コミックナタリー Power Push - 「マギ シンドバッドの冒険」
小野大輔×宮尾佳和監督対談&羽多野渉インタビュー
継承して、点と点をつないでいく
何回もリテイクした、特別なセリフ
小野 前にも聞いたことがあるかもしれないんですけど、最終回が「アルテミュラ編」で終わるっていうのは、いろいろと考えたうえでたどり着いた構成だったんですか?
宮尾 どこで終わらすかというのは、スタッフみんなでかなり揉んだんですけど……。原作に、シンドバッドがいろんなものを手に入れる過程の中で、流れが自分のところに来ていると感じて、より大きな野望を抱くという方向へ開眼する描写があったんですよ。それはある意味、周りのいろんな協力がなかったら今の自分はなかったという、ひとつの感謝の表現ではあるんですが、そのシーンが後のシンドバッドの野望の大きさを予感させたんです。なのでその場面が1クールのまとめになり得るかなと感じたんです。
小野 監督が今言ってくださったシーンの中で、一番大事なセリフだと思っていたのが最後に言う「俺は……特別なんだ」ってセリフなんですよ。すごく印象的な言葉だったんですけど、演じるのが難しくて。
宮尾 難しいですね。
小野 僕の表現の仕方によっては、ただの独りよがりの嫌な奴になりかねないなと。「俺は1人でここまで来れた」というふうに聞こえてしまったらマズいなと思っていたんです。実はあのシーン、本番を録り終わった後に何回もリテイクさせてもらっていて。本番でOKが出ているのに、「もう一度やらせてください」って言うことは、すごく稀なことなんですけど。
宮尾 ブースの外にいた僕らとしても、小野さんが納得していないっていうのは見ていてわかったんです。最後のこの一言がチームとしても腑に落ちる形で終わりたいというのは、僕も思っていたので、僕らとしても小野さんにもう一度やってもらいたいということでお願いしました。
小野 監督の思いであったり、音響監督の飯田(里樹)さんの考えであったり、やっぱりすべてが腑に落ちたところで終わりたいなと思っていたんです。今日改めて監督のお話を聞いたら、あのセリフに込めたい気持ちはやっぱり同じだったんだなと感じました。あのシーンは、それまで関わってきた人たちの思いを全部受け止めて、「自分は特別なんだから、自分がやらなきゃいけない」と決意をするシーンなので。しっかりとその思いが乗るようにテイクを重ねさせていただきましたね。なのでアフレコ中はいろいろなことをやってすごく楽しかったんですけど、そのシーンが一番印象に残っています。
今「マギ」をやりたいです(小野)
──視聴者としても、強く印象に残るシーンだったと思います。
小野 さっきお話した「継承する」という部分と少しだけ相反するかもしれないんですけど、「シンドバッドの冒険」で「マギ」の世界に初めて触れた方も「いい作品だった」「満足した」と感じてもらいたいなと思ったんですよね。もちろん、この先も物語は続いていくという終わり方ではあるんですけど。
宮尾 僕自身も「マギ」をまだ観たことがない人たちの入り口になる作品だと、そういう役割もあると思っていたので。だから「シンドバッドの冒険」をきっかけに「マギ」の世界に入ってきてもらえたらうれしいなと思っています。新しい視聴者の方に観ていただけたら、やりがいも増していきますし。
小野 続編も作りやすい!
宮尾 ははは(笑)。
小野 じゃないですか!? 続編、いつかなあ?(笑)
──最終回ではまだ「シンドバッドの冒険」には登場していない「マギ」のキャラクターも出てきたので、続編を期待されている方も少なくないと思います。
宮尾 あの終わらせ方ですからね。大人になるまでの道のりはまだまだ長いですし、いろんな冒険が待ってますから。
小野 僕、イベントとか機会があるたびに、大高先生に「シンドバッドをもっと描いてください」って言ってたんです。「シンドバッド、謎なんで」って。そうしたら先生も「うん、謎が多いですね」とおっしゃっていて(笑)。
──先生ご本人も(笑)。
小野 大きなストーリーの流れはもちろん考えていたとは思うんですが、「まだ言えないし、まだ描けない」と。その部分を大寺先生が描いてくださって。「シンドバッドの冒険」の帯に「これは正史である!」と書いてあったのがすごく印象的だったんですけど、まさしくそうだと思うんです。僕、「シンドバッドの冒険」を演じさせてもらったことによって、シンドバッドっていう人がやっとわかったんですよ。だから、今「マギ」をやりたいです(笑)。
──シンドバッドへの理解が深まったところで、改めて「マギ」本編を観たいというのは、きっと視聴者の皆さんも同じ気持ちだと思います。
小野 そうですよね。だからもしまた「マギ」をやることがあれば、ぜひ宮尾さんにも参加してほしいです!
宮尾 ははは(笑)。じゃあ小野さんのシンドバッドが出るなら、僕も参加させていただきます(笑)。
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- Contents Index
- 小野大輔×宮尾佳和監督対談
- 羽多野渉インタビュー
- 「マギ シンドバッドの冒険 COMPLETE BOX」 / 2016年8月24日発売 / アニプレックス
- Blu-ray BOX / 32400円 / ANZX-12361~5
- DVD BOX / 29160円 / ANZB-12361~5
ディスク5枚組
映像Disc1:1話~5話
映像Disc2:6話~10話
映像Disc3:11話~13話、特典映像(PV・CM・新規映像)
映像Disc4:OAD版1話~5話
音楽CD:サントラ+キャラクターソング
パッケージ特典
- スペシャルイベント「シンドバッドと行くサンセットクルーズ」参加応募券
- 原作者・大寺義史描き下ろしスペシャルBOX
- キャラクターデザイン・佐古宗一郎描き下ろしジャケット
- 特典CD:オリジナル・サウンドトラック、キャラクターソング「Life goes on」
キャスト
シンドバッド:小野大輔
ドラコーン:杉田智和
ジャーファル:櫻井孝宏
ヒナホホ:藤原啓治
ミストラス:羽多野渉
ユナン:石田彰
バドル:小西克幸
エスラ:日笠陽子
セレンディーネ:茅野愛衣
バルバロッサ:子安武人
バアル:東地宏樹
©大高忍・大寺義史/小学館・AOS PROJECT
小野大輔(オノダイスケ)
高知県出身、1978年5月4日生まれ。主な出演作は「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズ(空条承太郎)、「黒執事」シリーズ(セバスチャン・ミカエリス)、「おそ松さん」(松野十四松)など。
宮尾佳和(ミヤオヨシカズ)
長野市出身。武蔵野美大学視覚伝達デザイン科卒業後、株式会社NHKアートデザイン部に入社。テレビグラフィックデザイナーを経て、アニメスタジオに入社し、1年半後フリーに。テレビアニメ「イナズマイレブン」などでアニメーション監督務めるほか、CMの演出、さまざまな企画の立案、デザインの提案、JリーグAC長野パルセイロのクリエーティブディレクターなど幅広い分野で活動している。