「FGO」第2部終章目前!歴戦のプレイヤー・梅津瑞樹が全マスターと見届けたい、“終わってほしくない物語”の終焉 (2/2)

ネタバレありで語る奏章、「そういうことしないでくれよ!」

──ここからはネタバレもありで、少し踏み込んで奏章のお話をできればと思います。奏章ではサーヴァントたちとの別れも描かれましたね。

「奏章II 不可逆廃棄孔 イド」はアヴェンジャークラスとの別れが描かれるじゃないですか。その喪失感たるや……。第2部 第5章「Lostbelt No.5 星間都市山脈 オリュンポス 神を撃ち落とす日」で僕が好きだった(宮本)武蔵が消えたときも思いましたけど、「そういうことしないでくれよ!」って(笑)。

梅津瑞樹

梅津瑞樹

──マテリアルに「DATA LOST」とか「LINK LOST」とかいう表示、増えましたね……。

エドモン(巌窟王 エドモン・ダンテス)に関してはけっこう前から伏線もあったし、「いろんなものを賭して主人公の背中を押すためにここまでやってくれたんだ」っていう感動はひとしおでしたね。でもアヴェンジャーがみんな消えるのには驚きました。“オルタ”の代名詞的な存在で、「FGO」の顔の1人でもあるジャンヌ・ダルク〔オルタ〕が消えるってあり得る!?みたいな。ゲームの最序盤からいて、イベントにもたくさん登場して、ジャンヌ・オルタとはたくさん思い出があるじゃないですか。

「奏章II 不可逆廃棄孔 イド」より、ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕。

「奏章II 不可逆廃棄孔 イド」より、ジャンヌ・ダルク〔オルタ〕。

──「奏章IV 人類裁決法廷 トリニティ・メタトロニオス」ではルーラーとの別れもありましたね。

奏章IVの最後でリリィ(ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ)が泣いていましたよね。ってことは、本当にみんないなくなってしまったってことだよなって。ラストのリリィがすごくかわいそうでした。最終的にはみんな戻ってくるのかな……。いやでも、もう帰ってこないからこそ、価値のある終わりだったという気もするな。

マシュはようやくみんなと同じ業を背負えた

──先ほどマシュの成長の話も出てきましたが、奏章IVでは彼女の大きな決断が描かれました。奏章IV以前のマシュにはどんな印象をお持ちでしたか?

主人公とともにマシュはいろんなものを受け取って、一緒に乗り越えてきて心も育っている。それぞれの世界の価値観に触れたうえで「それでも」って戦ってきて。でもやっぱり、どこかきれいに育ってきているなっていう印象はあったんですよ。それがようやくここで、ある種の人間性みたいなものが立ち上がってきた。“いい子”だったマシュが、ちゃんと内側に“嫌い”という感情を持てるようになっていて……。今マシュの成長を描いてくれるんだという感動がすごくありましたね。マシュの無垢さを指摘して、そこに重点を置いて描くのが斬新と言うか。マシュは厳密に言えばデミ・サーヴァントですけど、彼女が“人間”なんだなということを、すごく実感できた章でした。

──わかります。

世の中のゲームの中でも、主人公サイド──いわゆる“正しい行いをしている人間”の負の側面って、ああいう生々しさで描かれることが少ない気もしていて。しかもマシュという、みんなからきれいに磨かれて、プレイヤーからも大切に見守られてきたようなヒロインが、誰かを憎いと思ったり、誰かに対して負の感情を抱えたりするところがなんかいいなって。そこが描かれることで、物語の中で消化されていくだけの、当たり障りのない成長譚ではなく、ちゃんと1人の人として大人になっていってる感じがして素敵ですよね。

「奏章IV 人類裁決法廷 トリニティ・メタトロニオス」より、マシュ・キリエライト(シールダー・パラディーン)。
「奏章IV 人類裁決法廷 トリニティ・メタトロニオス」より、マシュ・キリエライト(シールダー・パラディーン)。

「奏章IV 人類裁決法廷 トリニティ・メタトロニオス」より、マシュ・キリエライト(シールダー・パラディーン)。

──私も9年ほどプレイしていて、9年間物語の進行に合わせてマシュの成長を見守ってきたことになるので、もう親心に近い愛着が生まれていますね。そういうプレイヤーにとって、奏章IVのマシュの内なる戦いはつらくもあり、感慨深いものがあったかもしれません。

うんうん。これまでにもマシュの苦悩や挫折は描かれてきましたけど、今回が一番ヘビーだったなと。でも、これまでそれぞれの世界と向き合って、葛藤して、罪の意識を持ちながらも異聞帯を閉じていった主人公の選択と同じことというか。その隣にいたマシュも、ようやくみんなと同じ業をちゃんと背負えたんだなって。何かを選び、何かを選ばないことは残酷かもしれないけど、その残酷さをカルデアのみんなが等しく共有して感じているという描写が、嘘がない感じがしてよかったです。

主人公を見る目が変わっちゃいました

──マシュが決断して成長したことで、主人公が孤独に背負ってきた業がやっとともに背負えるものになったようにも思いました。それまでの主人公には超人性や危うさ……もはや怖さすらあったなと。

だいぶ異常ですよね。あれだけ異聞帯と向き合ってきて、その都度自分の中で消滅させることを飲み込んでいくじゃないですか。どこかで矛盾が生じたり、ほころんでいったりしそうなものなのに、それでも120%で立ち向かえるのはおかしいなって。

──もちろん葛藤はしてるけど、それでも前に進み続けていますからね。梅津さんは主人公=自分としてプレイされるタイプですか?

普段はどちらかというと主人公は自分であるという想定で遊ぶことが多いです。でも、第2部で主人公のイラストが登場する演出が何度かあって、その顔がどんどん曇っていくのを見た瞬間に、自分はスマホを持ってけっこう冷静に遊んでいるけど、主人公たちはのっぴきならない世界を生きていることに気づいて。自分とは切り分けられた人として存在しているなって、そこから見る目が変わっちゃいました。

──自分じゃないかも、みたいな(笑)。

そう(笑)。僕はあくまで後ろらへんで見てる人みたいな。

梅津瑞樹

梅津瑞樹

──第2部の旅が終焉を迎えた後、主人公たちはどうなるんでしょうね。

どうなんだろう……。異星の神を倒したらすべてが元に戻るという話もありましたけど、本当にそうなるのであれば、主人公の、このカルデアの旅は一旦ここで終わるのかなって思いもちょっとあったりします。

──第2部は終了しますが、「FGO」自体は今後も続いていくというところで、今後の展開が気になるところですね。

今の主人公とは違う人たちの物語が始まるとか、いろんな方向が考えられますからね。「FGO」は続いていってほしいので、希望的観測を込めていろんな可能性を想像しておこうと思います。

梅津瑞樹
梅津瑞樹

梅津瑞樹

プロフィール

梅津瑞樹(ウメツミズキ)

1992年12月8日生まれ、千葉県出身。bamboo所属。2015年から2022年まで虚構の劇団のメンバーとして活動し、2023年に自身がプロデュースして橋本祥平と共同企画した演劇ユニット・言式を旗揚げした。主な出演作に、「舞台『刀剣乱舞』」シリーズ(山姥切長義役)、「ミュージカル『薄桜鬼 真改』」(相馬主計役)、「『チェンソーマン』ザ・ステージ」(早川アキ役)などがある。執筆活動も行い、舞台の脚本を手がけるほか、随筆・短編小説「残機1」が太田出版から発売されている。