「美少女戦士セーラームーンClassic Concert」 PR

「美少女戦士セーラームーンClassic Concert」|三宅一徳(オーケストラ編曲担当)×小佐野文雄(原作担当編集)インタビュー オーケストラが奏でる、愛と正義の「セーラームーン」イズム

2017年8月、「美少女戦士セーラームーン」を題材とした初のクラシックコンサートが東京芸術劇場にて開催された。東京フィルハーモニー交響楽団の本格的な演奏で、シリーズ25周年にまたがる名曲の数々が披露され、小坂明子、石田燿子といったゲストアーティストが出演。セーラームーン/月野うさぎ役の三石琴乃も声で変身シーンやオープニングのセリフなどを披露し、観客を歓喜の渦に誘った(参照:セーラームーン“らしく”いきましょ!クラシックコンサートが閉幕、CD化決定)。

今年の夏も、東京・大阪でコンサートを開催。まったく新たなプログラムが観客を待ち受けている。コミックナタリーではコンサートアレンジ統括を担当した三宅一徳、原作担当編集の小佐野文雄にインタビューを実施し、昨年の振り返りや、ファンにはたまらないドラマパートも盛りだくさんで構成されているという、今年の公演の見どころを聞いた。

取材・文 / 岸野恵加 インタビュー撮影 / 宮本昇

開演直後から感動して泣く声が

──昨年の公演を拝見したんですが、開演前からとにかくお客さんの興奮が伝わってくるというか、東京芸術劇場がクラシックコンサートらしからぬ熱気に包まれていたのが印象深かったです。

2017年に東京・東京芸術劇場にて開催された「美少女戦士セーラームーン25周年記念 Classic Concert」の様子。

小佐野文雄 開演直後から泣いていらっしゃる方がいましたからね。最初、なんの音だろう?と思ったんですけど。あ、これはお客さんが泣いていらっしゃる音だぞ、と。

──小佐野さんは、客席でご覧になっていたんですか?

小佐野 はい。(「美少女戦士セーラームーン」の)ミュージカル後半の感動シーンでは同じような状態になるので、聞き馴染みがあって。オープニングから、すごいことになっていると感じました。

三宅一徳 オープニングで、テレビアニメに使われていたアバンの音楽をまず演奏するのがすごくいいアイデアだなと思いました。コンサートだけど、テレビの世界に引き込んじゃう手法がすごいな、と。自然にお客さんの頭の中で映像と結びついて、観ていた当時に引き戻される。やっぱりオーケストラがずらりといるクラシックコンサートってちょっと構えちゃうと思うんですけど、それに対してすごく優しい気遣いですよね。

──第1部の終わりにはアイキャッチの曲が流れたり、アニメを観ているかのような随所の演出が楽しかったです。「セーラームーン」のクラシックコンサートはこれが初めての開催ということですが、どういう経緯で企画が動き出したんですか?

小佐野文雄

小佐野 キングレコードのプロデューサーの平野宗一郎さんにお話をいただいたんです。これまで「セーラームーン」の音楽イベントというと、僕はいわゆるロック系というか、そういう方面のことばかり考えていたので、平野さんに提案をもらったときはコロンブスの卵というか(笑)。「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」「新世紀エヴァンゲリオン」など、いろんな有名作でオーケストラのコンサートをやっていることも知っていましたし、もっと前からやればよかったなあと思いました。

三宅 僕はコンサートの企画がある程度固まった状態で、アレンジの統括を、とお声がけいただいた形になります。

──三宅さんが「美少女戦士セーラームーン」に関わるのは、1995年にリリースされた「美少女戦士セーラームーンSS in Paris」というアルバム以来ですか?

三宅一徳

三宅 そうですね。あの企画盤のときは1曲アレンジに参加しただけで、番組本体の音楽には関わっていないんです。当時は「セーラームーン」というと、小坂明子さんが携わっているので気になっていましたね。僕ら世代の中では小坂さんって、ヒット曲「あなた」のシンガーソングライターのイメージなんですけど、ほかの歌手への楽曲提供や歌詞のないインストものでの劇伴などいろいろとやられているんだ、と。「Moon Revenge」を聴いて、素敵な曲だなあと思ったりしていました。

小坂明子さんの3曲は組曲風に

──去年の公演は1990年代のテレビアニメと劇場版、2014年から発表された新作アニメ「美少女戦士セーラームーンCrystal」、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」の曲と幅広いジャンルから選曲されていました。プログラムはどのように組んでいったんでしょうか。

「美少女戦士セーラームーン25周年記念 Classic Concert」
セットリスト

  • アバンBGM~うさぎナレーション
  1. ムーンライト伝説
  2. 愛の戦士
  3. HEART MOVING
  4. プリンセス・ムーン
  5. 私たちになりたくて
  6. 乙女のポリシー
  7. “らしく”いきましょ
  8. ウラヌス&ネプチューン メドレー
  9. eternal eternity
  • アイキャッチBGM
  1. ムーン・プリズム・パワー・メイクアップ!
  2. Moon Revenge
  3. タキシード・ミラージュ
  4. ラ・ソウルジャー
  5. スリーライツ・メドレー とどかぬ想い -my friend's love- ~流れ星へ
  6. 愛のStarshine
  7. MOON PRIDE
  8. 月虹
  9. ニュームーンに恋して
  • EN.セーラースターソング

※本公演は2017年8月2日・3日に東京芸術劇場にて、2017年9月7日に大阪・フェスティバルホールにて開催された。

小佐野 まず最初に「セーラームーン」に関連する楽曲が何曲くらいあるのかなって考えたら、すごく多かったんですよ。

──全部合わせて何曲くらいになるんでしょうか?

小佐野 小坂さんだけで4、500曲作ってるって言ってましたから、軽く1000曲くらいはいくでしょうね。だから落とさなきゃいけないものも、ものすごくあって。骨組みは先ほどもお名前が出て、今日も立ち会ってくれているキングレコードのプロデューサー・平野さんに作っていただきました。

平野宗一郎 25周年の冠がついているコンサートなので、シリーズを通して曲をセレクトしようという話になったんです。

小佐野 ひとえに「美少女戦士セーラームーン」のファンと言っても、特にミュージカルが好きな人、90年代のアニメしか知らない人、といろんな人がいると思うんですね。なので僕がお願いしたのは、全部の作品から曲が入ってるといいなって。

平野 「セーラームーン」は原作の軸がしっかりしているので、メディアミックスの曲がいろいろ入っていてもバラけないというか、どう組んでも「セーラームーン」になるという安心感がありました。ある程度プログラムができあがってから、小佐野さんには並べた曲のエピソードのバランスを、三宅さんにはお客さんが聴いて心地よいかを音楽的な側面からチェックしてもらいました。

4月に大阪・フェスティバルホールにて開催された「美少女戦士セーラームーン25周年記念 Classic Concert」再演の様子。小坂明子と石田燿子による「タキシード・ミラージュ」のセッション。

三宅 僕は「セーラームーン」の世界にどっぷり浸かったことがあるわけではなかったので、曲の並びの背景やお客さんが求めていることを平野さんが事前にわかりやすく解説してくれて。自分を含め6人のアレンジャーで編曲したんですが、その統括を僕が担当した感じです。劇伴で使われるような曲と歌ものが混在しているので、どうバランスを取っていくかを擦り合わせていくような作業を主にはしましたね。あとは大きなところでは、小坂さんの楽曲で、ご本人にピアノを弾いていただいた「Moon Revenge」「タキシード・ミラージュ」「ラ・ソウルジャー」の3曲は、なんとなく3楽章のピアノコンチェルト風組曲にできるな、とアイデアを出させてもらいました。

──「Moon Revenge」は「劇場版 美少女戦士セーラームーンR」の主題歌、「タキシード・ミラージュ」は「美少女戦士セーラームーンS」のエンディングテーマ、「ラ・ソウルジャー」はバンダイ版セラミューのテーマソングですが、“コンチェルト風組曲”というと?

三宅 まず第1楽章の「Moon Revenge」で「セーラームーン」の世界観を見せて、第2楽章(「タキシード・ミラージュ」)で落ち着かせて、第3楽章(「ラ・ソウルジャー」)で盛り上げる、というのを一連の大きな流れとして意識して並べていった感じです。

──なるほど。だからか、バラバラのタイミングで生み出された3曲が、違和感なくひとつの流れにまとまって感じられました。「ラ・ソウルジャー」の終盤で、「Moon Revenge」のAメロがピアノソロで重なってきますよね。あれにはグッときてしまいました。

小坂明子

三宅 クラシックだと第3楽章の最後に第1楽章の一部が出てくる、みたいなのはよく使われる手法なんですが、アレンジしているときにコード進行が一緒だなって気付いたんです。小坂さんに言ったら「自分では全然意識してなかった」っておっしゃって。でも小坂さんの曲だし、基本的に2曲を混ぜるとかは特別な意図がない限りはやらないので、とりあえず「ラ・ソウルジャー」だけで作ってたんですよ。そうしたら小坂さんから「あれ、やらないの?」って言ってもらえたので、2曲を重ねることになりました。

小佐野 小坂先生は昔のミュージカル、昔のアニメ、今のアニメのすべてに参加されているので、小坂さんの曲がプログラムをつないでくれている感じはありますよね。

「美少女戦士セーラームーンClassic Concert 2018」
「美少女戦士セーラームーンClassic Concert 2018」
東京公演

日程:2018年8月28日(火)、29日(水)
時間:13:00開場、14:00開演 / 18:00開場、19:00開演
会場:東京芸術劇場

大阪公演

日程:2018年9月7日(金)
時間:18:00開場、19:00開演
会場:フェスティバルホール

出演

指揮:新田ユリ
ゲスト:堀江美都子、小坂明子、寺下真理子、SUGURU(from TSUKEMEN)
声の出演:三石琴乃、堀江美都子

管弦楽

東京公演:東京フィルハーモニー交響楽団
大阪公演:関西フィルハーモニー管弦楽団

三宅一徳(ミヤケカズノリ)
1963年生まれ。作・編曲家。フルオーケストラから、シンセサイザーの打ち込み、バンド、純邦楽器、民族楽器までを巧みに使いこなし、CM、ドラマ、アニメ、特撮などさまざまなジャンルの劇伴も担当。代表作に「忍風戦隊ハリケンジャー」「仮面ライダー剣」「Woman」「anone」など多数。
小佐野文雄(オサノフミオ)
「美少女戦士セーラームーン」原作編集担当。ファンからは「おさBU」の愛称で親しまれている。