劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」の《前編》/《後編》が全国の映画館で公開されている。
劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」は「美少女戦士セーラームーン」シリーズの最終章となる原作第5部“シャドウ・ギャラクティカ”編を描いている作品。すべてを破壊し、宇宙を支配しようと目論む新たな敵“シャドウ・ギャラクティカ”と、強く美しいセーラー戦士たちの最後の戦いが描かれる。本作では主人公・エターナルセーラームーン / 月野うさぎたちの前に、3人組のセーラー戦士“セーラースターライツ”が突如登場。3人は人気アイドルグループ“スリーライツ”として活動しながら、うさぎたちに急接近していく。セーラースターライツを演じるのは井上麻里奈、早見沙織、佐倉綾音の3人。常にクールなセーラースターファイター / 星野光(セイヤ・コウ)を井上、冷静沈着で知的なセーラースターメイカー / 大気光(タイキ・コウ)を早見、あざとかわいさとシニカルさを併せ持つセーラースターヒーラー / 夜天光(ヤテン・コウ)を佐倉がそれぞれ演じている。スリーライツは劇中で楽曲「流れ星へ」を披露。さらに《後編》のオープニング曲「セーラースターソング」を、水樹奈々演じるセーラー火球とともに4人で歌い上げている。
「流れ星へ」「セーラースターソング」を含めて、映画のテーマソングを収めたEP「劇場版『美少女戦士セーラームーンCosmos』テーマソング・コレクション」が6月30日にリリースされた。これを記念して音楽ナタリーでは井上、早見、佐倉の3人にインタビュー。「美少女戦士セーラームーン」シリーズに参加した心境やキャラクターの魅力、歌唱した2曲について語ってもらった。
取材・文 / 岸野恵加撮影 / 曽我美芽
劇場版「美少女戦士セーラームーンCosmos」《後編》予告映像
ついに「美少女戦士セーラームーン」の世界に入れた
──まずは「美少女戦士セーラームーン」という作品に参加することが決まったときの気持ちを教えてください。
井上麻里奈 オーディションで出演が決まったのですが、なかなか信じられなかったです。子供の頃に夢中で観ていた作品だったので。台本をいただいて、香盤表に自分の名前が載っているのを見て、ようやく「現実なんだ」と実感が少しだけ湧きました。でも収録中も、「これは現実なのかな?」と思いながらやらせていただいていた気がします。完成した映像を観たときに、ようやく「本当にあの『美少女戦士セーラームーン』の世界に自分が入ったんだな」と実感が湧いたというのが正直なところです。
早見沙織 私もずっと「美少女戦士セーラームーン」に憧れて育ったので、オーディションを受けさせていただくだけでも「今日は人生の中での1つの記念日だ」くらいに思っていたんです。出演が決まったとご連絡をいただいたときは信じられなくて。うれしさももちろんありましたが、アフレコの日が近付くにつれて大きなプレッシャーに苛まれ……前日もドキドキのあまり、握りしめた台本がしっとりとしてきて(笑)。でもセーラースターライツを一緒に演じるのがこの2人と知った瞬間、すごく安心しました。
佐倉綾音 私は年齢的に、「美少女戦士セーラームーン」を幼少期に通っていなかったのですが、それでもとても大きいタイトルであることはもちろんわかっていたので、なんとなく現実味がないままオーディションを受けていました。特に何にも言われることなく、手応えもないまま終わったので、後日決定の連絡をいただいたときは、正直「私でいいのだろうか?」と。スリーライツの中では夜天が一番ひょうひょうとしていて何を考えているかわからないから、「私のこの、重大なことをわかりきっていないところがキャラクターとぴったりだと思ってもらえたのかな?」と考えたりしていましたね(笑)。
──完成した映画本編をご覧になって、まずどう感じましたか?
井上 「自分がついにセーラームーンの世界に入れた」といううれしさがまずありました。純粋なファン目線になると、やっぱりうさぎちゃんに気持ちを重ねて物語を追ってしまうので、うさぎちゃんにとってつらい場面が続くことに胸を痛めつつ……すごく愛のあふれる作品になっているなと。現代の「美少女戦士セーラームーン」を愛している皆さんが作ってくださった作品の中に、当時の90年代らしさも多数ちりばめられていると感じましたね。
早見 前後編を通して、観ながら胸がギューッとなって。ドキドキ、ハラハラ、不安……いろんな思いを感じた分、《後編》のラストを迎えたときには「セーラームーン、本当にありがとう……」という気持ちでいっぱいになりました。
佐倉 私は「美少女戦士セーラームーンCrystal」のときに、モブの小さい女の子役で1回だけ出演させていただいたことがあるんです。そのとき感じたどこか和やかな雰囲気とは全然違って、今回の最終章は最終決戦といった空気感に様変わりしていましたね。うさぎちゃんが相手にしているものの大きさが、とても壮大に描かれていて。劇場の大スクリーンで観るのがとても楽しみです。
この3人でやると知った瞬間、すごく安心感がありました
──皆さんが演じたセーラースターライツ / スリーライツは、絶望に追い込まれるうさぎにとってキーパーソンとなる存在です。とても個性豊かですが、それぞれの魅力を教えてください。
井上 星野さんは“王道カッコいい”です。さっぱりとした男気あるところが魅力ですね。今回の劇場版は原作に忠実に作られているので、意外とクールで好戦的な面も出しつつ、スリーライツのリーダーとして真っ直ぐに物事に立ち向かっていく。ついていきたいと思わせてくれるところが素敵です。
早見 大気さんは常にどっしりしていて、ブレない1本の軸を持っています。落ち着いていて頭もいいけど、控えめなところもあったりして。「能ある鷹は爪を隠す」じゃないですが、「もっと前面に押し出して私たちに見せてください!」と思わせるような、奥深さがある性格が魅力だと思います。
佐倉 夜天はこの中だとずば抜けて性格が幼くて、末っ子気質。麻里奈さんがよく言ってくれるんですけど、“小悪魔感”みたいなものが魅力的で、毒舌を吐くところもありつつ、セーラースターライツの中ではスパイス的な存在なのかなと。守りだけじゃない姿勢の子ですね。
井上 毒舌でも憎めないよね。
佐倉 そうなんですよ。毒を吐かれてもなんか気持ちいい、みたいな(笑)。
早見 むしろ言われたい、みたいな(笑)。
井上 嫌味を言ってても嫌いになれない。
佐倉 顔もかわいいし。
──皆さん普段の声よりちょっと低めで演じていますよね?
井上 はい。カッコよくなればいいな、と思いながら演じました。劇中でうさぎちゃんが「星野の声がまもちゃん(地場衛)に似てる」とふわっと言うんですけど、すごくプレッシャーで。そこはあまり意識せず、星野さんのまっすぐさや実直な部分が伝わればいいなという思いで演じていました。
早見 私は大人の余裕をなんとか出せたらいいなと。大気さんはもう、大樹のようにドーンとそこにいるんですよ。その落ち着きと、しゃべっているとふわっと安心させられるような、目に見えない余裕は意識しました。技術的な表現を細かく考え出すと逆に不自然になる気がしたので、とにかく心の底にそんなイメージを常に持ってアフレコに臨んでいましたね。
佐倉 夜天はひょうひょうとしていて自信家なので、自信たっぷりに振る舞うことを大事にお芝居を組み立てていきました。先代の坂本千夏さんの声はかなり特徴的で、かわいくてあざとくて、カッコいいだけじゃない雰囲気を多分に含んでいるんです。絶対に私が敵うことはないんですけど、そんな先代に憧れながら演じていました。
──セーラー戦士の姿に変身する前後では、意識して声を変化させましたか?
井上 そこは意識しなかったかな。明確に変えてほしいというディレクションもなかったので、見た目が変われば観ている方々がきっと気持ちを切り替えてくださるだろうなと思っていました。
──セーラースターライツは3人の一体感がとてもあって、キャストさんの息もぴったりだなと随所で感じました。
早見 昔から別の現場でもよく会うメンバーなので、この3人でやると知った瞬間に安心感を覚えました。アフレコも3人同時に録ることができて、そこもよかったですね。
井上 あまり声優とキャラクターを同一視したくないけど、あまりにも全員の素の性格と役がマッチしていて。なんの不安もなかったです。
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武内先生が作られた歌詞は本当にすごい