コミックナタリー Power Push - 映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

井上三太が語る、セックス・バイオレンス・マッドマックス

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」が6月20日、ついに封切られる。日本のマンガ文化に多大な影響を与えた「マッドマックス」シリーズ3部作から30年を経て、ジョージ・ミラー監督自ら作品をリブート。荒野を彷徨うマックスの激闘を、ノンストップなアクションで描き出した。

コミックナタリーでは公開に先駆け、「TOKYO TRIBE」で“トーキョー”を舞台に、狂気に支配される若者を描いた井上三太に映画鑑賞をオファー。再始動した「マッドマックス」の魅力を語ってもらった。なお映画ナタリーでは、旧3部作から今作まで詳細な作品解説を掲載しているので併せてチェックしてみてほしい。

取材・文・撮影/三木美波

井上三太が描き下ろしたイモータン・ジョーとマックス。

井上三太がイモータン・ジョーとマックスのイラストを描き下ろし!

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のメインキャラクターであるイモータン・ジョーと主役のマックスを、井上が独特のタッチで描き下ろした。この2人について井上は「日本のマンガ家を刺激する」と語る。その理由を以下から始まるインタビューで確認してほしい。

「マッドマックス」はマンガ的

──愛する者を失い、本能だけで生き永らえる男・マックスの激闘を過激なアクションで描いた「マッドマックス」シリーズの最新作を観ていただきました。マッドがマックスな映画だったと思うのですが、印象深いシーンはありますか?

井上三太

映画が始まった直後の、マックスの頭上を車とバイクが飛び越えていったシーンにまずびっくりしちゃった。小学生のときに観た「スター・ウォーズ」以来の驚きだったかも。その後も最後までイメージの洪水で、やりやすいなって思ったよ。

──やりやすいとは?

今回「映画を鑑賞してインタビューを受ける」って仕事をいただいたけど、面白くない映画ってこともあり得るじゃないですか。でも僕の名前でインタビューを受ける以上、「三太さんが面白いって言ってるんだったら、『マッドマックス』を観に行こう!」って僕のファンには責任を取るべきだと思う。その点で「マッドマックス 怒りのデス・ロード」はすごくよかったから、安心しちゃった(笑)。

──お薦めできるということですね! 先ほど「イメージの洪水」とおっしゃいましたが……。

うん、「マッドマックス」は非常にマンガ的だと思ったの。まずキャラクターが立ってる。敵のボスのイモータン・ジョーのビジュアルは、日本のマンガ家をすごく刺激すると思うんですよ。

──イモータン・ジョーは馬の歯を使ったマスクと、筋肉ムキムキに見える甲冑を付けてますね。

主役のマックスを演じるトム・ハーディ。

あとマックス役のトム・ハーディが付けてる鉄のマスクとか、フュリオサ役のシャーリーズ・セロンが片腕なこととかも刺激されるよね。フュリオサが片腕しかないのを見て、(映画監督の)ファレリー兄弟が頭をよぎった。彼らは障害者を映画に起用してタブーに触れたって言われてるわけだけど、「マッドマックス」も非常にカッティングエッジな部分に触れている。

──イモータン・ジョーの息子はフリークスですし、ジョー軍団の戦闘員であるウォー・ボーイたちも長くは生きられない設定です。

ウォー・ボーイであるニュークス。

ウォー・ボーイはすごく宗教的だよね。死ぬときに「俺を見てくれ」って言って、死ぬことによって評価される。

──ウォー・ボーイたちが死にに行く前に、銀のスプレーを口に噴射するのも儀式的ですよね。ほかにマンガ的だと感じた部分はありますか?

世界観全体の絵作りですかね。アクションがすごいし、汚くて肺が真っ黒になってそうな人たちもたくさん出てくるけど、脱獄するときに溺れた水のブルーだとか、砂漠のオレンジ、地獄みたいな場所のパープルとか、色彩がすごくきれい。

──色彩が鮮やかでしたね。

うん、メリハリもあるし。ジョーの奥さんたちは、汚い世界のなかでもずっと顔が綺麗だしね。マンガ的って言葉を、幼稚とか設定に無茶があるとか悪い意味で使う人がたまにいるけど、「マッドマックス」を作っている人たちは、マンガ的なるものをリスペクトしているのをすごく感じた。

──ジョージ・ミラー監督は大友克洋の「AKIRA」に影響を受けたと公言していますし、「北斗の拳」も「マッドマックス」シリーズに影響を受けたと言われてます。

映画を観る前に調べたら、ジョージ・ミラーは、コミック作家のブレンダン・マッカーシーと組んでこの映画を構築したんだってね。それを見て、(フランスのマンガ家)メビウスから影響を受けた「ブレードランナー」とか、実現はしなかったけど手塚治虫に美術監督をオファーしたとされる「2001年宇宙の旅」とかを思い出した。

──名作ばかりですね。

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」2015年6月20日より新宿ピカデリー、丸の内ピカデリーほかにて 2D/3D & IMAX3D公開

「マッドマックス 怒りのデス・ロード」

核戦争後、水も石油も枯渇寸前となった地球。愛する妻子の命を奪われ、砂漠をさまよっていた元警官のマックスは、暴力で民衆を支配するイモータン・ジョーの手下たちに捕われる。髪を刈られ、刺青を彫られ、奴隷の証である焼印を押されたマックスだが、ジョーの右腕である女将軍フュリオサの謀反に乗じて脱出に成功。マックスは、フュリオサ、ジョーの子供を産むために集められていた美女たちと共に逃避行を始めるが、ジョー率いる大軍が背後に迫ってくる……。

スタッフ

監督・脚本・製作:ジョージ・ミラー

キャスト

マックス:トム・ハーディ
フュリオサ:シャーリーズ・セロン
ニュークス:ニコラス・ホルト
イモータン・ジョー:ヒュー・キース・バーン

吹替声優

マックス:AKIRA
イモータン・ジョー:竹内力
エレクトス:真壁刀義(新日本プロレス所属)

日本版エンディングソング

MAN WITH A MISSION×Zebrahead「Out of Control」(ソニー・ミュージックレコーズ)

井上三太(イノウエサンタ)

井上三太

1989年、「まぁだぁ」でヤングサンデー新人賞を受賞しデビュー。1993年にJICC出版局より出版された「TOKYO TRIBE」から始まるTTシリーズは自身のライフワークになっており、代表作「TOKYO TRIBE2」は香港・台湾・アメリカ・フランス・スペイン・イタリアでも出版されている。2014年には実写映画化も果たした。1994年からコミックスコラ(スコラ)にて連載されたサイコホラー「隣人13号」は同誌の休刊により連載が中断されるが、その後も自身のWEBサイトで続きを発表し1999年には幻冬舎から単行本化。2005年には小栗旬・中村獅童のW主演による実写映画が製作され、劇場公開された。また2002年に、自身のフラッグシップストアSANTASTIC!を渋谷にオープンするなど幅広く活躍している。最新作「TOKYO TRIBE WARU」が、7月7日発売の別冊ヤングチャンピオン8月号(秋田書店)と8月4日発売の9月号に掲載。


2015年6月15日更新