コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第3回 神尾葉子「花より男子」「花のち晴れ~花男 Next Season~」
「花男」というライフワーク
描き残したものがあるとしたら……やっぱり「花男」だった
──「キャットストリート」や「虎と狼」など、「花男」以外のご自身の作品は読み返したりはなさいますか?
「キャット」は、何年か前に文庫化していただいた時に読み返しました。作品としてはすごく好きなんですけど、「花男」が終わったばかりで、クタクタになりながら描いた作品で。ちょっと抜け殻というか……干物みたいになっていた時期だったんです。主人公のケイトと自分とがリンクしているので、読んでいると疲れ切っていた自分が思い出されましたね(笑)。
──干物のような時期があったんですね。
はい。その後も、しばらく「花男」が終わった脱力感をひきずっていて……ようやくここ最近、元気になってきたんですよ。だから今回「花晴れ」が描けるようになったのかもしれませんね。「花男」のシリーズは、私が元気じゃないと描けないものなんだと思います。
──何か元気になるきっかけのようなことはあったのですか?
長い休みをいただいた、というのはあるかもしれないですね。去年の7月頃にジャンプ+の連載の話をいただくまでは、何カ月かブラブラしていて、これからどうやって生きていこうかなあ、と考えていました。
──これから「何を描こうか」ではなく、「どうやって生きていこうか」だったんですね。マンガを描くのではない人生もあるかもしれない、ということでしょうか。
そうですね、そう思っていました。そこに連載のお話をいただいて。描くとしたら、これから先、何作も描けないだろう、あと、描き残したものがあるとしたらなんだろう、と考えてみたら……やっぱり「花男」だったんですよね。「花男」で、描いてみたかったことがある、と。もう「花男」は描かない、と思っていた時期もあったんですけれど。
──以前、「描くことで私自身もがっかりするのが嫌なんですよ。それくらい「花男」を大事に大事にしてきました」という話もされていましたね。
そうですね。でも、連載していた時、当時の編集長に「あなたは、このマンガを島にしなさい」と言われたことがあって。
──島、ですか。
はい。終わらせてしまうのではなくて、「別のところに遊びに行って、またこの島に帰って来なさい」と。そう言われたのが10何年前のことだったと思うんですが、そろそろその島に船を出してもいい頃かなと思いました。
──そんな経緯があって「花晴れ」が始まったんですね。以前、「花男」のキャラクターたちが「あの人たちは今、どんな感じでいるのかなあ」と頭に浮かぶことがある、とおっしゃっていましたが、「花晴れ」を描き始めてよりその感覚が強くなったりはされましたか?
そうですね。どういうふうに出そうかなと考えると、今どんなふうに生活しているかなとか、より近い感じでは考えますね。前は、ぼんやり遠くのリゾート地のことを思うように彼らのことを考えていたんですけど、今は対岸というか、もう向こう岸まで来ているような感じで考えています。
──ただ、しばらくマンガから離れてみて、そこから連載をするとなると、さらなるパワーが必要と言いますか、「よっこらせ」というような感覚はありませんでしたか。
本当にそんな感じでしたね。これから百段の階段を登る、みたいな、「さあ、行くか……!」という感じでしたね(笑)。今、まだ登っている最中ですけど。今回、連載を始めるにあたって、突然何もないところから始めるようなことはせずに、まずはネームを5回分一気に描いて溜めておいたんですよ。そこからリハビリみたいな感じで少しずつ作画をして、勘を取り戻して行こうかなと思って。でもジャンプ+って、少年ジャンプの編集さんが担当なので、週刊の感覚というか、「じゃあまた来週、次のネームの打合せをしましょう!」みたいな感じで、スピードがすごく速いんですよ。「次の打合せは……この日の11時なら僕空いてます」みたいな。「来週だと、まだネームができていないかもしれません……」って言うと「あ、途中まででもいいので、打合せしましょう!」と(笑)。
──少女マンガの現場とはずいぶん違うスピード感ですね。
でも今の私には、そうやってガンガン進めてくださるのがよかったんだなと思っています(笑)。
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- 第1回 河原和音
- 第2回 咲坂伊緒
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- 第13回 小村あゆみ
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- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
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神尾葉子(カミオヨウコ)
6月29日東京都生まれ。1986年、ザ マーガレットにて「はたちのままで待ってる」でデビュー。1992年より12年間にわたってマーガレットで連載された「花より男子」は単行本発行部数6100万部を超える大ヒットを記録し、第41回小学館漫画賞を受賞。同作はTVアニメ、小説、台湾での実写ドラマ化など多彩なメディアミックスがなされ、いずれも好評を博した。2016年にはミュージカル化も決定している。2015年2月、「花より男子」の続編である「花のち晴れ~花男 Next Season~」をWEBマンガアプリ・少年ジャンプ+にてスタート。そのほか別冊マーガレット(すべて集英社)での連載作品に「キャットストリート」「虎と狼」「いばらの冠」などがある。
2016年1月22日更新