「東アジア文化都市2019豊島」特集|5年で急激な進化を遂げた“新アニメ・マンガの聖地”池袋の魅力を高野之夫区長と俳優・染谷俊之が語り合う

マンガ・アニメの発信拠点として注目を集めている東京・豊島区では、「東アジア文化都市2019豊島」の一環として、この秋オープンするHareza池袋において、多彩なマンガ・アニメに関するイベントをエリア各所で展開する「池袋アニメタウンフェスティバル」を実施。高野之夫豊島区長が発起人となった本イベントでは、ダンスステージやミニライブ、トークショーなどさまざまな催しが用意され、マンガ・アニメの多様な楽しみ方が提供される。

コミックナタリーでは高野区長と、舞台版「池袋ウエストゲートパーク」への出演経験もある俳優の染谷俊之との対談をセッティング。「池袋アニメタウンフェスティバル」立ち上げの意図や、池袋という街におけるアニメ・マンガの存在意義についてはもちろん、学生時代にはよく池袋にも遊びに来ていたという染谷との朗らかなトークも楽しんでほしい。

取材・文 / 増田桃子 撮影 / 曽我美芽

マンガ・アニメ担当課長がいる豊島区役所

──今回、「池袋アニメタウンフェスティバル」の開催に併せて、高野区長と池袋には馴染みが深いという染谷さんの対談をセッティングさせていただきました。

左から高野区長、染谷俊之。

高野区長 今日はよろしくどうぞ。うちの秘書さんがキャーキャー言ってたよ(笑)。

染谷俊之 え、本当ですか? ありがとうございます。

区長 憧れなんですって。朝からソワソワして舞い上がっちゃって(笑)。

染谷 あはは(笑)。豊島区役所の方はとても温かいですね。

区長 (笑)。

染谷 池袋は、最近アニメやマンガのイメージが強いですが、やっぱりスタッフの方にも好きな方が多いんですか?

区長 そうなんですよ。私は21年区長をやってるけども、区長になった当時は文化を担当するスタッフは2人しかいなくてね。それが20年経って、今は文化担当の職員が100人もいますから。

染谷 へえー!

区長 その中にはマンガ・アニメ担当課長までいる。すごいでしょ。

染谷 すごいです!

豊島区から、マンガ・アニメを世界に発信していく

──ではまず日本・中国・韓国の3カ国により文化交流、文化芸術イベント等を実施する「東アジア文化都市」が、今年豊島区で開催されることになった経緯について聞かせてください。

高野区長

区長 「東アジア文化都市2019」には、中国からは西安(シーアン)、韓国からは仁川(インチョン)が参加しています。西安(シーアン)は、人口1200万人の大都市で、3000年の歴史があり、三蔵法師やシルクロード、世界文化遺産がたくさんある都市ですよ。仁川(インチョン)は300万人の広域都市で、韓国の第三の都市と言われています。そんな中、日本は東京23区の1つで人口たった29万人の豊島区(笑)。

染谷 え、そんな大都市と一緒に豊島区が!

区長 びっくりしますよね(笑)。これまでは金沢、京都、奈良といった歴史のある都市がやってきましたので。でも文化に大きい小さいは関係ない。私は、これから日本の文化の牽引力になるのはマンガ・アニメであると考えていて、豊島区はここ数年マンガ・アニメの事業に一番力を入れていますので、今回手を挙げたんです。これまでの歴史ではなく、これからの文化を豊島区が作り上げていく。そういう意味で、豊島区で「東アジア文化都市」を開催することに意味があるんじゃないかと。

染谷 すごいチャレンジですね。

区長 ありがとうございます。実際に「東アジア文化都市2019」で中国や韓国の開幕式にお邪魔しても、やはりマンガ・アニメは世界共通の文化だと感じますし、中国・韓国の皆さんも「ぜひ、今度池袋に行きたい」とおっしゃられる。私たちが想定している以上に世界の共通の文化になってますよ。

染谷 僕も、マンガ・アニメは世界に自慢できる日本の文化だと思います。

区長 今やマンガ・アニメは、メインカルチャーになってきています。だって海外の人はアニメ・マンガから日本語を覚えるんだっていうから。

染谷 確かに、興味のあるものからのほうが絶対覚えますもんね。

──11月には「池袋アニメタウンフェスティバル」という大規模なイベントも開催されます。

区長 今回、「東アジア文化都市」の会合で中国や韓国に行って、やはり世界共通の文化が、マンガ・アニメであることを確信しました。ですから、さらに日本のマンガ・アニメを世界に発信していくために、11月24日の「東アジア文化都市2019豊島」のクロージング前に最高に盛り上がる企画をという意味で立ち上げました。

左から高野区長、染谷俊之。

染谷 どんなイベントが行われるんですか?

区長 11月1日に新たな複合施設・Hareza池袋がオープン、2日・3日はアニメイトさん、ドワンゴさん、ポニーキャニオンさん、フジテレビさんも加わって、Harezaのホールや中池袋公園などを使ってアニメの祭典が行われます。話題のアニメ映画とのコラボレーション、ダンスステージ、トークショー、ミニライブ、親子で楽しめるコスプレワークショップなど、多彩なイベントをエリア各所で開催しますから。

染谷 かなり盛り上がりそうですね。

区長 「東アジア文化都市2019豊島」の中でも、最大のアニメのイベントにしたいと思っております。そして成果を上げて、次のステップに飛躍していきたいですね。

5年前には消滅都市って言われたんですよ(高野区長)

──ここ数年で、豊島区の特に池袋近辺はマンガ・アニメのイメージが浸透しましたよね。

区長 でも豊島区は、5年前には消滅都市って言われたんですよ。30年後には豊島区なくなっちゃうって言われてたの。

染谷 え、誰にですか?

区長 日本創成会議という民間の会社ですが、権威のある団体で。そこが全国の1700ある自治体の半分が30年後にはなくなると。その中に、豊島区が東京で唯一入っちゃったんです。

左から高野区長、染谷俊之。

染谷 へー、意外ですね。

区長 それはそれは大変なショックで。でもそれをきっかけにうちは変わろうと、挑戦を始めたの。

染谷 立ち上がったんですね。

区長 まずは区民に優しい街、子供、子育てしやすい街を目指して。待機児童ゼロを3年続けたり。

──改革のスピードもすごいですよね。

染谷 確かに5年って、あっという間ですよ。

区長 スピード感あるでしょ(笑)。文化のあるところには賑わいがあって、賑わいがあるところには文化が生まれる、そういうこと。その発展にはマンガ・アニメの力が不可欠だったと思います。

染谷 マンガ・アニメ文化を広げようとしたのには、何かきっかけがあったんですか?

左から高野区長、染谷俊之。

区長 アニメの原点はマンガですよね。そのマンガの原点と言えるトキワ荘が、池袋のすぐ近くの椎名町にあって。そんなアニメ・マンガの歴史が詰まっているトキワ荘の存在は大きかったと思います。文化というものには歴史がありますから、いきなり「アニメですよ」って言っても難しい。トキワ荘があったからこそ、今の池袋の文化の発展があったと思います。

染谷 歴史の積み重ねなんですね。

区長 トキワ荘のある豊島区が中心になり、マンガやアニメを発展させていく。これはほかの都市にはない素晴らしい文化ですよ。今、37年ぶりにトキワ荘を復元するプロジェクトも動いています。来年3月にはオープンしますが、こういう流れがあり、私はマンガ文化と併せてアニメ文化を継承していくのは豊島区しかないなと思ってます。

僕の知ってるウエストゲートパークじゃないです(染谷)

──染谷さんは、豊島区におけるアニメの発達を感じることはありますか?

染谷 僕は文京区の高校に通っていたので、池袋は馴染みのある街なのですが、高校ぐらいの頃って、まだ乙女ロードとかはなかったと思うんですよ。

区長 池袋東口が盛り上がってきたのが、ここ5年のことですからね。

染谷俊之

染谷 そうですよね。だから気が付いたらすごく発展していたっていうイメージです。マンガ・アニメの街というと秋葉原がありますが、やっぱり男性のイメージが強いので女性は行きにくかったと思うんですよ。でも池袋に乙女ロードが誕生したことによって女性が楽しめる街ができたなと。そこから一気に発展していったんでしょうね。

区長 池袋のアニメイトさんは、1日1万人ぐらいお客さんが来られるけど、90%は女性。

染谷 やっぱりそうなんですね。

区長 秋葉原は男性、池袋は女性でいいんですよ。私は第一に安心安全な街づくりを目指していて、そのためにはまず若い女性が安心してこの街で楽しめるようにならなきゃいけない。池袋はそれまで、ちょっとイメージ悪かったからね(笑)。

染谷 (笑)。僕が中学生ぐらいの頃、ちょうどドラマの「池袋ウエストゲートパーク」が人気があって、そのイメージはかなり強いですね。カラーギャングみたいなのが流行ってて。

区長 あれがイメージを悪くしちゃった(笑)。でも染谷くんはそれを舞台でやったんでしょ?

染谷 はい、キングの役をやらせていただきました(笑)。でもその舞台を警察署長の方が観に来てくださったんですが、むしろ「池袋ウエストゲートパーク」のおかげで治安がよくなったともおっしゃってましたよ。

──普通の人も足を運びやすくなったんでしょうかね。

染谷 そういうことだと思います。

左から高野区長、染谷俊之。

区長 でも西口は、もうすぐこんなふうに変わりますよ。(池袋駅西口の完成予想図のパネルを見せる)

染谷 え! これ西口ですか? 僕の知ってるウエストゲートパークじゃないです! 素敵!

区長 当時とは全然違うでしょ。

染谷 全然違いますね! 昔は色ついたバンダナを付けていったら絡まれるって言われてて、罰ゲームでやろうぜみたいなことをしてたんですけど(笑)。もうそんな街じゃないですね。

区長 ここが芸術劇場。

染谷 ここが? あれ、ここに噴水ありましたよね?

区長 噴水のところにステージを作って、クラシックの演奏もできるようになりますよ。

染谷 もうヘタに缶ビールとか飲めないですね(笑)。

区長 (笑)。カフェレストランもできるので、ワインでもビールでも出せますよ。

染谷 なんて素敵な……海外みたいですね。

区長 これはグローバルリングといって、照明や音響も揃っていて。野外劇場では最高の音楽が聴けるの。ほぼできあがってますので、観に行ってくださいよ。めちゃくちゃ変わってますから。びっくりしちゃうよ。

染谷 観に行きます!


2019年11月11日更新