コミックナタリー Power Push - 「マギ シンドバッドの冒険」

小野大輔×宮尾佳和監督対談&羽多野渉インタビュー

継承して、点と点をつないでいく

一夜限りの反抗期

──羽多野さんは、過去のインタビューで「どのキャラクターを演じるときでも、どこかに自分が潜んでいるような気がする」といったお話をされていたことがありました。ミストラスとスパルトスという正反対な性格のキャラクターに対しても、それぞれ似ている部分は感じましたか?

羽多野渉

スパルトスは端から見ると真面目な男なんですけども、一方で大胆な面も持っている。あとは頭の中ではたくさん考えていても、ベラベラと口で伝えるような人間ではない。そういう部分は共感できるところがあるなと思います。きっとスパルトスとミストラスにも似ている部分があるけど、それが外向きになっているのか、内向きになっているのかの差なのかなと思うんですよ。逆にミストラスにも、僕は非常に共感できる部分があって。僕の生まれはササンではないんですけども……。

──日本ですよね(笑)。

長野県の小さな農村で生まれたんですけど、農業を継いで農家になって、村で生まれたからには村のために生きていくという生活スタイルが基本にある場所だったんです。だけど、僕は早く外の世界に出たかったんですよね。声優になることがずっと夢だったので、「この村にずっといたら声優になれないんじゃないか」という恐怖感がすごく大きかったんです。

──ミストラスのように、外へと飛び出したい気持ちがあった。

なので親にも「中学校を卒業したらすぐに東京に出たい」と話をしていて。それに対して「役者さんたちも勉強をしてないわけじゃないんだから、まずは高校をちゃんと卒業して、一般常識を学びなさい。それからでも絶対遅くないから」って、夢を応援してくれていたんです。なので、僕はお父さんと槍で戦うことはなかったんですが(笑)。

──激しい戦いが行われるわけではなく(笑)、親としてアドバイスをしながらも背中を押してくれたんですね。

羽多野渉

ただ反抗期って誰しもあると思うんですけど、僕も中学1年生くらいのときに今思うとちょっと生意気だなと思うことを父親に言ったんです。「それは間違ってるんじゃないですか?」って親の矛盾を突くような発言を。そうしたら……僕の父親は柔道の有段者なんですけど。

──はい。

反抗した次の瞬間、ストーン!って一本背負いされて。気がついたら天井のライトが見えてたんですよ。「あれ? 今、何が起きたんだろう」って(笑)。それが一夜限りの反抗期でした。

──圧倒的な力の差を……。

見せつけられちゃいましたね(笑)。そういったことも思い出しつつ、どんな役を演じるにしても、何か自分とオーバーラップする部分を見つけて、役作りのきっかけにさせてもらってるのかなと思います。

シンドバッドとミストラスがシンパシーを感じた瞬間

──「マギ シンドバッドの冒険」に参加されて、特に印象に残っているシーンなどありますか?

「雷光肉(バラ肉)!」というカットは、アドリブから生まれた。

いくつもあるので、あまり絞れないんですけど……。この作品に参加させてもらって驚いたのが、ものすごくアドリブが多いんですよ。特にキャラクターの頭身が小さくなるカットは、ほとんどがアドリブなところもあったりして。その中でも一番「うわあ、面白いなあ」って思ったのが、シンドバッドが「雷光肉(バラ肉)!」って言うシーン。

──12話で谷底に落ちた肉を拾った際にシンドバッドが言ってましたね。

台本には「雷光肉!」なんて、そんなこと1つも書いてなかったんですよ(笑)。そのアドリブを受けて絵のほうが変わっていったりもしたみたいなので、監督さんもそのアドリブに乗っかって。だからいいチームワークなんでしょうね。そういう何が来るかわからない面白さとか、空気感がとても楽しかったです。

──ギャグシーンは皆さんのそういった雰囲気が感じられて面白かったです。

羽多野渉

あとは谷底から見事生還を果たして、いよいよシンドバッドとともに色街に行くっていうシーンがあるんですけど。あのシーンってアフレコの最後の最後でもあり、そこまでの流れがあまりにも大変だったので、正直僕自身も疲れ果ててたんですよ。そんな中で、かわいいお嬢さんが出てくるのかなとわくわくしながら待っていたら、出てきたのは筋肉隆々な男という(笑)。そのシーンで、小野さんも僕も同じ口の形で「お……お……お……」っていう芝居をしたんですけど、あのリアクションも実は本番でピッタリ揃ったんですよ。

──打ち合わせをしていたわけではないけど、小野さんと息が合った(笑)。

お互いたぶん「男」と言おうとして言えなかった……という芝居を同じタイミングでやっていて。別に「う……」とか、ほかのリアクションでもよかったと思うんですよ。だけど2人とも同じタイミングで「お……お……」と言って、涙があふれるという(笑)。こんな偶然があるんだなと思って面白かったですね。短い期間ではあったんですが、一緒に冒険をしたことで、シンドバッドとミストラスがシンパシーを感じた瞬間がそこだったのかもしれないです(笑)。

Contents Index
小野大輔×宮尾佳和監督対談
羽多野渉インタビュー
「マギ シンドバッドの冒険 COMPLETE BOX」 / 2016年8月24日発売 / アニプレックス
「マギ シンドバッドの冒険 COMPLETE BOX」
Blu-ray BOX / 32400円 / ANZX-12361~5
DVD BOX / 29160円 / ANZB-12361~5
ディスク5枚組

映像Disc1:1話~5話
映像Disc2:6話~10話
映像Disc3:11話~13話、特典映像(PV・CM・新規映像)
映像Disc4:OAD版1話~5話
音楽CD:サントラ+キャラクターソング

パッケージ特典
  • スペシャルイベント「シンドバッドと行くサンセットクルーズ」参加応募券
  • 原作者・大寺義史描き下ろしスペシャルBOX
  • キャラクターデザイン・佐古宗一郎描き下ろしジャケット
  • 特典CD:オリジナル・サウンドトラック、キャラクターソング「Life goes on」
キャスト

シンドバッド:小野大輔
ドラコーン:杉田智和
ジャーファル:櫻井孝宏
ヒナホホ:藤原啓治
ミストラス:羽多野渉
ユナン:石田彰
バドル:小西克幸
エスラ:日笠陽子
セレンディーネ:茅野愛衣
バルバロッサ:子安武人
バアル:東地宏樹

羽多野渉(ハタノワタル)

長野県出身、3月13日生まれ。81プロデュース所属。2011年12月21日リリースの「はじまりの日に」で音楽活動も開始している。主な出演作品に「信長の忍び」(織田信長)、「腐男子高校生活」(坂口亮)、「マジきゅんっ!ルネッサンス」(庵條瑠衣)など。