画業40周年を迎えた丸尾末広が、最新作品集「天國 パライゾ」を上梓した。第二次世界大戦中のナガサキやアウシュビッツ、敗戦直後の日本で生きる子供たちの姿などを描いた5つの短編は、丸尾がここにきてまたも切り拓いた、新たな境地といえよう。日本マンガ界の“魔神”として唯一無二の存在感を放ちながらも、丸尾は新しい表現を模索することをやめない。
コミックナタリーでは「天國 パライゾ」の発売に合わせて、丸尾の画業40年を振り返る“Web原画展”を展開。丸尾と長年タッグを組んでいる元月刊コミックビーム編集長・岩井好典氏に、40年の歩みを知るための40枚を選出してもらった。また各イラストに、丸尾本人からコメントも寄せてもらっている。
構成・文 / 鈴木俊介 協力 / 岩井好典(I's Room)
- 丸尾末広(マルオスエヒロ)
- 1956年1月28日、長崎県生まれ。1980年、短編「リボンの騎士」でデビュー。1982年に初の単行本「薔薇色の怪物」、1984年に初期の代表作となる「少女椿」を上梓すると、大正から昭和初期にかけて活躍した挿絵画家や小説家、思想家のエッセンスを感じさせる作風で人気を博す。2009年、江戸川乱歩作品のマンガ化に挑んだ「パノラマ島綺譚」で、第13回手塚治虫文化賞・新生賞を受賞。2014年からは月刊コミックビーム(KADOKAWA)にて、キャリア最大となるオリジナル作品「トミノの地獄」を連載した。
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Web原画展
1.丸尾末広の初期・中期 ~「少女椿」「笑う吸血鬼」
©丸尾末広/KADOKAWA