コミックナタリー Power Push - 「マギ シンドバッドの冒険」

小野大輔×宮尾佳和監督対談&羽多野渉インタビュー

継承して、点と点をつないでいく

羽多野渉インタビュー

え!? 大丈夫かな?

──小野さんや杉田さんは「マギ シンドバッドの冒険」に出演されるにあたり、オーディションがあったとお話されていたんですが、羽多野さんはどういった経緯でミストラス役に決まったのでしょうか?

羽多野渉

オーディションという形ではなかったんですが、ミストラス役としてお声がけいただき、ボイステストを行わせてもらう機会がありました。そのボイステストを受ける直前に、スパルトスのお話もいただいたんです。

──なるほど。

「ちなみに羽多野さん、スパルトスなんですけど……」って。「『マギ シンドバッドの冒険』では若かりし頃のキャラクターも「マギ」と同じキャストでやっているので、「ボイステストだけでもトライしてくれませんか?」「実際に演じていただくかどうかは、もちろん(宮尾)監督やプロデューサーで判断しますので」と言っていただいて。僕自身こういった大人びた声なので「大丈夫かな?」なんて思いながらも、ダメ元でテストを受けさせていただいたんです。そうしたら「いけますね」という話になり。最初は「え!?」「大丈夫かな?」って、信じられない思いもあったんですけど、監督さんとプロデューサーさんに決めていただいたことなので、「謹んでやらせていただきます」と、2役を演じさせていただくことが決まりました。

──ミストラスとスパルトスという兄弟を1人で演じられて、印象はいかがでしたか?

アニメ「マギ シンドバッドの冒険」場面カット

スパルトスは非常にカタブツでしっかりもので、女性に対してはまったく免疫がないという、とても真面目な青年なんです。なぜそういった性格の大人になったのかというのが、ミストラスを演じさせてもらったことでなんとなくわかった気がしたんです。「ああ、正反対な性格のお兄さんがいたんだな」って。それがすごく面白くて。確かに2役ではあったんですけど、性格がまったく違ったので、演じていてとても楽しかったです。「スパルトスはこういう国で育ったんだな」とか、それこそお父さんやミストラスとの関係性を知ることができましたし。改めて「マギ」の世界に関わらせていただいて、すごく面白かったですね。

とにかくどんな役でも全力で楽しむ

──外の世界に出たいミストラスと、それを引き止めたいスパルトスという、相反する役どころを演じるには、気持ちの切り替えが難しいのではないかと、素人目線では思ったのですが。

幼少期のスパルトス(CV:羽多野渉)。

監督さんに感謝したいのが、ミストラスとスパルトスを別録りにさせてもらったので、それぞれ別のキャラクターとして、新鮮な思いで演じさせていただくことができたんです。なので集中もできましたし、役を切り替えるという面での苦労はあまり感じませんでした。ただ、アフレコしてるときにはアニメーションの絵が完璧にはできていない状態だったので、「子供の頃のスパルトスってどんな顔になるのかな」と想像していたら、アニメのオンエアを観て「かわいいっ!!」って、すごくビックリして。

──髪の毛も長いですし、一見女の子みたいですよね。

そうなんですよ! だからその瞬間、ファンの方には申し訳なかったなと、かすかな罪悪感が芽生えました(笑)。

──いやいや! 罪悪感だなんて。

大人になったらこの声になりますので、早めに声変わりしてしまったというところでひとつご理解をいただきたいなと思います(笑)。

──それくらい幼いキャラクターを演じられたこともそうですが、2人の兄弟を1人で演じることに対して、プレッシャーなど感じることはあったのでしょうか。

もちろんありました。それは「マギ シンドバッドの冒険」に限らず、どんな役を演じるときでもありますね。特に原作のある作品は、読者1人ひとりがそのキャラクターに対するイメージを持っていると思うので、そこに寄り添いつつも、いかに自分の内側からキャラクターを出せるかというところを考えるんです。「シンドバッドの冒険」に携わるときも、それはもちろん感じました。

──そうだったんですね。

羽多野渉

でも2役だろうが3役だろうが、いただいたからにはとにかく全力で向き合いたいと思っていました。収録一発目は本当に緊張していたんですが、小野さんをはじめメインキャストの方々がずっと一緒にやっていたかのような迎え方をしてくれたので、それがとてもうれしかったです。ミストラスもササンにいるときは父親とのシリアスなシーンが多かったんですけど、外に出てからはすごく奔放になって。周りの演者さんもミストラスのツッコミにたびたび笑ってくれたりして、アフレコ中も楽しかったですね。

──プレッシャーがあった反面、複数の役を演じることに楽しさを感じる面もありましたか?

そうですね。デビュー以来、ありがたいことにひと作品で何役もやらせてもらう機会は多かったので、今回もとにかく楽しもうという気持ちが大きかったです。たぶん皆さんお気づきじゃないと思うんですけど、アルテミュラに入国してすぐ、ジャーファルがすれ違いざまに人とぶつかるんですよ。すごく大きな女性というか……結果を言うと、女性ではなかったんですけど(笑)。

──ジャーファルが「ずいぶんゴツい女の人だな」って言ってましたね。

その方が「あらやだ、ごめんなさいね」って言うんですけど、あの声も実は僕がやっていたんですよ。

──そうだったんですか!(笑)

全部裏声なので誰が声をあてていたか、視聴者の方はわからなかったと思うんですけども。“とにかくどんな役でも全力で楽しむ”というのは昔からの信条としてあるので。今回もミストラスとスパルトスに限らず、どんな役も楽しんでお芝居させていただきました。

Contents Index
小野大輔×宮尾佳和監督対談
羽多野渉インタビュー
「マギ シンドバッドの冒険 COMPLETE BOX」 / 2016年8月24日発売 / アニプレックス
「マギ シンドバッドの冒険 COMPLETE BOX」
Blu-ray BOX / 32400円 / ANZX-12361~5
DVD BOX / 29160円 / ANZB-12361~5
ディスク5枚組

映像Disc1:1話~5話
映像Disc2:6話~10話
映像Disc3:11話~13話、特典映像(PV・CM・新規映像)
映像Disc4:OAD版1話~5話
音楽CD:サントラ+キャラクターソング

パッケージ特典
  • スペシャルイベント「シンドバッドと行くサンセットクルーズ」参加応募券
  • 原作者・大寺義史描き下ろしスペシャルBOX
  • キャラクターデザイン・佐古宗一郎描き下ろしジャケット
  • 特典CD:オリジナル・サウンドトラック、キャラクターソング「Life goes on」
キャスト

シンドバッド:小野大輔
ドラコーン:杉田智和
ジャーファル:櫻井孝宏
ヒナホホ:藤原啓治
ミストラス:羽多野渉
ユナン:石田彰
バドル:小西克幸
エスラ:日笠陽子
セレンディーネ:茅野愛衣
バルバロッサ:子安武人
バアル:東地宏樹

羽多野渉(ハタノワタル)

長野県出身、3月13日生まれ。81プロデュース所属。2011年12月21日リリースの「はじまりの日に」で音楽活動も開始している。主な出演作品に「信長の忍び」(織田信長)、「腐男子高校生活」(坂口亮)、「マジきゅんっ!ルネッサンス」(庵條瑠衣)など。