スマートフォン向けRPG「Fate/Grand Order(以下、「FGO」)」が、2017年末より展開してきた第2部「Cosmos in the Lostbelt」。第2部では、あらゆる生命や文明が“白紙化”されてしまった地球を救い、人理を取り戻すための戦いが描かれてきた。そんな第2部の終章が、12月20日に開幕する。
コミックナタリーでは終章に向け、「FGO」のファンで長年プレイを続けている俳優・梅津瑞樹へのインタビューを実施。奏章「Ordeal Call」もクリアしているという梅津に、終章へ挑むマスターとしての意気込みや、ヒロインであるマシュへの思いを語ってもらった。インタビューは、奏章のネタバレがない前半と、ネタバレありで感想を聞いた後半の2ページに分かれているので、読者自身のスタンスや進行度に合わせて読んでいただきたい。
取材・文 / 伊藤舞衣撮影 / 武田真和
第2部終章応援プロジェクト「Final Order Project」
第1部終章で体験したかったリアルタイム感
──梅津さんはかなり熱量高い「FGO」のファンだと伺っているのですが、「FGO」を始める以前から「Fate」シリーズのファンだったのでしょうか?
もともと「Fate/stay night」や「Fate/EXTRA」シリーズをプレイしていました。その「Fate」のスマートフォン向けゲームが出て、新たなサーヴァントがいっぱい登場するということで、興味があって。本格的にプレイを始めたのは2017年くらいからですね。
──2017年というと、第1部が完結して、第1.5部「Epic of Remnant」が始まったあたりですね。
はい。だから第1部の終章にはリアルタイムで参加できていなくて、それがめちゃくちゃ悔しくて……!
──2016年末に開幕した第1部終章「終局特異点 冠位時間神殿 ソロモン」(※)は、2017年以降の人類の未来を取り戻すためにマスター全員が力を合わせて戦うというものでした。現実の時間とゲームの物語が交差するのは、開幕当時にプレイした人たちだけの特別な体験でしたね。
※現在はゲーム内に1人で遊べるメインストーリーとして実装され、条件を満たせばいつでもプレイすることができる。
熱さとか、ドキドキ感、「この瞬間を、今自分たちがゲームの中で戦って守っている」っていう実感があったんじゃないかと思っていて。今この瞬間に「FGO」をプレイすることの意味が、現実の自分にも重なってくる体験というのを逃したのがもったいなかったな。リアルタイムでプレイできた人がすごくうらやましい。
──第2部の終章でもそんな体験が待っているとうれしいですね。第1部の終章を逃したとはいえ、プレイ歴8年以上というのは長く遊ばれていると思います。
そうですね。スマートフォンのゲームはいろいろダウンロードしてプレイはしますが、「FGO」は情熱を絶やさずに遊び続けられる。自分でも「よくこんなに飽きないゲームがあるもんだね」って(笑)。継続的に新しいサーヴァントが実装されて、イベントもコンスタントに開催されていて、「もっとシナリオを読みたい」と思って夢中でプレイしていると、最新のシナリオに追いついて。長めのシナリオで読むものがなくなると、「幕間の物語」とかをプレイしつつ、イベントを待つっていうのを繰り返してます。
憧れのクラスはライダー
──梅津さんはご自身をクラスに当てはめるとしたら、どのクラスになると思いますか?
役者はみんなアルターエゴかプリテンダーなんじゃないですかね(笑)。僕の性格的にはアヴェンジャーな気がしますけど。根に持つから(笑)。
──(笑)。役者さんは自分と向き合う機会も多そうですし、誰かの役を演じるというところからアルターエゴとプリテンダーなんですかね。
僕を応援してくれる人にも「Fate」のファンが多くて、わからないけどそういう方からもプリテンダーってよく言われます(笑)。とりとめもない、人を傷つけない嘘をつくのがけっこう好きだからかな。願望だと、ライダーがいいんですよね。
──ライダーですか。
ライダーってなんかどの作品でもおいしくないですか?(笑) 戦闘能力も高めだし、メインキャラクターといい関係にあったりすることが多くて。あと僕は自転車を3台持ってるくらい好きだしな、みたいな!(笑)
──では、ライダーに憧れているプリテンダーかアヴェンジャーということで(笑)。
第2部は「終わってほしくない」の連続
──第2部は2017年末にスタートしました。第2部では、汎人類史とは異なる歴史を歩んできた世界“異聞帯”を、主人公たちが消滅させていきます。第2部の物語には、どんな印象をお持ちですか?
魅力的なキャラクターたちとの出会いと別れが何度も何度も描かれて、「終わってほしくない」の連続だったと思います。各章が終わるたび、カタルシスを感じるとともに、「あの人たちとはもう会えない」という気持ちになって。名残惜しさとか、世界を1つ閉じてしまうことの切なさがありましたね。で、終わった後に異聞帯の人たちが描かれた概念礼装が出てくるじゃないですか。そのフレーバーテキストを読んだときに「うわあ……!」って(笑)。
──あれには心をえぐられますよね。
ゲームとはいえ、「自分たちが誰かの世界を終わらせている」という重みをちゃんとプレイヤーに与えてくるっていう。これまで世界を救うという使命感のもとで戦ってきて、自分たちの勧善懲悪的な側面が強かったけど、「自分たちの世界を取り戻すために戦うというのは、こういうことなんだぜ」ってより強く実感させてきたのは第2部からだなと思います。
──それが7章連続で、という……。
あと全体を通しての伏線というか、世界の謎が増えたような感覚もありますね。張られていた伏線が忘れた頃に回収されたりして。第1部はオムニバス的な面白さがありましたが、第2部は1つの物語としての深さが増したなと。
──第2部から登場したクリプターたちはいかがでしょう。
「Fate」ファンとしては、マスター同士の戦いは「これが見たかった!」みたいなところがありましたね。しかもクリプター全員キャラが立っている。
──相対する立場ですが、物語を追うごとに彼らの人柄や行動の意味がわかってきて印象も変化しますよね。
本来であれば志をともにしていたかもしれない人たちなので、最初からただの悪者ではないとは思っていました。何より、主人公と出会う前のマシュ(・キリエライト)を知っていて、確かに“何か”を共有していた。主人公とマシュはずっと一緒にいて、マシュはその中で成長していったけど、クリプターの彼らからも大事なものをもらっていたんですよね。主人公と出会う前のマシュの話が出ると嫉妬にも似た感情を覚えましたけど(笑)、マシュの成長が描かれるうえでクリプターたちとのエピソードが聞けるのは興味深かったです。
──主人公とクリプターたちが違う形で出会っていれば……と想像せずにいられません。クリプターと行動をともにすることもありましたね。
カドックはいるのが当たり前というくらい一緒にいてくれましたけど、ペペ(スカンジナビア・ペペロンチーノ)もマスターに寄り添ってくれて。あの人は人間を超越していると言っても過言ではないくらいめちゃくちゃ強くて、ある種の諦観もしていたけど、なんかすごく優しい人でしたよね……ペペ好きだな。思い返すと、クリプターにはもう一度会いたいなって人が多いですね。ベリルはちょっとわからないですけど(笑)。
第2部終章では何が起こる?梅津瑞樹が予想する超過酷な仕掛け
──第1部の終章では、これまで縁をつないできたサーヴァントたちが駆けつけてきてくれました。第2部と奏章は別れの連続でしたが、終章ではどんな展開が待っていると思いますか?
第2部はもともと少数精鋭で戦ってきて、孤独感がずっと付きまとっていたので、そこからさらに孤独な戦いになることを想像すると怖いです。あとゲーム的なところで言うと、またレイドバトルがあるんですかね?
──現状では特に明言されていませんが、大規模なイベントや驚くような仕掛けは期待しちゃいますよね。
歪みに歪んだ世界の修正に必要なのは「FGO」のデータをすべて消し去ることで、アプリを長押しして×ボタンを押させる……なんてことがあったりして。「これが本当の意味のリセットだ」って言って(笑)。
──嫌すぎる(笑)。
でも本当に、何が待っているんでしょうね。まだ回収されていない伏線もけっこうあるように思えます。カルデアの者とか、異星の巫女とか……。終章のボスも誰になるんだろう。期間限定イベント「カルデア・U-サマーアイランド ~大統領は夏の夢を見るか?~」を終えると、U-オルガマリーとの戦いがここから激しさを増すという想像が難しくて。違う何かが終章のボスとして登場する可能性もあるよなって。
──終章で謎がすべて明らかになるのか、気になりますね。終章にはリアルタイムで参加されますか?
ここまで来たらリアルタイムで参加したいですよね。パーティを強化させるような動きもあるし、おそらくここまでユーザーに入念に準備させているということは、何かがあるんでしょう。
──梅津さんのカルデアの戦力はいかがですか?
今の自分の戦力であれば困ることはないだろうとも思っています。でも、「どうすればクリアできるんだよ!」ってくらい、ちょっとつらい思いをしたいところもありますよね(笑)。
コミケでグッズを買うほどの“推し”は
──終章に向けてサーヴァントの強化システムも手厚くなっています。クラスごとにサーヴァント1騎をグランドサーヴァントにして、特別な強化を施せる“グランドグラフシステム”も順次開放されていますが、梅津さんのグランドサーヴァントを教えてください。
けっこう周回するので、実は絆ポイントの配分とか効率も考えながら入れ替えてますね。最初は周回効率のいいサーヴァントにして、その後“推し”をグランドサーヴァントにする、みたいな。セイバーだと、最初はメドゥーサで周回していて、その後はリチャードI世に変えましたね。「Fate/strange Fake」のアニメも始まるので、すごく強化されるんじゃないかと打算して(笑)。今は悩んだ末に、好きな黒姫をグランドサーヴァントにしています。あとせっかくなら低レアリティのサーヴァントで遊びたいという思いも常々あって、バーサーカーは森長可にしています。アステリオスと悩んだんですけど……。
──かなりゲーマー的な思考で編成して楽しんでいるんですね! “推し”でずっとグランドサーヴァントにしているキャラクターはいますか?
エクストラIは、性能面もキャラクター性も、ボイスを担当している田村ゆかりさんも好きなので卑弥呼にしています。あとエクストラIIは「Fate/EXTRA CCC」から好きなメルト(メルトリリス)がずっとグランドサーヴァントです。
──今後アーチャーとキャスターが解放されますが(※取材は11月の上旬に行った)、それぞれのクラスの“推し”を教えてください。
アーチャーはバーヴァン・シーですね。宝具MAXでレベルもちゃんと上げているので、「いつでも冠位をあげられるよ」って感じです。メルトもそうですけど、ああいう子が好きなんですよね(笑)。
──あはは(笑)。なんとなく好みをお察ししました。
バーヴァン・シーは不幸な最期を遂げることもあって、なんとかして救ってあげたいという気持ちもあります。だからのちに期間限定イベントで楽しく過ごしているのを見ると、「よかったね」って思えますね。バーヴァン・シーのキャラクターデザインを担当された望月けいさんがコミケで出しているグッズも、友達に頼んで買ってきてもらったりするくらい好きなサーヴァントです。キャスターなら救世主トネリコ(雨の魔女トネリコ)かなあ。
──では、最近梅津さんの中で“熱い”と感じたサーヴァントは?
近藤勇が実装されたのは熱かったですね。新選組の隊士がこれだけ揃っている中で、近藤はいつ実装されるんだろうって思っていたので。でも、これで新選組のイベントが終わるんじゃないかと不安になるところもあります(笑)。
──イベント名が「幕末チャンバラ神話 ぐだぐだ新選組・ジ・エンド REVENGE OF MAKOTO」で「ジ・エンド」って言ってますからね。
僕は以前舞台で新選組の相馬主計役を演じたことがありまして。相馬主計はすべてを背負って投降した、最後の局長とも言われる人なんですよ。今実装されている面々と比べるとあまりメジャーではないかもしれないですけど、いつか出てきたりしないかなって。「もうちょっと新選組はいるんだぜ!」って思ってます。
──「リターンズ」とか「フォーエバー」となって続く可能性に期待しましょう(笑)。
第2部終章を一緒に見ようぜ
──記事の読者にはまだ「FGO」をプレイしていない人もいると思いますが、そんな人に向けて「FGO」を勧めるなら何を伝えますか?
物語の厚みもここまできたら大河なのでは、と思うほどのシナリオはすごく楽しんでもらえるだろうなって思います。もちろん読むのはそれなりに時間がかかりますけど、10年かけて進展してきたこの物語を、遅れてでもたどる価値はあると思います。僕は長年「FGO」を遊んできて無駄だったと思ったことがないので、すごく自信を持って勧められる。1つひとついろんな出会いと別れを繰り返して紡がれてきたカルデアの物語は、これから始める人にもゆっくり咀嚼して楽しんでもらえるんじゃないかなって思いますね。
──そうですね。
あとサーヴァントがたくさんいるので、あなたの好みのキャラクターが絶対に1騎はいる! 好きなサーヴァントをきっかけに始められるし、そのサーヴァントと出会うまでも面白いはずなので、そこから始めてみてもいいんじゃないかな。
──今プレイをお休みされている方にもメッセージをお願いします。
終章だよ!と(笑)。もし第2部の途中だったら、あなたが決して短くはない距離を走ってきた物語が、いよいよきれいに終わるかもしれない。その終わりをみんなで一緒に見届けたいと、あなたは思わないのかい!?って、なんか脅迫みたいになっちゃいますけど(笑)。一緒に見ようぜと。
──それぐらい熱いタイミングですからね。
キャラクターも増えていって、物語はねじれにねじれていっています。解決した問題もあれば、謎が深まった部分もあって、ものすごく面白いものがまだ先に待ち構えている。キャンペーンやミッションで聖晶石も配布されて、欲しいサーヴァントも手に入りやすくなっているし。グランドグラフとか新しいシステムも導入されていますけど、アイテムの配布も手厚いのでお休みしていた方でも追いつけると思います。「最後までがんばるなら今ですよ!」って伝えたいですね。
──ありがとうございます。この後は、ネタバレも解禁してストーリーの感想を伺っていきたいと思います!
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ネタバレありで語る奏章、「そういうことしないでくれよ!」





