ナタリー SUPER PowerPush - 桑田佳祐

この時代に生きるすべての人へ── 9年ぶりソロアルバム「MUSICMAN」堂々完成

桑田佳祐「MUSICMAN」アルバムレビュー第3弾公開中

ヤリたいときは「真夏の果実」ですよね(笑)

──今のヒダカさんの音楽に桑田さんの影響を感じる人はそれほど多くないと思うんですが、ご自身ではいかがですか? 音楽的な影響というのは?

いや、潜在的にはすごいあると思いますよ。あとは歌い方ですよね。ハスキー系の人って強く歌わなきゃその声が生きてこないと思うんですけど、桑田さんってよく聴くとそんなにビブラートガンガンでもないし、だけどノンビブラートなわけでもないしちょうどいいところにいるんですよね。だからそこが割とJ-ROCKのスタンダードなイメージになってて、だから自分も過剰にビブラートしない。そのへんはやっぱり桑田さんの歌の影響ですよね。

──ボーカリストとしての影響。

インタビュー風景

そうですね、いちボーカリストとしてすごいいい声だし、やっぱり物真似もしましたし。

──物真似しましたか(笑)。

ものっすごいしました。誰しもがやることですけど。

──カラオケで歌ったりとかも?

ガンガン歌いますよ。今でも行けば絶対歌います。

──ちなみにどの曲を歌うんですか?

まあ、ヤリたいときは「真夏の果実」ですよね(笑)。

──あはは(笑)。

あとみんなで盛り上げたいときは「匂艶(にじいろ) THE NIGHT CLUB」「マンピーのG★SPOT」とか、そういうアゲアゲなやつです。だからそういう意味では氣志團とかもすっごい影響受けてると思いますよ。やっぱ今30代から40代のアーティストはみんな多かれ少なかれ桑田さんの影響を受けてるんじゃないですかね。すごいことだと思います。

ソロ名義のときは引用がよりダイレクトになる

──桑田さんとヒダカさんの共通点として、バンドとソロの両方で活動しているという点があると思います。バンドとソロのスタンスの違いについて感じるところがあったら教えてください。

俺が個人的に桑田さんのソロに関して思うことは、より引用がダイレクトだっていうことですね。

──というのは?

インタビュー風景

例えば、KUWATA BANDや桑田さんのソロ名義だと、「フロム イエスタデイ」みたいにTHE BEATLESっぽいワードがモロ使われることが多くなるんですよ。でもサザンのときは意識してもうちょっと"オモロー"に寄せてるっていうか。俺もBEAT CRUSADERSでは"オモロー"な表現を選んでたけど、自分でGALLOWっていうネオアコユニットもやってるんで、そっちをやるときはもうちょっと直接THE BEATLESっぽいタイトル付けちゃったり。そういうの俺もやりますし、だからその棲み分けって実は桑田さんの中で厳然としてあるんだろうなっていうのは思います。サザンそんなに知らないっていう人が聴いたらたぶん区別つかないでしょうけど、でもソロ名義のときは自分の遍歴をより直接口にしてるってところはありますよね。

──その感覚ってどこから生まれるんでしょうね?

やっぱりサザンのイメージはちゃんと守っていくってことじゃないですか。そこはサザンをやる上での桑田さんのサービス精神だと思います。もちろん新たなチャレンジはしていくけど、サザンには私情はあんまり入れないっていう。私情を挟まず、サザンにとって一番面白いっていうことをちゃんとやっていく。だけどソロ名義の場合はもう、自分が一番好きなものを真ん中にボーンと置いちゃうみたいな、その違いは聴いててわかりますよね。

桑田さんの声はすごくエモい

──ヒダカさんが今後の桑田さんに望むことがあれば聞かせてください。

俺「希望の轍」をカバーさせてもらったことがあって、そのときにすごい感じたんですけど、やっぱ桑田さんって日本のエモだと思うんですよね。もちろん本人はその意識はないだろうし、エモっぽいロックはそんなに熱心には聴かれてないとは思うんですけど、なんか例えばビールのCMでJIMMY EAT WORLDの曲が流れるのと、桑田さんのアップテンポの曲が流れる感覚はすごい似てると思うんです。それは桑田さんの声の持ってる資質がすごくエモいからなんだと思うんですよ。だから桑田さんが歌う熱いエモを1回聴きたいんですよね。例えばですけど、FACTをバックに歌う桑田さんとか絶対カッコいいと思う。

──いいですね(笑)。

当然MONOBRIGHTでもバックバンド全然引き受けますし(笑)。だからホント20代のバンドがやるようなアレンジで歌う桑田さんっていうのを1回聴いてみたい気はすごいします。ツーバスがドカドカ鳴ってる上で歌う桑田さんとか、METALLICAみたいな音で歌う桑田さんとか、DEFTONESみたいなちょっとヘビーなのやってる桑田さんとかね。なんかやっぱ声だけでそれだけ想像が広がるんですよね。だから例えば全曲他人が書いた曲を桑田さんがボーカルに徹して歌う、みたいなことも面白いかもしれないですね。俺アミューズに企画持ち込もうかな(笑)。

──確かに桑田さんの歌声には唯一無比の魅力がありますもんね。

エモ系ボーカリストの最高峰だと思うんです、たぶん。英語で歌っててもカッコいいし、あの声に憧れてる人は多いと思う。たぶんダイスケはん(マキシマム ザ ホルモン)とかも絶対憧れてるはずだし。

──あはは(笑)。

ダイスケはんも俺もそうなんですけど、ハスキー系の声の奴って、やれる範囲がすごい狭まっちゃうんですね。バラードとかふざけんなって話になるし。でも桑田さんだったら絶対になんでもハマるから、それは純粋にうらやましいですよね。100人いたら100人がうらやむ声だと思うし。だからその声で思いっきり遊んでみたい。遊ぶって言い方はちょっと失礼かもしれないけど、いろんなサウンドを作ってみたいっていうのは思いますね。

ヒダカトオル

1968年千葉県生まれ。1997年にBEAT CRUSADERSを結成し、ボーカル&ギターを担当。2004年にメジャーデビューを果たし多くのロックファンの支持を集める中、2010年にバンド解散。その後MONOBRIGHTへの電撃加入を発表した。バンドと並行してソロや複数のユニットでも活躍。木村カエラ、GOING UNDER GROUND、磯部正文ら他アーティストへの楽曲提供・プロデュースも積極的に行っている。

ニューアルバム「MUSICMAN」 / 2011年2月23日発売

  • 初回生産限定 "MUSICMAN" Perfect Box [CD+DVD+BOOK] 4500円(税込) / VIZL-560 / Amazon.co.jpへ
  • 通常盤 [CD] 3300円(税込) / VICL-63600 / Amazon.co.jpへ
  • アナログ盤 [Vinyl] 3900円(税込) / VIJL-60700~1 / Amazon.co.jpへ
収録曲
  1. 現代人諸君(イマジン オール ザ ピープル)!!
  2. ベガ
  3. いいひと ~Do you wanna be loved ?~
  4. SO WHAT ?
  5. 古の風吹く杜
  6. 恋の大泥棒
  7. 銀河の星屑
  8. グッバイ・ワルツ
  9. 君にサヨナラを
  10. OSAKA LADY BLUES ~大阪レディ・ブルース~
  11. EARLY IN THE MORNING ~旅立ちの朝~
  12. 傷だらけの天使
  13. 本当は怖い愛とロマンス
  14. それ行けベイビー!!
  15. 狂った女
  16. 悲しみよこんにちは
  17. 月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)
初回限定盤DVD収録内容
  • アルバム「MUSICMAN」の楽曲が生み出される制作現場に密着したドキュメント映像や、ミュージックビデオの撮影風景に加え、新たに撮り下ろした楽曲を含む、ミュージックビデオ6曲を収録!!
初回限定盤BOOK収録内容
  • "MUSICMAN'S NOTE" 桑田佳祐本人による全曲セルフライナーノーツ、最新インタビューを収録!! さらに、参加ミュージシャンやエンジニア、スタッフによる、ここでしか知り得ないレコーディング秘話も掲載。全104ページに及ぶボリュームで、アルバム「MUSICMAN」を追求!!
桑田佳祐(くわたけいすけ)

1956年2月26日生まれ。神奈川県茅ケ崎市出身。

1978年サザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」でデビュー。デビューして以来フロントマンとして、またソロアーティストとして常に日本のミュージックシーンのトップを走り続けている。
ソロ名義では、1987年リリースの「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」で活動を開始。以降ソロ活動も精力的に続けており「波乗りジョニー」「白い恋人達」「明日晴れるかな」などヒット曲も多数。2011年2月23日には約9年ぶりのオリジナルソロアルバム「MUSICMAN」をリリースする。