丸尾末広 画業40周年記念 Web原画展|ひと目で引き込まれ、のぞき込むと奥が深い。丸尾ワールドの40年を、40枚の原画で巡る

2.丸尾末広のカラフルな活躍 ~装画・コラージュ

精力的にマンガを発表する傍ら、小説の挿画や表紙イラストも数多く手がけてきた丸尾。学帽・学ラン姿の少年が描かれた、荒俣宏によるベストセラー小説「帝都物語」シリーズの表紙絵などは、1980年代の代表的な仕事と呼べるだろう。また写真やイラストを組み合わせるコラージュ作家としての創作経験は、丸尾のマンガにおける画面造りにも存分に活かされている。
ここではそうした、丸尾のマンガ以外の一面を見てもらおう。併せて、氏の美麗なイラストが計算されつくしたものだとわかる、極めて細密な下描きも掲載している。

書籍カバー用イラスト(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

書籍カバー用イラスト
(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

イラストや挿絵の仕事も、依頼があればやってきました。これはかなり初期の絵です。エロ単行本用のカバーイラストだったんですが、少し漫画とは違う絵柄で描きました。クレパスとか色鉛筆に見えるかもしれません。でも私は絵は、絵の具と筆で描きます。この絵は少し鉛筆も入っているんですが、基本は絵の具と筆ですね。

小説「新帝都物語」用イラスト(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

小説「新帝都物語」用イラスト
(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

これは、『新帝都物語』用のイラストですね。
荒俣宏さんの小説『帝都物語』に絵を描いたのは、言ってみれば、私のメジャーでの初めての仕事でしょう。角川書店という大きな出版社でしたから。
『帝都物語』はカドカワノベルスというレーベルで、当時のノベルスは、カバーを描いて、口絵用にも数点カラーがありました。さらにモノクロの挿絵を毎巻20点くらい描きました。大変だったけれど、気合いを入れてやりましたよね。
実は『帝都物語』の挿絵は、雑誌連載では私で三人目だったんですよ。
結局、私の絵がイメージとして定着して、世間的にも認知されたようで、これ以降いろいろと小説へのイラストの仕事が増えました。

「吸血妖魅考Ⅱ」(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

「吸血妖魅考Ⅱ」
(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

ペヨトル工房の雑誌「夜想」での仕事。「吸血鬼幻想」という特集用の描き下ろしです。
これまで多くのイラスト関係の仕事をしてきましたが、正直、イラストでは食えないと思いましたね(笑)。依頼があって条件が合えば、まだやりますけど。

CDジャケット用イラスト(下絵)(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

CDジャケット用イラスト(下絵)
(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

これはCDジャケット用に頼まれた絵の下絵です。
絵をボードに描いていた頃は、こういう風にマス目を入れて下絵を描きます。編集者が見ると驚かれますが、昔からある普通の方法ですよ。今の私は、もう少し薄い画用紙にカラーの絵を描いていますから、下絵をトレースできるので、もうマス目は描いていないです。
CDジャケットの仕事は、今も定期的にあるのですが、やはり、ザ・スターリンの『虫』をやったことが大きいですね。後は、ジョン・ゾーンの『NAKED CITY』も評判が良かった。ジョン・ゾーンが口を聞いてくれて、T・レックスのトリビュートアルバムに私のイラストが使われたのも嬉しかったです。

「一方的怪楽」(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

「一方的怪楽」
(「乱歩パノラマ 丸尾末広画集」収録)

コラージュは好きなんですよね。依頼がなくても描いてしまいます。コラージュって、パッとできちゃうし、やっていて楽しいんですよ。
「絵柄の個性がない」ということがコラージュの魅力なんですが、それだからこそ、まあ、仕事としての依頼はないですよ。私の絵だって分からないから(笑)。だからお金にならないのは仕方ないですけど、コラージュはこれからも続けていくでしょうね。