か1991年だったかな。僕の初めてのサイン会に、当時小学生だった曽山一寿さんが来てくれていたらしくて。それを曽山さんから直接聞いたときはとってもうれしかったですね。彼は僕のことを“心の師匠”と呼んでくれてるんですが(笑)、そんな彼が今やコロコロコミックの柱となるようなマンガ家になっている。「ケシカスくん」を連載しているムラッセ(村瀬範行)も「親子2代で『マリオくん』のファンです」って言ってくれたことがあって。そうやってたくさんのマンガ家がどんどん僕を追い越していくわけですよね。なんだか悔しい気持ちもあるけど、僕の作品を読んでくれていた人たちが同じ雑誌で活躍しているのはやっぱりうれしいですね。
──それも長く連載を続けてこられた沢田さんならではのお話ですね。曽山さんのように、当時小学生だった読者も今では大人になっている。そんな人たちがコロコロを目にする機会があると思わず口にしてしまうのが「『マリオくん』ってまだやってるんだ」という言葉だと思うのですが。
「まだやってるの?」っていうのは、一種の挨拶的なことかもしれないですね。よくも悪くもだとは思いますけど(笑)。
──「まだやってるんだ」って、言葉の聞こえはあまりよくないかもしれないですけど、愛のある発言だと思うんです。「マリオくん」はずっと作風も変わらないですし、変わらない笑いを届けてくれる。そこに安心感を覚えての言葉なんじゃないかなって。
ああ、そういうことなんですかね。でもありがたいことだなって思いますよ。悪く取ろうと思えば取れるんですけど、それはそれで全然いいかなって。そこから話が広がってもらえればいいかなと思いますし。「『ポケモン』(穴久保幸作「ポケットモンスター」)もまだやってるんだ」とか言ったりして。そこから曽山さんの「でんぢゃらすじーさん邪」とか、ほかの作品の話になっていくとコロコロにとってもいいんじゃないかなと思いますね。「マリオくん」が話のきっかけになってもらえれば。
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連載25周年を迎えたゲームギャグの金字塔、50巻の大台に!
記念巻だけに、マリオたちのボケも大加速!
「スーパーマリオ3Dワールド」の舞台で、ますます自由に暴れ倒すぞ~!
幻の未収録原稿「スーパーマリオRPG編」の前編も掲載だ!
「スーパーマリオくん」の主人公・マリオが、これまでの軌跡を振り返る! 沢田ユキオによる哀愁ゲームギャグ「スーパーマリオッさん」を収録。また沢田のインタビューも掲載される。そのほか同号では藤子不二雄(A)を大特集。「忍者ハットリくん」などの名作の再録に加え、20名の著名なマンガ家たちから寄せられたトリビュートイラストを公開するほか、人気アプリゲーム「パズル&ドラゴンズ」のコラボ企画も予定されている。
沢田ユキオ(サワダユキオ)
1953年生まれ、大阪府出身。1980年にテレビランド(徳間書店)にて「のってるヒーローくん」でデビュー。代表作に「スーパーマリオくん」「オレだよ!ワリオだよ!!」(小学館)、「スーパーマリオブラザーズ2」(徳間書店)など。