コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第14回 いくえみ綾「I LOVE HER」「バラ色の明日」「太陽が見ている(かもしれないから)」
人間を鋭く切りとるいくえみ節
終わりを見たいから、短編が好き
──デビューしてからも別マはしっかり読まれてましたか?
そうですね。高校生くらいまで、自分で発売日にコンビニ行ってました。
──ええ! 見本誌も届きますよね?
届くんですけど、遅かったから(笑)。そこに描いてる感じがなくて、なんかもう普通に読者でしたね。プロ意識は全然なかった。「まっすぐにいこう。」のきらさんが出てきたときのことをよく覚えていて。デラマ(デラックスマーガレット)で読み切りとか読んで「すーっごい上手、この人面白い!」って思ってたら、すぐにダーッと駆け上がっていったんで、「やっぱりね!」と思いました。
──先見の明だわ!と。
そうそう(笑)。
──河原和音さん、椎名軽穂さんとは同じ北海道組ということで「いくえみ綾WORKS」でも対談されていましたが、特にお好きな作品はありますか?
河原さんの「魔女にご用心」(「河原和音長編読みきり傑作選」収録)って読み切りがすごく面白くて好きでしたね。広末涼子似の女の子が、ニコニコしてるんだけど、いろいろ企んで主人公が貶められるやつ。昔は河原さんも軽穂ちゃんも割と家に遊びに来てくれて。この間も久しぶりにお会いして、河原さんから「家に遊びに行ってもいいですか」って言われたので、軽穂ちゃんと2人で来てくれるかな。軽穂ちゃんもデラマで描いてた「最高の夏」(「恋に落ちる」収録)って読み切りが印象深い。女の子が水着を着て笑ってる扉絵がすごいかわいい!と思って、本人に一生懸命伝えた覚えがあります。
──やっぱり、読み切りのほうが印象に残ってるんですね。
自分でも、さっきから話しながらそう思ってました(笑)。短編のことばかり言ってますね。なんだろう、終わりを見たいんですよ。始まって終わるのが好きなんですね。
──水野美波さんもそうだし、別マの作家さんは北海道の方が多いですね。
昔から多いですよね、なぜか。私、高校生のときに初めてアシスタントに行ったのが大谷博子さんだったんです。ほとんど何もできなかったですけどね。「枯れ木を描いて」って言われて、描いても描いてもダメ出しで、木を描いてひと晩終わる、みたいな(笑)。
──あとは、中原アヤさんとも交流があると単行本の柱で書かれていたことがありました。
一緒に大阪行ってね。懐かしい。アヤちゃんは「ラブ★コン」とか、楽しくてやっぱり好きでしたね。なんであんなに面白いんだろう。大阪人だからなのかな。
──中原さんもテンポのよさが魅力的ですよね。デビューの時期が近い作家さんはどなたがいらっしゃいますか?
多田かおるさんは高校生デビューで、私の4つ上だったかな。姉と同じ年齢だったからよく覚えてます。「イタズラなKiss」はホントにこう、マンガっぽいマンガですよね。今の人だと「こんなのありえない」とか言いそうですけど、ありえないことは何もない。だから面白いんですよね。
いっぱいマンガ描いていられるのが幸せ
──最近の若手の作家さんでは、お好きな方とかいらっしゃいますか。
やまもり三香さんは、絵を見るたびにかわいいなと思ってました。
──やまもりさんはインタビューでもお話しされていました(参照:第7回 やまもり三香インタビュー)けど、いくえみ先生へのリスペクトをすごく感じますよ。この連載をこれまで13回やってきて、毎回思い出のマーガレット作品を聞いてきたんですけど、皆さん必ずと言っていいほどいくえみ作品を挙げていかれるんです。今活躍してるマーガレット作家さんはほとんど、いくえみチルドレンなんだなあと。
いやいや……。最近はあんまりパーティーにも行ってないので、なかなかお話する機会がなくて残念なんですよね。最近の人たちはホントに絵が上手いなあと思います。
──最後に今後のいくえみ先生についても伺えればと思うんですが。今、抱えてらっしゃる連載が……。
自分でも数えたくないんですけど(笑)、6本かな。今後は減らしていきたいですね。体力的にしんどいし、スケジュールも自分の頭の中で覚えてるので、締め切りを間違えちゃったりもして。最近やっと落ち着いてきたので、減らしていきます。
──でもきっと引く手数多で、お声は掛かり続ける気がしますが……(笑)。今後描いてみたいジャンルや、作品はありますか?
なんかもう、特別ないですね(笑)。
──あはは(笑)。
そんなにね。先の展望をあまり考えてないんですよ。
──ひとつの作品を描きながら、新しい作品のアイデアが浮かぶこともあります?
昔はあったかもしれないけど、今はもうないですね。ひとつの話の次の展開も、描いてるときが一番なんとなく見えてくるんですけど、描き終わると忘れちゃうことも多い。なので原稿描いてるときに「今次のネーム描いたらすごいいいの描けるんじゃない?」って思うんですけど、そんなことができるわけもなく(笑)。
──でもデビューして36年、ほとんど休みなくたくさんの作品を描き続けてこられました。それは何が原動力になっていたと思いますか?
別マ時代に3カ月とか4カ月とか休んだことはありますけど、それ以外はずっと描いてきましたね……。やっぱり好きだったんでしょうね。ひとりでコツコツやるのが性に合ってたというか。昔から、学校が休みの日や連休があっても、どこにも行きたいと思わなかったんです。いっぱいマンガ描いていられるのがとにかく幸せだったんですね。
──以前あるインタビューで、マンガを描く理由を「いろんな人間が描きたいから」とお話しされていました。そのモチベーションは変わらないですか。
そうですね。ストーリーが描きたいというより、「この人がこういうことをするから、こういう話になる」というようなところを描きたいんだと思います。それは今でも変わらないですね。
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- マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 特集一覧・連載作品年表はこちら
- 第1回 河原和音
- 第2回 咲坂伊緒
- 第3回 神尾葉子
- 第4回 中原アヤ
- 第5回 森下suu
- 第6回 あいだ夏波
- 第7回 やまもり三香
- 第8回 水野美波
- 第9回 幸田もも子
- 第10回 宮城理子
- 第11回 佐藤ざくり
- 第12回 椎名軽穂
- 第13回 小村あゆみ
- 第14回 いくえみ綾
- 第15回 ななじ眺
- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
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- いくえみ綾「太陽が見ている(かもしれないから)」2巻
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いくえみ綾(イクエミリョウ)
1964年10月2日北海道生まれ。1979年、別冊マーガレット(集英社)にて「マギー」でデビュー。短編を得意とし、時代とマッチした感性の作品で20代女性を中心に人気を得ている。2000年「バラ色の明日」で第45回小学館漫画賞を受賞。奥田民生のファンとして知られ、その楽曲をマンガでトリビュートした単行本「スカイウォーカー」を発表している。2004年よりCookie(集英社)にて「潔く柔く」を連載。同作は2009年、第33回講談社漫画賞少女部門を受賞する。2010年にCookieにて「プリンシパル」を、2011年にcomicスピカ(幻冬舎コミックス)にて「トーチソング・エコロジー」を連載開始。2015年現在は、Cookieにて「太陽が見ている(かもしれないから)」、Cocohanaにて「G線上のあなたと私」、フィール・ヤング(祥伝社)にて「あなたのことはそれほど」「そろえてちょうだい?」、月刊バーズ(幻冬舎コミックス)にて「私・空・あなた・私」、月刊!スピリッツ(小学館)にて「おやすみカラスまた来てね。」と6本の連載を抱えている。
2016年1月22日更新