BEAT CRUSADERSを“散開”させ、MONOBRIGHTとの電撃“結婚”を果たす一方、ソロアーティストとして、または敏腕プロデューサーとして八面六臂の活躍を続けるヒダカトオル。
今回はそんなヒダカに、桑田佳祐ファンとしての思いを直撃。今をときめくロックヒーローが桑田から得た影響や、ボーカリストとしての桑田の存在について、アーティストならではの視点で語ってもらった。
取材・文/大山卓也 撮影/中西求
10代、20代のときサザンの存在はデカかった
──ヒダカさんはサザンオールスターズの初期から聴いてらっしゃるそうですね。
はい、俺は1stアルバム(「熱い胸さわぎ」1978年)が特に好きでした。サザンってJ-ROCKとJ-POPのちょうど狭間にいる存在として、みんなテレビで観てたし、家帰ればレコード絶対あるしっていう。誰でも必ず通ってるアーティストだと思うんですよね。
──リアルタイムで聴いてたわけですね。
あとやっぱ「ふぞろいの林檎たち」(1983年~放送)もでかかったですよね、我々アラフォーにとっては。あれでやっぱり世間的な認知もすごい広がっただろうし。
──じゃあヒダカさんがサザンを一番熱心に聴いてたのはやっぱり80年代ですか?
そうですね、怒られちゃいそうですけど(笑)やっぱり10代、20代のときのサザンの存在はデカかったです。バンド好き、ロック好きにとっては「KAMAKURA」(1985年)の頃までが一番思い入れ強いんじゃないかな。それ以降はマニアックなロック好きにとっては、サザンっていう存在が一般に広がりすぎた、でかくなりすぎたっていう気はしますね。
──当時ヒダカさんから見て、サザンのどこがすごいと感じてましたか?
当時は親に怒られるような音楽を子供同士でコソコソ聴くのが楽しかったんですよね。ロックバンドってだいたいそんな感じでしょ? お茶の間でかけてたら絶対父ちゃん母ちゃんに「うるせえ」って怒られるっていう。だけどエロいこと歌ってるのに怒られないサザンはすごいなっていうのは、子供心にずっと思ってました。「匂艶(にじいろ) THE NIGHT CLUB」(1982年)とか出たときに、これホーンアレンジもすごいしファンキーでカッコいいなと思いながらテレビで親と一緒に観てるんですけど、どう考えても歌ってる内容がエロなんですよ。そういうところがサザンのロックなところっていうか。こんだけ堂々とテレビでセックスを歌う人ってそうそういないんじゃないかって。
ロックと歌謡曲の垣根を桑田さんが取り払った
──そういった桑田さんのロックな姿勢は、ヒダカさんご自身と重なる部分もあるんじゃないですか?
相当影響受けてると思います。ステージでサラッと下ネタ言っちゃえる今の自分のスタンスは、やっぱ桑田さんがいなかったら絶対なかったし、そういう意味でもすごい感謝してますよね。で、エロいこと言ってんだけど決めるとこ決めるみたいな、あのC調感がすごい。
──大御所感を出さないですよね。
うん、それはやっぱ明らかに意図的にやってたと思うんですよね。ロックスターとしての成熟は全然求めてないっていうか。やっぱトンガったものでありたいっていう意識は絶対あったんだろうなと思って。それは今の怒髪天とか観ててもまったくそうだなと思いますし。(吉田)拓郎さんとか(忌野)清志郎さんももちろん好きなんですけど、やっぱりリアルタイムで観てたって意味では、桑田さんが一番のロックヒーローですよね、俺らの世代にとっての。
──確かに、桑田さんはこれほど幅広く支持される国民的アーティストでありながら、ポップスの人というよりはやっぱりロックの人ですよね。
俺は「ミス・ブランニュー・デイ」(1984年)のシングルが出たときにそれ思いましたね。あの曲はサビがほとんど英語なんだけど、それが「ザ・ベストテン」の中で普通に歌われてて、それについて別に誰も言及してなかったし「なんで英語なんですか」っていうことをいちいち訊く人もいなかったし。だけど当時千葉で生まれ育った俺とかは、英語でオリジナルの曲を作って演ってると「なんで英語なの?」って文句言われたりしてたんですよ、良識ある大人たちに。「日本人なんだから日本語で歌え」とか言われて。でもなんかそういうところの最先端にいる桑田さんはテレビでも堂々と英語で歌ってて。だから存在としてやっぱすごいロックだなっていうのは思います。
──確かに今でも若いバンドとかは「日本語で歌ったほうがいい」とか「歌詞が何言ってるかわかんない」みたいなことを言われるケースがありますけど。
桑田さんは当時からそんなもんぶっちぎってますからね。
──はい(笑)。
だからやっぱ1個の発明だったと思いますよ。桑田さんの、英語に聴こえる日本語って。清志郎さんもやってましたけど、でもそれはもうちょっとロックバンド然としてからの清志郎さんだったし、それを歌謡曲レベルでやれてたって実はすごいことなんじゃないかなと思いますね。
──ロックと歌謡曲の垣根を……。
いや、取り払いましたよね、桑田さんが完全に。
収録曲
- 現代人諸君(イマジン オール ザ ピープル)!!
- ベガ
- いいひと ~Do you wanna be loved ?~
- SO WHAT ?
- 古の風吹く杜
- 恋の大泥棒
- 銀河の星屑
- グッバイ・ワルツ
- 君にサヨナラを
- OSAKA LADY BLUES ~大阪レディ・ブルース~
- EARLY IN THE MORNING ~旅立ちの朝~
- 傷だらけの天使
- 本当は怖い愛とロマンス
- それ行けベイビー!!
- 狂った女
- 悲しみよこんにちは
- 月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)
初回限定盤DVD収録内容
- アルバム「MUSICMAN」の楽曲が生み出される制作現場に密着したドキュメント映像や、ミュージックビデオの撮影風景に加え、新たに撮り下ろした楽曲を含む、ミュージックビデオ6曲を収録!!
初回限定盤BOOK収録内容
- "MUSICMAN'S NOTE" 桑田佳祐本人による全曲セルフライナーノーツ、最新インタビューを収録!! さらに、参加ミュージシャンやエンジニア、スタッフによる、ここでしか知り得ないレコーディング秘話も掲載。全104ページに及ぶボリュームで、アルバム「MUSICMAN」を追求!!
桑田佳祐(くわたけいすけ)
1956年2月26日生まれ。神奈川県茅ケ崎市出身。
1978年サザンオールスターズ「勝手にシンドバッド」でデビュー。デビューして以来フロントマンとして、またソロアーティストとして常に日本のミュージックシーンのトップを走り続けている。
ソロ名義では、1987年リリースの「悲しい気持ち(JUST A MAN IN LOVE)」で活動を開始。以降ソロ活動も精力的に続けており「波乗りジョニー」「白い恋人達」「明日晴れるかな」などヒット曲も多数。2011年2月23日には約9年ぶりのオリジナルソロアルバム「MUSICMAN」をリリースする。