第2回コミナタ漫研レポート(ゲスト:水城せとな)【5/5】

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脳内が実写の人、マンガの人

唐木 まるで現場を見てきたような、精緻な描写が随所に見られますね。ここから推測されるのは、相田先生が脳内で見ているストーリーは、ひょっとして実写映像なのではないかと。

水城 比較的実写に近いんじゃないかな、って思います。あくまで想像ですけど。

唐木 相田先生はこの場にいらっしゃらないので、僕らは想像するしかない。ときに、水城さんはどうですか?

水城 私は頭の中で流れている映像を、そのとき自分で描ける絵に落とし込む感じです。コマ割りくらいはある程度浮かんでいるんですけど、あまり「こういう絵で!」みたいに具体的には考えていなくって。

唐木 頭の中でそのシーンが実写の映像で流れてて、それを絵で取り出してるってことですよね。あと水城さんと相田先生の共通点として、変形ゴマを使わないことがあります。水城さんの「失恋ショコラティエ」から1ページ持ってきたんですけど、女性の作家さんには珍しいくらい全部四角ですね、これ。

失恋ショコラティエ

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水城 あはは、変形ゴマって思い付かないんですよねー。脳内映画館で上映されてるものを描くので。だって四角いじゃないですか。

唐木 映画のスクリーンが。なるほど、脳内の映像が四角だからコマ割りがスクエアなんだ。

水城 それに私の脳内劇場は3Dじゃないので、枠線をぶち抜いて飛び出したりもしないんですよ(笑)。コマの手前にキャラがぶち抜きでバーンと立つこともない。

唐木 ぶち抜きといえば、僕も大好きな竹本泉先生です。これは竹本先生が多用される画面で、右ページに巨大なぶちぬきキャラがいて、変形ゴマも多いという。

竹本泉「あかねこの悪魔」

竹本泉「あかねこの悪魔」[拡大]

水城 絵柄がすっごい安定していらっしゃいますよね。キャリアの長い方なのに、ぜんぜん変わらない絵を描き続けられる。すごいことだと思います。

唐木 竹本先生の頭の中はたぶん、実写じゃないですね。

水城 頭の中で思い描いてるときにはもう、この竹本先生の画面になってるんじゃないかなって思います。

唐木 なるほど、マンガ家には2つのタイプがあって、脳内で流れている実写映像から取り出すタイプの人と、脳内がすでにマンガになっていて、それを画面に定着させる人。

水城 そうかもしれないですね。私みたいな頭の中から取り出すタイプは、絵がどんどん変わっちゃうんです。こういう絵で描くぞってところまではっきりイデアが思い浮かんでないので、目指すものがはっきりしないんですよね。実写が流れてるといってもやっぱりある程度はデフォルメしなきゃいけないので、そのときによってこう、手癖でどんどん変化が起きちゃうんだと思うんです。

唐木 水城さん、最近そんなに大きく絵柄が変わりました?

水城 うーん……たとえば、頭に対する目鼻立ちの位置だったりバランスがけっこう変わっていて、「失ショコ」の1巻とか見ると「わっ」て思いますよ。でも違和感はだいたい顔だけで、チョコレートや手とかの絵は、ブレない。それはやっぱり実物を見て描いたりするからです。やっぱり頭の中でモヤッて思い描いてるものをデフォルメすると、その都度どんどん変わっちゃうんじゃないですかね。

コミナタ漫研会場

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唐木 ちなみに「ガンスリ」も、1巻から12巻までの間にずいぶん絵柄が変わってきてますよね。連載当初はあっさりした、萌え絵の要素があったと思うんですけど。

水城 わりと線が少なめだったり背景も白バックでしたけど、最新巻だと背景の量もすごいし細かく斜線で影とか入っていて。リアル寄りになっているのかな、全般的に。

唐木 でもここ2・3巻分くらいのこの迫力ある劇画調入った感じ、話に合ってますよね。先ほど話題に上がった精緻な描写が、より映えるようになってきている。そこが「ガンスリ」という作品のひとつの特徴というか、美徳でしょう。

水城 細かいところまで見て楽しめるマンガが好きですね。わざわざコミックスを買って次の巻を楽しみに待つのは、やはり何度も読んで楽しめる作品なんです。

唐木 皆さんにもそんな精緻な読み方のエッセンスが、何か少しでも伝わったらいいなと思います。そんなところでお時間が参りましたので、ここらでお開きとしたいと思います。水城せとなさんでした(会場拍手・了)。

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