コミックナタリー Power Push - なかよし60周年記念特集 でんぱ組.inc成瀬瑛美×女子マンガ研究家 小田真琴

少女に夢と希望を与え続けてきたなかよしの60年を復刻版で振り返る

「なな色マジック」には壁ドン描写も

「なな色マジック」に夢中になる成瀬。

小田 オーバーリアクション、ありますね。今読むと80年代カルチャーの勉強になりますよ。あ、そうそう「なな色マジック」には話題の壁ドン描写もあります。

成瀬 おお! 先駆者といっても過言ではない?

小田 壁ドンは「ベルサイユのばら」や「王家の紋章」でも描かれていて、意外と歴史があるんですよ。「なな色マジック」は両手壁ドンですね。

成瀬 カッコいい!! 壁ドンは少女マンガを読んでいるとめちゃくちゃ憧れるし、ふー(手で額を拭う動作)ってなるんですけど、実際にされそうになったら怖くてダッシュで逃げますね(笑)。

小田 その反応で正解だと思います(笑)。「なな色マジック」には壁ドンをしたB、主人公と同居する一樹、演劇部部長の藤村良といった3タイプのヒーローがいます。

成瀬 誰を選ぼうっていうワクワク感、モテモテ感が味わえますね。これも読み直さなきゃ……!

  • あさぎり夕は1980年代なかよしのエース
  • 昔のマンガを読むと、その時代のカルチャーの勉強になる
  • 壁ドンの歴史は古い


アイドル・成瀬瑛美の元になった「きんぎょ注意報!」(1989~1993年)

猫部ねこ「きんぎょ注意報!」なかよし60周年記念版1巻。元気女子・わぴこ、金魚のぎょぴちゃん、生徒会長の千歳、副会長の秀ちゃん、サングラスをいつもかけている葵ちゃんなど多彩なキャラクターによるギャグが繰り広げられる。

小田 今のところすべてヒットですね(笑)。次は1989年から1993年まで連載された「きんぎょ注意報!」です。田舎ノ中学を舞台にしたハイテンションな学園コメディで、TVアニメ化やゲーム化もされました。

成瀬 実はアイドル・成瀬瑛美というキャラクターは、主人公・わぴこちゃんの影響をかなり受けています。

小田 と言いますと?

成瀬 素の私と、いろんな少女マンガや少年マンガに登場した理想のヒロインをミックスして、アイドル・成瀬瑛美が成り立っているんですが、わぴこちゃんは参考にしているヒロインの1人です。このドタバタ感、天真爛漫さはかなり好きですね。わぴこが語尾に使う「だよん」は、今もTwitterとかで真似しちゃっています(笑)。

小田 確かにキャラクターは魅力ですね。僕は校長先生が好きなんですよねえ。校長先生からちょっと大人の目線が入ってきて、みんなを見守っている感じが素晴らしい。あと作品の舞台である学校も素敵ですね。

成瀬 田舎な感じがいいですよね! 金魚や牛が普通に学校で生活してても、みんな自然に受け入れてる(笑)。校長先生の大人視点は、自分が大人になって読み返したときに理解できました。小学生くらいのときに読んだときとは全く違った視点で読めますね。

小田 それはありますね。成瀬さんは昔のマンガを読み返すほうですか?

グリム童話をモチーフにした高瀬綾「くるみと七人のこびとたち」は、1992年から1995年までなかよしに連載された。
吉村杏原作によるなかの弥生「くせになりそう♡」は、1993年になかよしに掲載された作品。続編に「超くせになりそう♡」がある。

成瀬 そうですね。この復刻版もそうですけど、文庫版や完全版がいいタイミングで出てくるので。なかよしだと「美少女戦士セーラームーン」は何度も読み返す機会がありましたね。今日の髪型は完全にセーラームーンを意識してきました!

小田 本当だ!

成瀬 セーラームーンかわぴこちゃんか迷ったんですけど、髪の長さ的にわぴこちゃんはできず(笑)。

小田 「美少女戦士セーラームーン」と「きんぎょ注意報!」は同時期に連載されていましたね。なかよしの発行部数はこの頃が一番多かったんです。1992年くらいから、なかよしの黄金期が続いていきます。

成瀬 ああ、やっぱり。この時代のマンガが本当に好きで、今読み返しても面白い作品ばかりなんですよね。高瀬綾先生の「くるみと七人のこびとたち」や、なかの弥生先生の「くせになりそう♡」、あと片岡みちる先生にもハマってました。ここは話し始めたら尽きない(笑)。復刻してほしい!


女の子がともみ派とみかげ派に分かれた「ミラクル☆ガールズ」(1990~1994年)

秋元奈美「ミラクル☆ガールズ」なかよし60周年記念版1巻。テレパシーやテレポートが使える超能力者の双子・ともみとみかげの恋と青春を描くファンタジーだ。

小田 熱いですね(笑)。では次のこの作品も思い出深いのではないでしょうか? 1990年にスタートした「ミラクル☆ガールズ」です。TVアニメは1993年に放送されました。

成瀬 わー!! 友達同士でともみ派とみかげ派に分かれて、互いにそれぞれのおもちゃを買って、「あそこまでテレポートしよ」みたいな遊びをしたりしてました。

小田 「なな色マジック」の主人公は双子の1人、「ミラクル☆ガールズ」は双子が主人公ですね。これを読んで双子に憧れた子、多いんじゃないかなあ。

成瀬 わっ、まさに私です。学校を交換したかったし、入れ替わりたかったですね。ちょうどヒーローも2人いるので、どっちがタイプか論争がありました(笑)。私の周りでは野田くんが人気でした。

小田 倉茂先輩じゃないんですね。女の子は野田くんの等身大な感じが好きなんですか?

成瀬 倉茂先輩、高校生にしてはちょっとおじさんくさいなって(笑)。

小田 あはは。90年代のなかよしには、ファンタジー寄りの作品が多く掲載されていました。超能力者の双子が主人公の「ミラクル☆ガールズ」もそうですね。ライバル誌のりぼん(集英社)は、王道の学園恋愛モノが多かった時期です。

成瀬 「美少女戦士セーラームーン」「怪盗セイント・テール」「カードキャプターさくら」「魔法騎士レイアース」……本当だ、ファンタジー寄りですね。

小田 もう1つの特徴として、女の子が戦う作品が多いんです。

成瀬 わー、高まるー! 「ミラクル☆ガールズ」もそうですね、悪役のミスターXが出てきたり。共感というよりは憧れが強いですね。ああいうヒロインになりたい、という気持ちで読んでいました。

「なかよし」12月号 発売中 580円 / 講談社
「なかよし」12月号
ラインナップ

遠山えま「青葉くんに聞きたいこと」「かみかみかえし」、山田デイジー「初恋はじめました。」、フクシマハルカ「伯爵さまは甘い夜がお好き」、鳥海ペドロ「黒豹と16歳」、美麻りん「嘘つき王子とニセモノ彼女」、星野リリィ「きぐるみ防衛隊」、松本ひで吉「さばげぶっ!」、瀬田ハルヒ「出口ゼロ」、中江みかよ「小学生のヒミツともだち」、桜沢きゆ「先パイ、教えてください」、桜倉メグ「探偵チームKZ事件ノート 消えた自転車は知っている」、吉田はるゆき「ピンポンドライブ」、渡辺留衣「FAIRY TAIL ブルー・ミストラル」、長谷垣なるみ「花と忍び」、あべゆりこ「わんころべえ」、ハタノヒヨコ「Stella~ナナと魔法の英単語~」、上北ふたご「GO!プリンセスプリキュア」

付録:香りクリーム&ジュエルケース、プレゼントメモ、なかよし×マイメロディ ラブシール

成瀬瑛美(ナルセエイミ)

6人組アイドルグループでんぱ組.incのイエロー担当。“ハイテンションA-POPガールえいたそ”の愛称で親しまれている。

小田真琴(オダマコト)

1977年生まれ。少女マンガとお菓子をこよなく愛する女子マンガ研究家。自宅の6畳間にはIKEAで購入した本棚14棹が所狭しと並び、その8割が少女マンガで埋め尽くされている。