東映と東映ビデオが、舞台と映画を連動させた新企画「東映ムビ×ステ」を立ち上げた。同プロジェクトの第1弾となる「GOZEN」は、御前試合を題材とした時代劇で、7月には犬飼貴丈主演の映画「GOZEN-純恋の剣-」が公開され、9月12日からは矢崎広が主演する舞台「GOZEN-狂乱の剣-」が上演される。
このたびステージナタリーでは、舞台「GOZEN」に出演する矢崎、元木聖也、前山剛久、松村龍之介、若月佑美、梅津瑞樹、上遠野太洸の座談会を実施。東映の特撮作品に出演経験のあるキャストから、舞台を中心に活躍する気鋭の俳優まで、まさに“異種格闘技戦”のような若手キャスト7人に、舞台「GOZEN」に懸ける思いを聞いた。
取材・文 / 興野汐里 撮影 / ヨシダヤスシ
ダメ男、 妹ラブな兄、主君大好きマン……多彩なキャラが集合
──舞台「GOZEN-狂乱の剣-」には個性的なキャラクターが多数登場します。ご自身の解釈を交えながら、それぞれのお役のご紹介をお願いできますか?
矢崎広 望月八弥斗は、一言で言うと悩める青年でしょうか。府月藩主である望月家に生まれ、家を継がなければと思っている最中に父が死に、気が付くと叔父が藩主になっていて……。付き合っている女性と別れて、自ら悲劇に向かって走っていくような、そんなダメな男です。
一同 ダメ男!(笑)
矢崎 周囲の油断を誘うために、最初は意図的に狂気を装うんですけど、物語が進むに連れて自分自身のことがどんどんわからなくなっていくんです。
若月佑美 私が演じる小松原奈奈はそんなダメ男・八弥斗さんの恋人です。まっすぐな性格で、少し背伸びしたがるところがあるように感じますね。八弥斗様のことで頭がいっぱいで、思いが強すぎるがゆえに周りが見えなくなっているような。恋は盲目という言葉がありますが、まさに奈奈は愛に狂っている状態ですね。
松村龍之介 僕が演じる奈奈の兄・小松原蓮十郎は、したたかな野心家で、頭の回転が速い生真面目なキャラクターですね。自分の主君である甲斐正様の一番にもなりたいし、府月藩で代々家老を務めてきた小松原家の繁栄も願っている。父である烈山のことをとてもリスペクトしているのと、あとは妹へのラブが強い(笑)。
若月 ははは!
──前山さん演じる望月甲斐正の護衛・結城蔵人は、映画「GOZEN-純恋の剣-」にも登場したキャラクターです。お一人だけ特に個性的なビジュアルなので、以前インタビューで「もしかして現場を間違えた?」というようなお話が出ていましたね(笑)(参照:「GOZEN-純恋の剣-」犬飼貴丈×武田航平×前山剛久×井澤勇貴×松本寛也×井俣太良×元木聖也×矢崎広)。
前山剛久 そうなんです。目が赤くて白髪だから、見た目がほぼ「東京喰種トーキョーグール」なんですよ(笑)。映画では、何を考えているかわからないミステリアスなキャラクターがクローズアップされていましたが、蔵人がなぜこうなったのかが今回の舞台で明かされるので、映画とはまた違った蔵人をお見せできればと思います。
元木聖也 僕も映画に引き続き流狂四郎役で出演させていただくのですが、映画をご覧になった方は、“狂四郎=謎めいた最強の男”という印象を持っているんじゃないかなと思うんです。実は狂四郎は「GOZEN」のストーリーを左右するくらいの秘密を抱えていて、今回の舞台でその謎が解き明かされていきます。ある意味、映画のラストより衝撃的だと思うので、お客さんの反応が楽しみですね。
前山 (土御門)月暗も、とにかく謎だよね。
梅津瑞樹 そうなんですよ。僕が演じる土御門月暗は望月家に仕える陰陽師なんですが、正体不明で年齢不詳という……。舞台の前半部分ではひっそり隠れていて、後半に一悶着起こそうと思っているので(笑)、「月暗は一体何者なんだ?」と想像しながら観ていただければ。
──上遠野さん演じる八弥斗の弟分・興津清順も、月暗と同じく、舞台「GOZEN」で初めてお披露目されるキャラクターですね。
上遠野太洸 言ってしまえば、清順は“八弥斗大好きマン”です(笑)。「GOZEN」には狂った人間がたくさん出てきますが、清順はあまり狂ってはいないかもしれません。清順の視点から見ると、八弥斗も決して狂ってはいなくて、むしろ周りが狂っているから選択肢が狭まっているというだけ。八弥斗とは主君と家来という関係性で、かつ親友でもあるので、その立場をうまく使い分けて、八弥斗を支えていけたらなと思います。
思い、思われ……それぞれの気になる登場人物は?
──「GOZEN」では複雑に絡み合った人間模様が展開されていきますが、ご自身が演じるキャラクター以外で気になる登場人物はいらっしゃいますか?
矢崎 相手役ということもありますが、奈奈は特に面白いキャラクターだなと思います。いろいろな意味で気になる役ですね。
若月 ふふふ。えーっと、私が気になるのは……。
男性陣 (祈りながら)来い!
若月 女性キャストが朝霧役のAKANE(LIV)さんと私だけなので、気になると言ったら皆さん全員気になりますよね(笑)。
男性陣 えー……。
若月 (中でも強く祈っていた松村を見て)実は毛利(亘宏)さんから「奈奈はお兄ちゃんのことをちょっと軽く見ているところがある」という演出を受けていて(笑)。お兄ちゃんが「八弥斗はやめておけ」「奈奈が悲しい思いをするだけだぞ」って心配してくれているのに、奈奈はその手を振り払って八弥斗様のもとに行ってしまうので、お兄ちゃんはそれをどんな気持ちで見ているのかが気になります。
──松村さん演じる蓮十郎は、妹・奈奈のほかにも、同じく甲斐正の護衛である蔵人とも関係が深いですが……。
松村 (前山に視線を送りつつ)そうですね、僕は……清順さん。
前山 蔵人じゃないんだ!(笑)
松村 僕は清順さんのひたむきなところが好きで。彼の八弥斗へのアプローチの仕方が、蓮十郎にはまったくない部分なんですよね。清順さんは、八弥斗に対して恋愛感情はあるんですか?
上遠野 恋愛感情はないかな?(笑) 見方によってはそう見えるかも、っていうギリギリのラインを狙って演じていけたらと思ってます。清順的にはもちろん八弥斗が一番気になる存在なんですけど、僕個人としては小松原烈山役の山本亨さんですね。稽古でシアターゲーム(編集注:俳優の演技力向上のために用いられるゲーム)をしたとき、亨さんがすごくお茶目な方だとわかって。亨さんが、烈山という重厚なキャラクターをどういうふうに表現されるのか興味深いです。
前山 (松村を見つつ)蓮十郎と蔵人は、“光と影”と呼ばれる甲斐正の最強の護衛コンビですし……やっぱり月暗が気になりますね。
松村 えー! 蔵人と月暗じゃ“影と影”になっちゃうじゃん!
一同 ははは!
前山 蔵人と月暗、実はけっこう劇中で絡むんですよ。僕たち2人共、何を考えているかわからない役どころだし、梅ちゃん(梅津)とは2作品続けて一緒の現場なので、彼が月暗をどう演じるのか楽しみです。
梅津 蔵人だったり狂四郎だったり、月暗と関係が深いキャラクターはもちろん気になるんですが、皆さんがそれぞれの役をこれからどのように深めていくのかがとても気になります。どの登場人物も最初に持った印象から二転三転していくので、そこをどう演じるのか楽しみで仕方ないですね。
──矢崎さんは少年社中作品や「ミュージカル『薄桜鬼』」シリーズで、松村さんは舞台「劇団シャイニング from うたの☆プリンスさまっ♪『JOKER TRAP』」で毛利さんとご一緒された経験がありますが、一方で今回毛利さんの演出を受けるのが初めての方も多くいらっしゃいますね。
元木 僕は「GOZEN」で初めてご一緒させていただくのですが、毛利さんの中でしっかり画が決まっているので、俳優としてとても演じやすいなと思いました。
上遠野 そうですね。初めに方向性を示して、そのあとは俳優に任せてくださるので。
若月 キャストからの提案が面白かったら、そのアイデアを尊重してくださいますよね。奈奈の役づくりに関しては、稽古の初期段階から「こういう女性でいてほしい」と指示をいただいていて。怒ったり悲しんだりするときにヒステリックになってしまいがちだから、そこをいいバランスで表現しないと、奈奈の年齢や時代背景にそぐわなかったり、八弥斗に対するアプローチが変わってきてしまう、とアドバイスをいただきました。
矢崎 毛利さんが持っているイメージにハマっていたら「いいよ」と言ってくださるし、そこから俳優自身がどうやって役を深めていくかも全部見てくれている。あと毛利さんって、いつもニコニコしていてかわいらしいんですよね。かわいいと言えば、LINEスタンプの中に毛利さんに似てるスタンプがあるから今度教えてあげる(笑)。
一同 あはは!
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「GOZEN」は異種格闘技戦(前山)