取材・文 / 佐藤希

最初、ゼニア役のオーディションを受けていたんですよ

──魔王役はオーディションで勝ち取ったと伺いました。魔王を演じることに決まったときはどういうお気持ちでしたか？

実は最初、ゼニア役のオーディションを受けていたんですよ。

──えっ、そうだったんですか。

「えっ」ですよね。でもマネージャーが、魔王役も大空に合いそうだからそっちも受けてみるかい？って言ってくれて。ゼニアもすごく魅力的なんですけど、原作を読んでどうしても魔王を演じたい気持ちが高まっていたので、受けさせていただきました。だから、魔王に決まってうれしかったです。魔王は小さくてコロコロした見た目の愛らしさも好きですが、いろんな顔を見せてくれるので、演じるのが楽しみでした。

──SNSでも「大空さんの声が魔王役にぴったり」という意見が多かったです。

PVが公開され始めた頃に、YouTubeのコメント欄で原作ファンの方が「マンガ（で想像していたの）と同じ声がする！」って書いてくださっていたのを見かけて、うれしかったですね。原作が好きな人も、私の声やお芝居が合っている！と思ってくださったなら光栄です。

──役作りではどういう点に気を使われましたか？

魔王がマックスに対して抱えている謎の愛情や母性をベースに置きつつ、ファンの皆さんの間でも考察されているように「性別はどっちなんだろう？」とミステリアスな部分があると思うので、どちらとも取れるところを目指してみました。男性でも女性でも、どちらでもしっくり来るような……。対して変身して女子高生の姿になるとき女性っぽさを強めてみたり。

無償の愛を感じました

──先ほどオーディション時にすでに原作を読んでいたとおっしゃっていましたが、この物語の印象や魅力的に感じた点を教えていただけますでしょうか。

私がいいなあと思ったのが、魔王とマックスの関係性。魔王はマックスに対して、愛というか執着にも似た感情と、面倒を見てあげたい母性のようなものを持っていますよね。マックスに会いたいから早めに復活してみるところなどに、彼への思う気持ちが表れていて、かわいらしく感じます。あと自堕落モードのマックスの部屋は、めちゃめちゃリアリティがありますよね（笑）。お布団が敷きっぱなしとか、ちょっと日が入らなくて暗くてゴミが散乱してたりとか。アニメの冒頭に若くて精悍なマックスを見ているから、ギャップが衝撃でした。

──第1話のマックスの部屋は本当にびっくりするぐらい汚かったですよね。

だらだらするのが好きな私から見ても許容できないレベルでした……（笑）。完成した映像は放送前に日笠（陽子）さんと見たんですが、よどんだ空気も感じられる手加減なしの汚さで、日笠さんと「嫌だー……」って言ってました。

──日笠さんまで（笑）。魔王がマックスに感じている愛情の正体はまだはっきりわからないんですが、現時点で魔王はどういう気持ちで彼と接していると思いますか？

私も1巻から読み進める中で、これどういう気持ち？と考察するのが楽しかったですね。「あれ？ これ、魔王はマックスに恋をしているの？」と思える場面がたくさんあるので。現役で戦っていたときから、10年前の精悍なマックスにかなり入れ込んでいるなと思っていましたけど、自堕落になったマックスのことも大事に思っていますよね。落ちぶれてからも面倒を見るところにマックスという人そのものを大切にしているんだなって。「支えてあげたい」という、無償の愛を感じました。

──マックス役の中村悠一さんとは現場でどのようなお話をされていましたか？

今回ぐらい長い時間ご一緒するのは初めてだったんですが、私の悩みや話を優しく聞いてくださってうれしかったです！ 収録中もお芝居の掛け合いの中で、演技の方向を変えていらっしゃったのが、すごく刺激的でした。

──例えばどういう場面で？

マックスが子供たちと昼間に公園で遊んでいて、魔王が陰からこっそりから見ているシーンなんですけど、ここって魔王が「マックスはいったい何をしているんだ？」って呆れる場面ですよね。でもテストのときに、私が「このシーン、子供たちと遊んであげていて、マックスがすごくいいお兄さんにも見えますよね」って音響監督さんに話したら、それを聞いてくださっていたのか、本番では中村さんがより呆れやすいようにダメな大人感を強めてくださったように感じて。お芝居のキャッチボールをすぐに考えてくださって、素敵な先輩だなと思いました。

──なるほど、今このお話を伺ったのでそのシーンを見返してみたくなりました。

そもそも中村さんのマックスって、現役のときは嘘でしょと思うぐらい精悍で爽やかなのに、スキャンダルをきっかけに自堕落になったときのギャップがすごく面白くて。すごく苦労してきた人の声というか、深みを感じました。

マックスの変顔の数々はお気に入り

──作中で大空さんが好きなのはどんなシーンですか？

マックスの変顔の数々はお気に入りです（笑）。本当におじさんの顔で、主人公がそれでいいのかい？って思うほどで。マックスが“プーキューバー”に挑戦している回も、大好きですし……。あ！ あと魔王がマックスの前で初めて女子高生姿に変身した場面は、めちゃめちゃラブコメしてて好きです。マックス、こういう子が好みなんだ！ってモジモジして、2人で照れてる感じがいいですよね！

──あそこは視聴者としてもドキドキしました。

「この2人の関係、発展しちゃうのか……!?」って思わせてくれる要素は本当に捗ります……。

──（笑）。

こんなふうに妄想をかき立てられるシーンが大好きで、作中でもとあるところに2人で出かける場面があるんですけど、デートじゃん！ってにやにやしてました。

──放送後の視聴者の反応が気になりますね。作品タイトルにちなんだ質問なのですが、大空さんが「自分はまだここがレベル1」「昔と比べてレベルが下がった」と思う部分はありますか？

未熟なところばかりですけど……まず生活力ですかね。お料理が上達しなくて……。これから練習しようって思いながらもめんどくささが勝ってしまうのがいけないなと思うんですけど。

──でも、これなら作れるっていうメニューがあるんじゃないですか？

（考え込みながら）うどん……（笑）。冷凍うどんはチンするだけなので楽勝です。あと、片づけ力もレベル1なんですよね。

──逆に伸びしろがあるということだと思います！ それでは最後に、アニメを楽しんでいる視聴者に向けてひとことお願いします。

アニメ「Lv1魔王とワンルーム勇者」は原作のいいところがギュギュっと詰まっていますし、BGMも凝っていたり工夫があったりと、随所に愛を感じる演出がたくさんあってめちゃくちゃ面白いと思います。「えっ、ここまで描いていいんだ！」と思う部分も見られて、すごく挑戦的なアニメになっているので、今後もご期待ください！