点と点を線にして、世界をつなげていく羽多野さんの役割

──先日羽多野さんにもお話をお伺いしたんですが（参照：羽多野渉インタビュー）、羽多野さんが「ギャグシーンはアドリブが多くて賑やかだった」というお話をされていました。

宮尾　テレビシリーズではそういったシーンが多くなりましたね。OADの頃はシリアスで重い話が続いていたので、テレビ的にあえてそうしようという狙いもありました。7話目以降はミストラスが持っているキャラクター性もあり、それまでのシリアスな雰囲気よりも、緩やかな気持ちで観てもらおうという流れに変えていったんです。なので、そこでそういったアドリブができる隙間が生まれたんですよ。

小野　ミストラスが出てきたことによって、いい意味でみんなで遊べる余白が出てきたということですよね。その空気感の象徴なんですよね、ミストラスは。だから羽多野くんがそう言うことは正解なんですけど、ある意味間違っています。ギャグシーンやアドリブが多くて賑やかになったのは、羽多野くんが出てきたからだよ！って（笑）。君のせいだよって言いたいです（笑）。

宮尾　ミストラスが持っているキャラクター性と、羽多野さんが自身がもともと持っているものが響きあってそうなった部分もあるのかもしれないですね。

小野　確かにミストラスとスパルトスだったら、どちらかというと羽多野くん自身はミストラスっぽいです（笑）。

──羽多野さんの場を明るくさせる人柄は、ミストラスに近しい部分がある気がします。

宮尾　そのうえでちゃんと泣けるところも押さえてくださいましたから。本当に羽多野さんに任せてよかったなあと思っています。

小野　そうですよね。僕もうれしかったです、ミストラス役で羽多野くんが来るって話を聞いたときは。スパルトス役も羽多野くんがやるかもしれないという話を聞いていたころに、羽多野くんから「スパルトス役のボイステストを受けてきます！」って連絡をもらっていたんですよ。「がんばってきます！」って。そのときに「羽多野くんなら大丈夫だよ」って返していたんですけど、やっぱりバッチリでしたね。スパルトスとミストラスのように、今まで演じてきたキャラクターの幼少時代とその血縁の兄を演じられるっていうのは、すごく役者冥利に尽きると思うんです。

宮尾　「マギ」と「シンドバッドの冒険」それぞれにある点と点を線にしていく、世界をつなげていく役割があったと思います。

小野　その責任は羽多野くんも感じていたみたいで、プレッシャーも大きかったと思います。でもやっぱり、すごく魅力的に演じていましたよね。

キャラクターの魅力を1カット目から視聴者に届ける

──監督として、「マギ シンドバッドの冒険」を描くうえで大切にされてきた部分は、どういったところにありますか？

宮尾　自分に課していた課題は、1人ひとりのキャラクターの魅力を第一声から、第1カット目から視聴者にきちんと届けられているのか、というところです。例えばヒナホホにはヒナホホの、ミストラスにはミストラスの成長があります。ジャーファルもシンドバッドの仲間になったあと、もう一度成長を描いていて。

──第8話「眷属器」でのエピソードですね。

宮尾　キャラクターの成長をしっかりと描いて、いかにジャーファルらしさが残るかどうか。単に原作を再現するだけではなく、観る前と観た後でキャラクターの印象が視聴者にどう残るか、といったところを大切に考えながら作っていたので、その視点で観てもらえたらうれしいですね。