堕落してしまった勇者にちびっこ魔王、ポンコツだらけの異世界コメディ「Lv1魔王とワンルーム勇者」を深掘り (6/6)

レオ役・下野紘インタビュー

取材・文 / 伊藤舞衣

下野紘

修行しているようなアフレコ

──まずは「Lv1魔王とワンルーム勇者」のアニメの印象をお聞かせください。

最近のアニメって本当に絵がきれいですけど、「Lv1魔王とワンルーム勇者」もすごくクオリティが高くて、気合いが入っているんだなと感じますね。あと活躍していた頃と今の落ちぶれたマックスのギャップが本当にすごくて「人ってこんなに劣化するのかな」と思いました。昔のマックスと並べないでほしい(笑)。そりゃ魔王も「なんか思ってたんと違う」ってなるよな。それで言うと魔王も声まで変わってますけど……。

──ご自身が演じているレオのビジュアルをご覧になって、どんな印象をお持ちになりましたか。

アニメの絵が完成して、色が入った状態のレオを見せてもらったときに、赤いふんどしで衝撃を受けました(笑)。勝手にずっと白いふんどしだと思っていたので「赤かあ……なるほど」と思いましたね。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第5話より。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第5話より。

──白でイメージが膨らんでいたんですね(笑)。レオ役に決定したとき、どういうことを考えましたか?

自分としてはこれだけ筋骨隆々で力強いキャラクターを演じたことがあまりなく、フレッドのような役回りは過去に何度か演じてきたので、レオ役に決まったときは「フレッドではなくレオなんだ」と思っていました。マックス役が中村悠一くん、フレッド役が松岡禎丞くんと聞いて、この3人がいるということは、ずっと叫び続けるであろう激しい戦いのシーンがあると予想しましたね。でも、このメンバーなら遠慮なく叫べて、熱い戦いができると感じ、覚悟しながらも楽しんで演じました。

──確かにレオは下野さんがこれまで演じたキャラクターとは雰囲気が異なります。演じる際に意識したことはありますか?

レオは体が大きいので、自分の声で最大級の低音を出すことを意識しました。レオを演じるにあたり、自分の中で開けていなかったような引き出しの演技に何度も挑戦しています。それはすごくありがたいことだし、また1つ自分の中に引き出しが増えていくのを感じて、アフレコしながら修行しているようなイメージがありましたね。あと「レオは肉体すべてが筋肉でできているようなイメージ」と言われたので、いろんなことを気にせず全力で演じれば、レオらしさが出てくるのかなと考えて思い切り演じていました。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第5話より。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第5話より。

──レオの演技について現場ではどんなディレクションがありましたか?

アフレコでの僕たちの演技に合わせて、最終的にどういう画にするか多少調整できるということで「思い切りやってください」と言っていただきました。レオの芝居に集中できてありがたかったですね。あと、レオは自分が想像していた以上に叫ぶので「ここからここまで叫んでください」という指示も多かったです。レオが野獣のような荒々しさを剥き出しにするシーンでは「狂気じみているくらいでもいい」と言われることもあり、本当にやりがいがありました。

──レオの性格についてどんな印象をお持ちでしょうか。共感する部分などありますか?

ガンマ共和国のトップになったのに偉そうな態度をとらないところが好きですし、すごく素敵だなと思います。間違ったことは言っていないけどなかなか譲歩できない性格や、頑固で不器用な部分は僕と少し似ているかもしれません。僕も曲げたくないものがあると、どうしてもそこだけは譲れなくなることがあるので……。レオは今まであまり演じたことがないタイプのキャラクターでしたが、共感する部分が多くてすごく愛着がありますね。

3人合わせて何デシベル出てるかな?

──レオは中盤からの活躍が目立つキャラクターですが、アフレコに入ったタイミングはいつ頃だったのでしょうか。

1話の回想シーンの後、間が開きつつも登場シーンがあるので、みんなとほぼ同じタイミングでアフレコに入ったと思います。みんなと収録できるのは後半からだと思っていたので、最初から中村悠一くんや大空直美さんと一緒に現場に入れて作品の雰囲気を感じることができ、ありがたかったですね。

──中村さんと大空さんは、収録現場ではどんな様子でしたか?

2人とも全力で演じ、全力でかけ合っています。アニメの中で2人は漫才のような激しいかけ合いをしていますけど、現場はかなり穏やかで、中村くんが大空さんを微笑ましく見守っていたり、話を聞いたりもしていました。マックスと魔王だけでなく、声優同士もいい関係性でしたね。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第5話より。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第5話より。

──レオのかつての仲間・マックスと、宿敵であった魔王、2人の関係はどうご覧になっていますか?

マックスと魔王は、お互いが妙に支え合っているような、共闘しているような雰囲気が芽生えている気がします。昔戦っているので、感覚的には夕方の土手の上で殴り合いをして、2人とも倒れて「なかなかやるな」「お前もな」と認め合っているという感じなんですかね。たまにドキっとするような描写があるんですけど、でもこの2人ですから、果たして……。

──今後の放送でどう進展していくか楽しみですね。マックスや魔王のほかにも個性的なキャラクターが登場しますが、お気に入りは誰ですか?

ずっと思っているんですけど、押入れの中の人って本当に何? しかもなんで小林ゆうちゃんでなければいけなかったの?(笑) 今のところアニメでもびっくりするくらい描かれていないですし、お気に入りっていうか、気になりすぎる。あと、中村くんの演じるマックスが本当に好きですね。ここまでおじさんをしっかり演じられると、もう見事としか言いようがない。勇者としての力強さみたいなものは存在するけど、おじさんのときは徹底しておじさんだし、汚いときは汚いし、それがすごいなと思っています。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第3話より。

TVアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第3話より。

──ほかの方との収録についてもお聞かせください。マックス、フレッド、レオが一堂に会するシーンは、中村さんと松岡さんと一緒に収録されたんですか?

一緒に録りました。もう熱気がすごかったですよ。「3人合わせて何デシベル出てるかな?」みたいな(笑)。

──叫びと言えば、以前コミックナタリーで行った「進化の実~知らないうちに勝ち組人生~」のインタビュー(参照:アニメ「進化の実」下野紘が“ゴリラかわいい”ヒロインに太鼓判)で、下野さんは「叫びの演技に関してはいろいろ鍛えてきた」とおっしゃっていましたが、レオの叫びの演技はいかがでしたか。

レオの叫びは、低音の中でどれだけ演技の幅が出せるかを意識しながらやっていたので、ほかのキャラクターと疲れ方が全然違いますね。「進化の実~知らないうちに勝ち組人生~」で演じていた柊誠一は自分1人で叫ぶことが多く、自分との戦いといった感じでした。今回は中村くんと松岡くんと一緒に叫ぶシーンだったので「お前がそう来るなら、自分はもっとこう」と対戦相手がいるような感覚で演じました。あの日の収録は大変で「喉が疲れているけど、帰ったら絶対にキンキンに冷えたビールを飲んでやろう」って思いましたね(笑)。

レオは戦闘シーンで活きる

──作品タイトルにちなんだ質問ですが、下野さんがご自身について「レベル1だな」「昔と比べてレベルが落ちたな」と感じるところを教えていただけますか。

レベルが落ちたと感じるのは筋肉ですね。全盛期は10代の後半くらいだと思うんですが、その頃は声優になるために腕立て伏せや腹筋などの筋トレをしていました。あと、引っ越し屋さんで働いていて、小型の冷蔵庫を1人で持つことができましたよ。

──冷蔵庫を1人で持つのはすごいですね!

今は絶対無理ですけどね……。レベル1で言うと、足りない部分はいっぱいありますよ。声優としてもまだまだ足りないと思う部分は当たり前のようにありますから。

──最後の質問になりますが、毎週放送を楽しみにしている視聴者に向けて、メッセージや見どころをお聞かせください。

レオの見どころとしては、戦闘シーンで活きるタイプのキャラクターだと思うので、にぎやかなシーンを見てもらいつつ、熱い戦いに注目していただきたいですね。あと、赤いふんどしがどんな動きをしているのかにも注目してもらえたら(笑)。原作を読まれている方には、アニメではマックスと魔王のドタバタした雰囲気がしっかりと描かれていることをお伝えしたいですし、レオだけでなく、マックス、フレッド、その他たくさんのキャストたちがすごい熱量で演じているので、きっと原作ファンの皆様の期待に応えられるようなアニメになっていると思います。原作と一緒に、アニメの方も応援していただけたら! よろしくお願いします。

Vアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第3話より。

Vアニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」第3話より。

プロフィール

下野紘(シモノヒロ)

4月21日生まれ、東京都出身。主な出演作に「Deep Insanity THE LOST CHILD」(時雨・ダニエル・魁役)、「鬼滅の刃」(我妻善逸役)、「進撃の巨人」(コニー・スプリンガー役)、「僕のヒーローアカデミア」(茶毘役)など。現在「わたしの幸せな結婚」(五道佳斗役)、「アンデッドガール・マーダーファルス」(ファントム役)、「悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。」(アラン役)に出演中。

2023年8月14日更新