コミックナタリー PowerPush - 「美少女戦士セーラームーン」-Petite Étrangère-
セラミューが目指すは世界進出!平光琢也(脚本・演出)、佐橋俊彦(音楽)、小佐野文雄(原作担当編集)のDVDリリース記念座談会
基本的に1オクターブで曲を書いてる(佐橋)
──新生セラミューは、オール女性キャストというところが大きな変化ですね。佐橋さんは男性キャストオンリーのテニミュ(ミュージカル「テニスの王子様」)を手がけてこられましたが、その真逆の今回、楽曲を制作するにあたっていかがですか?
佐橋 ほんと、なんでこんなにいつも僕の仕事は偏ってるんだろうって感じで(笑)。僕は、ミュージカルの基本ってオペラだと思ってるんです。やさ男の役はテノール、カルメンみたいな悪い女はメゾソプラノとか、持っている声の質で役柄が決まってくる。女性オンリーでやると、ソプラノ、メゾソプラノ、アルトだけみたいに、半分くらいの声域を使ってやることになるんですね。それはテニミュもそうで、あちらは下のほうの声域オンリーになってるんですけど。でもテニミュは男が男役を演じるだけなのに対して、セラミューは男役も女性がやるわけです。音の幅は狭くなるのにキャストの方々がどのくらいできるのかわからなかったから、最初すごく不安だった。
平光 いやあ、大和悠河のタキシード仮面、カッコよかったですよ。
佐橋 でも今回は彼女のパートが一番難しかった。宝塚の元男役の人に男性として歌ってもらうというのが初めての経験だったので……。どのくらいまで下(の音)が出るのかとか、ミュージカルは結構ハードなアクションもするけど、動きながら男声の音域が音楽としてどう浮き出るかは未知数でした。
平光 うーん、でもすごくハマってましたよ。四天王の彩夏涼さん(ゾイサイト役)も元宝塚でしたよね。
佐橋 はい。結果としては、宝塚の人たちの男になりきる能力ってのはさすがにすごかったですね。音域のレンジとしてはさほど女性役と変わらないところを歌ってるんだけど、声の出し方とか演じ方で男に聴こえるので非常に驚きました。ほかのキャストのも含めだいたい今は1オクターブにほとんどのメロディが収まるように曲を書いてるから、聴こえてる感じより実際はすごく狭い音域でやってるんですよ。
平光 なるほどね。歌詞に関して言うと、去年は僕と演出助手の井関(佳子)さんとで書きましたが、今年はリン(・ホブデイ)さんっていうイギリス人の女性を起用しましたので、ちょっと違った感じになってくると思います。英語の歌詞も増えますね。
佐橋 若いキャストたちのトレーニングがもう少しできたら、キーももっと広がっていくと思うんですけどね。
平光 そうですね。でもあの子(セーラー戦士役のキャスト)たちは未熟なところもあるけど、去年は稽古初日から本番ラストまででものすごい進化しましたよね。特に芝居に関して。
小佐野 すごかったですね。そこがミュージカルの良さだと思うんです。何度も観に行くと、キャストがどんどん成長していくのが見れる。
佐橋 たまに奇跡が起きるよね。
小佐野 武内先生も去年は結構通い詰めて、もうベタ褒めしてましたね。いつも立ち上がって拍手してましたから。
平光 うん、あんなに毎日のように来てくれたこと、昔はなかったかも(笑)。
小佐野 (笑)。
マーキュリーだけは僕の意見を反映させてもらいました(小佐野)
──キャストは武内先生も含めたオーディションで選ぶということですが、ポイントとなるのは歌唱力より、キャラクターに近いかどうかでしょうか。
平光 やっぱり外見は大事ですね。もちろんそれだけではないですが。
小佐野 武内先生と平光さんが選ぶ人ってだいたい一緒で、感覚が似てるんだなってすごく思いました。
──今年の新作ではプルートやちびうさが新たに登場し、マーキュリー役が新たにキャスティングされていますが……。
小佐野 マーキュリーだけは僕の意見を反映させていただきました。
平光 マーキュリーはいつも、小佐野さんが選ぶことになってるんです。
小佐野 (今年からマーキュリーを演じる)小山百代さんは北海道から受けにきた子なんですけど。小さい頃からずっと「セーラームーン」を観て育ってて。とにかくこの作品をリスペクトしてるんですね。去年の公演を観に来てくれていたこともオーディション後に知りました。
平光 去年の(マーキュリー役の松浦)雅とかもそうでしたけど、当時「セーラームーン」が大好きでごっこ遊びをしてたような子が、いま演じてるっていうのは不思議だし、運命的なものを感じますね。あと今年の振付を担当するのは、20年前にちびうさを演じてた竹中夏海さんなんですよ。そういうところにも巡り合わせを感じるなあ。
小佐野 ジュピター役の高橋ユウさんなんて、背が大きかったから子供の頃ジュピターしかやらせてもらえなかったって言ってましたけど、彼女はオーディションのときから、まこちゃんのまんまでしたね。もう木野まこととして生きてきたんじゃないかと思うくらい。
平光 これからもこの5人で、できるだけ何年もやっていってほしいですね。チーム力って大事ですから。
──みなさんすごく仲が良いですよね。プライベートでも遊びに行ったり。
平光 仲良いんですよー。稽古中だって、お互いがお互いの芝居にダメ出ししあってるんですよ。「そこはさ、マーキュリーこうしたらいいよ」「じゃあヴィーナスそこはこうよ」って。「あのー、演出家の僕もいるんですけど」って感じ(笑)。周りから「平光いいなあ、女の子ばっかりのとこで稽古できて」って言われるけど、怖いもんですよ。
佐橋 はははは。吊るし上げられないようにしないと。
平光 基本的には稽古場に男ひとりみたいな感じなので、たまに殺陣の先生とかがくるとちょっとホッとしますよね。今年の稽古は7月半ばから始まりますけど、どうなるかな。女性オンリーだと、アクション面でもやっぱり男性がいるのとは変わってくるんですよね。男性は一発蹴りを入れるだけでバク宙で飛んでくれたりして派手に作れるけど、全員女性だとどうしても迫力が薄くなる。代わりに美しく、ダンスで立ち回りしていきます。女性オンリーというのはデメリットもあるのかもしれないけど、最終的にはとてもキラキラした価値観が出ていいですね。
佐橋 ビジュアル的にスマートな作品だなと僕も思いました。汗臭さとかまったくないですもんね。
平光 ないですね(笑)。
- ミュージカルDVD「美少女戦士セーラームーン」-La Reconquista- / 2014年7月9日発売 / [DVD2枚組] 8424円 / EVIL LINE RECORDS / KIBM-446~7 / 本編約124分+特典映像約60分 / フルカラー28ページブックレット
- ミュージカルDVD「美少女戦士セーラームーン」-La Reconquista-
(c)武内直子・PNP/講談社・ネルケプランニング・ドワンゴ
特典映像DISC
ももいろクローバーZ「ムーンライト伝説」(カーテンコール)/ももいろクローバーZ日替わり恋愛お悩み解決アプリ「わたしはアナタのキューピッド」/バックステージ映像/イベント出演映像/など
キャスト
大久保聡美(セーラームーン/月野うさぎ)
松浦 雅(セーラーマーキュリー/水野亜美)
七木奏音(セーラーマーズ/火野レイ)
高橋ユウ(セーラージュピター/木野まこと)
坂田しおり(セーラーヴィーナス/愛野美奈子)
大和悠河(タキシード仮面/地場衛)
原作:武内直子(講談社刊)
脚本・演出:平光琢也
音楽:佐橋俊彦
制作:ネルケプランニング
- ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Petite Étrangère-
- ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」-Petite Étrangère-
(c)武内直子・PNP/講談社・ネルケプランニング・ドワンゴ
東京公演:2014年8月21日(木)~2014年8月31日(日)AiiA Theater Tokyo
大阪公演:2014年9月5日(金)~2014年9月7日(日)梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
キャスト
大久保聡美(セーラームーン/月野うさぎ)
小山百代(セーラーマーキュリー/水野亜美)
七木奏音(セーラーマーズ/火野レイ)
高橋ユウ(セーラージュピター/木野まこと)
坂田しおり(セーラーヴィーナス/愛野美奈子)
大和悠河(タキシード仮面/地場衛)ほか
原作:武内直子(講談社刊)
脚本・演出:平光琢也
音楽:佐橋俊彦
平光琢也(ヒラミツタクヤ)
演劇集団「円」所属の脚本家・演出家。1983年に結成されたコメディグループ「怪物ランド」のメンバーとして全作品の脚本・演出を担当。ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」をはじめ、数々のアニメミュージカルの演出を手掛ける。また、アニメ音響監督として、多数の作品を演出。主な舞台演出作品に、ミュージカル「HUNTER×HUNTER」、ロックミュージカル「BLEACH」、モーニング娘。「江戸っ娘。忠臣蔵」、演劇集団 円「ファウスト」(橋爪功主演)、「リチャード三世」「マクベス」「オセロー」(金田明夫主演)ほか。
佐橋俊彦(サハシトシヒコ)
1986年東京芸術大学音楽学部作曲科卒業。1988年、CBSソニー主催「ニューアーティスト・オーディション1988」で、最優秀アーティスト賞、及びクリスティンリード賞受賞。東京ディズニーランド5周年目よりパーク内におけるショー(キャッスルショー、スターライトファンタジーなど)の音楽を担当。94年アジア大会オープニングイベント音楽担当。NHK紅白歌合戦のオープニング曲を91年から94年まで4年連続で作曲し、99年郵政省簡易保険局NHK制定の「みんなの体操」を作曲する。現在では、映画、テレビドラマ、アニメ、オリジナルミュージカルなどの音楽を担当し、クラシックからロックまで、幅広い作曲家として活躍中。
小佐野文雄(オサノフミオ)
武内直子氏編集担当。通称おさぶ。1986年講談社入社。なかよし編集部、週刊少年マガジン編集部を経て現在月刊少年ライバル編集部に在籍。セーラームーン20周年プロジェクトにも参加中。担当作品は、「きんぎょ注意報!」「コードネームはセーラーV」「美少女戦士セーラームーン」「カメレオン」「娘。物語」「地獄少女」「モンスターハンターオラージュ」など。