コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第3回 神尾葉子「花より男子」「花のち晴れ~花男 Next Season~」
「花男」というライフワーク
主人公とヒロイン、ふたりのモノローグが必要だった
──ジャンプ+の連載ということで、ほかにも意識していることはありますか?
わかりやすいことはすごく意識していますね。マーガレットで描く時もそれが大前提だったんですけれど、女性読者の場合は、雰囲気で話を進めてもその下に潜んでいるものを汲み取ってくれる感じがあって。でも男性読者向けの場合は、特に気持ちの部分はちゃんと言葉にしないといけないかなと。なので、主人公とヒロイン、2人のモノローグが必要だったんですよ。
──少女マンガの場合は、基本的には主人公だけのモノローグになりますね。相手の男の子の気持ちがわからなくてやきもきするのを、読者も一緒に楽しむ、というところがあるので、その違いは面白いです。
そうですね。相手の気持ちがわからなくて、いきなり行動に移してくれることでときめく、というか。でも今回は読者の方たちが、「女の子が何を考えているのかわからないから」と読むのをやめてしまわないように、音のモノローグも入れています。男の子はこういうことを考えていて、女の子はこういうことを考えていて、思いがずれているんだ、というのを読んでわかるようにしないといけないなと。これは初めての試みですね。今はどちらかというと神楽木の考えていることのほうが多く描かれているんですが、徐々に音の気持ちも増やしていこうかなと思っています。
──前作「いばらの冠」の時はデジタルで作画をしてらっしゃいましたが、今もデジタルですか?
それが、今はアナログなんです。デジタルは仕上げだけですね。やっぱり、ペンはいいなあと思っているところです。トータルの作業時間はあまり変わらないと思うんですが、ペン入れの時のスピードはアナログのほうが速い。なんというかこう……デジタルだと液タブ(液晶タブレット)に直接描くんですが、ペン先と絵の間に1枚、何かが挟まっているような感覚があるんです。でも、アナログで墨汁にペン先をつけて、直接紙に描くと、ここ(腕を指して)からペン先に伝わるものがあるんだなあと再確認しました。顔の感じとか、絵も違うんですよ。自分にしかわからない部分かもしれないんですが。
くらもち先生の描く男子の、手の甲が色っぽいんです!
──今回ブックパスのキャンペーンでマーガレット、別冊マーガレットの作品がたくさん読み放題になるのですが、神尾先生のお好きな作品についてお聞かせください。最近ですと、どんな作品を読まれていますか?
河原和音さん、大好きです! 常にキャッチーなお話を考えていらっしゃいますよね。「高校デビュー」はかわいくて大好きですし、読み切りの「こんな私でよかったら」(「河原和音長編読みきり傑作選」収録)もすごく楽しかったです。読んでいて楽しいマンガが好きなんですよ。胸が苦しくなるようなものもいいマンガだと思うんですが、できれば取り返しのつかないような話ではないほうがいいかなあと。河原さんは仕事量もすごいですよね。私は常にひとつのことしかできないので、どうやったらあんなふうにマンガを描けるんだろうって思います。まだお会いしたことがないので、いつかお会いしてみたいですね。最近マーガレットで始まった、やまもり三香さんの「椿町ロンリープラネット」もすごくおもしろかったです。やまもりさんの「ひるなかの流星」も好きでしたね。
──デビュー前に読んでいらしたのはどんな方の作品ですか?
岩館真理子先生の「ふくれっつらのプリンセス」が大好きでした。私にとって、宝物のような作品ですね。岩館先生のお描きになるものは絵がかわいくて、主人公の動きがちょっと奇想天外なところもおもしろくて。デビューして1、2年目のころ、アシスタントに行かせていただいたことがあったんですが、感動しました。1回だけなんですが「うちのママが言うことには」を手伝わせていただいて。本当に私の技術が伴っていなくて……今でも岩館先生には申し訳ない気持ちです。私は高校生の時に別マに投稿したんですが、きっかけはくらもちふさこ先生が描いていらしたからなんです。どの作品も大好きなんですけど……やっぱり「いつもポケットにショパン」ですかね。くらもち先生のようなマンガを描きたいと思っていました。憧れの先生です。
──どういうところが特にお好きだったんですか?
男の子が色っぽいところですね。なんかこう、男の子の背中のラインとか、手の甲とか……ただ足が長いとかそういうのではなくて、体の描き方が肉感的と言うかセクシーというか。そういう細かいところがカッコいいマンガって、私にとっては初めてだったんです。いくえみ綾先生も、大好きです。やっぱり男の子がカッコいいですよね。「POPS」とか、「潔く柔く」とか、大好きです。「いくえみ男子」と言われるのがよくわかりますよね。
カッコいい男子=「行動」がカッコいい人!
──少女マンガで男子がカッコいい、というのはやはり重要な要素でしょうか。
それがすべてではないとは思うんですけど、大事だと思います。新人の頃の編集さんで「男の子がカッコよければ、そのマンガは70%大丈夫だ」と言っている方がいて。すごく雑な言い方なんですけど(笑)、そういうところはあると思います。
──「花男」もまさにF4の男子たちのカッコよさに多くの読者が惹かれていたと思うのですが、ご自分の描く男子の魅力はどういったところだと思いますか?
今まで「F4の中で好きなのは誰ですか」とか「付き合うなら誰がいいですか?」とか何度も聞かれてきたんですが、自分のマンガの男の子にキャラ萌えすることはなくて(笑)。でも、私がカッコよさを読者に訴えるのなら、行動がカッコいい子にしよう、と思っていました。「こういうとき」に、ちゃんと「こういう行動」が起こせる子。リアルな男の子でも、そういう人はカッコいいなと思うので、ちゃんとそれをマンガに反映させたい。これは蛇足なんですけど……「花男」を描き始めた頃だったと思うんですが、女友達と3人で電車に乗っている時に、おじさんにからまれたことがあるんですよ。そしたら、車両の隅っこにいた、ものすごくたくさんピアスをつけて髪の毛を立てた、一見怖そうな男の子が向こうから走ってきて。おじさんを蹴散らしてくれたんですよ。「やめろよ、嫌がってんだろ!」って!
──か、カッコいい……!
すごくカッコいいんですよ! それで、「ありがとうございました」とお礼を言ったら、その男の子の顔が真っ赤になって。「……いえ」ってぶっきらぼうに言いながら、つり革につかまって……。そういうことができる子ってすごいなあと思いますよね。見た目だけではなくて、中身もカッコいい子でした。
──いやあ、まさにマンガのような出来事ですね! 確かに、「花男」の道明寺も行動がすごくカッコいいですよね。
意外性というのもいいと思うんですよ。そんなことをするタイプではないのにしてくれた、とか。ほかのマンガを読んでいても、そういうところに心打たれるところがあります。
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- マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 特集一覧・連載作品年表はこちら
- 第1回 河原和音
- 第2回 咲坂伊緒
- 第3回 神尾葉子
- 第4回 中原アヤ
- 第5回 森下suu
- 第6回 あいだ夏波
- 第7回 やまもり三香
- 第8回 水野美波
- 第9回 幸田もも子
- 第10回 宮城理子
- 第11回 佐藤ざくり
- 第12回 椎名軽穂
- 第13回 小村あゆみ
- 第14回 いくえみ綾
- 第15回 ななじ眺
- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
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※こちらの作品は読み放題対象外となります。
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神尾葉子(カミオヨウコ)
6月29日東京都生まれ。1986年、ザ マーガレットにて「はたちのままで待ってる」でデビュー。1992年より12年間にわたってマーガレットで連載された「花より男子」は単行本発行部数6100万部を超える大ヒットを記録し、第41回小学館漫画賞を受賞。同作はTVアニメ、小説、台湾での実写ドラマ化など多彩なメディアミックスがなされ、いずれも好評を博した。2016年にはミュージカル化も決定している。2015年2月、「花より男子」の続編である「花のち晴れ~花男 Next Season~」をWEBマンガアプリ・少年ジャンプ+にてスタート。そのほか別冊マーガレット(すべて集英社)での連載作品に「キャットストリート」「虎と狼」「いばらの冠」などがある。
2016年1月22日更新