「望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』」が、1月15日にWOWOWライブ・WOWOWオンデマンドで放送・配信される。「Look at Me」は、元宝塚歌劇団雪組トップスター・望海風斗が、2023年に初舞台から20周年を迎えることを記念したコンサート。2022年10月から11月にかけて開催された本公演では、ストーリー仕立てのショーが展開し、ブロードウェイミュージカルのナンバーから、歌謡曲、J-POP、過去に出演した作品のナンバーまで、20曲以上の楽曲が披露された。
本作の放送・配信に向けて、望海本人が特に注目してほしいポイントを読者に伝授。また特集の後半には、構成を手がけた竹村武司、演出・上演台本を担当したウォーリー木下のコメントも掲載している。
取材・文 / 中川朋子撮影 / Junko Yokoyama(Lorimer)
望海風斗が語る「Look at Me」
舞台生活“18年プラス2年”の望海風斗がゼロから作った「Look at Me」
──「望海風斗 20th Anniversary ドラマティックコンサート『Look at Me』」を完走したときの心境はいかがでしたか?
まずは「みんな元気に千秋楽を迎えられて良かった」と思いました。コロナの影響で、千秋楽まで毎公演できることは当たり前ではなくなっています。コンサート中にも他作品の公演中止のニュースはたびたび見かけましたし、不安に思うこともありましたが、誰一人欠けることなく無事に終えられてホッとしました。それに「お客様と一緒にコンサートを作り上げた」という喜びもあり、達成感でいっぱいでしたね。
──望海さんは2003年に宝塚歌劇月組公演「宝塚舞踊詩『花の宝塚風土記(ふどき)』-春の踊り-」「ニュー・ミュージカル『シニョール ドン・ファン』」で初舞台を踏み、2023年に芸能生活20周年を迎えます。「Look at Me」は少し早めの20周年記念公演でしたが、20周年を迎えるにあたってのお気持ちをお聞かせください。
実はまだ宝塚歌劇団を退団して2年目という気持ちが強くて。宝塚での18年間には、退団のときにしっかりと区切りを付けることができたんです。だから18年と2年目という感じですが……それでも20年を振り返ると「長かったな、いろいろなことがあったな」と改めて思いましたね。
──ストーリー仕立ての「Look at Me」は、望海さん扮する音楽番組のディレクター・ひかりが、担当番組を打ち切られてしまうところからスタートします。ひかりは石川新太さん扮する新人ADに「ひかりさんが本当にやりたい番組を観たい」と促され、次々と大好きな歌を披露していきます。中でも、幼いひかりが両親に「自分を見て!」とアピールしていたというエピソードが印象的で、「今歌っているのはひかりなのか望海さんご自身なのか、どちらだろう?」と思う瞬間もありました。
そう思ってもらえたならうれしいですね! 構成の竹村武司さんや演出のウォーリー木下さんといろいろお話しして、自分自身の思いやこれまでにあったことをたくさん聞いていただいたんです。それをヒントに「Look at Me」のストーリーを考えていきました。「ひかりの人生を借りて、“望海風斗”という人を投影させられたら良いね」とウォーリーさんがアイデアを出してくださったこともあり、ひかりの生い立ちのエピソードには私自身の経験が反映されています。
──構成の竹村さんや演出のウォーリーさん、音楽監督の武部聡志さんとのクリエーションはいかがでしたか?
最初に「Look at Me」のストーリーを立ち上げてくださったのは竹村さんでした。宝塚時代からのファンの方々にコンサートを楽しんでもらいたいし、同時に新しい扉も開きたかった。皆さんにとって面白いものをどうお届けするか、竹村さんといろいろ話し合いました。コンサートの大枠を作るのはすごく大変な作業だったと思いますが、竹村さんがいろいろ考えてくださってこの形に行き着きました。
ウォーリーさんとのお稽古には、いかに自分たちがオーダーに応えていくかを考えながら取り組んでいたなと。いざ舞台稽古に入ったら、稽古場からガラッと印象が変わって楽しかったですね。映像や舞台美術、照明が加わって「ウォーリーさんの世界が広がっているなあ」と思ったのを覚えています。
武部さんやバンドの皆さんとは何回もリハーサルを重ね、それぞれが課題を見つけては「次のリハまでにクリアしよう」と持ち帰って……ということを繰り返しました。武部さんはリハーサルをするうちにみんなのパフォーマンスが変わっていくのをしっかりと受け止めながら、どうすれば一番良い形で音楽を届けられるか、初日まで考え続けてくださいましたね。
「Look at Me」では竹村さん、ウォーリーさん、武部さんのほかにも、そうそうたるスタッフの方々とご一緒することができ、とてもありがたかったです。皆さんに共通しているのは「どうしたら一番お客様に楽しんでもらえるか」を考えてくださったこと。そんな皆さんと一緒にゼロからコンサートを作り上げるのは、本当に楽しかったです。
やりたいものを制限なく詰め込んだセットリストで“Look at Me”!
──「Look at Me」はブロードウェイミュージカルのナンバーを届ける「#BROADWAY MELODY」、歌謡曲やJ-POPから成る「#PLAYBACK SONGS」、望海さんが過去に出演した作品のナンバーを歌う「#LIFE」などいくつかの章に分かれており、望海さんはファッションショーのように次々と着替えて20曲以上の楽曲を歌います。望海さんのお気に入りの衣裳や、特に思い出深いシーンを教えてください。
「#PLAYBACK SONGS」コーナー冒頭の、「君は薔薇より美しい」のときに着ていた、ピンク、オレンジ、ブルーの総柄の衣裳が特に好きです! 思い出深いシーンは……すべてのシーンにやりたいことを詰め込んだので、全部かな(笑)。でもやっぱり、今までに出演した作品の楽曲をコンサートバージョンで歌った「#LIFE」コーナーは特に印象的です。ただ出演作を振り返るのではなく、楽曲がアレンジされていたり、その役を演じたときとは違う雰囲気の衣裳を着られたりするのも楽しくて。「Look at Me」はひかりの人生を描いた物語でもあるので、ひかりを演じながら過去の作品の曲を歌うというのも面白い感覚でした。
──「#LIFE」コーナーでは、ミュージカル「ガイズ&ドールズ」より「アデレイドの嘆き」、「エリザベート TAKARAZUKA25周年 スペシャル・ガラ・コンサート」で歌われた「最後のダンス」などが披露されました。
いろいろな事情で過去の作品を観劇できなかった方もいらっしゃると思うので、「#LIFE」コーナーをできて良かったなと。お客様にも楽しんでもらえたと思います。
──「Look at Me」の選曲のテーマは“音域を広げる”ことだったそうですね。男声ボーカルの楽曲や美しいソプラノが印象的な曲、パワフルな女声の曲など、多彩なセットリストでとても聴き応えがありました。特にこだわったナンバーはありますか?
セットリストは、やりたいものを制限なく詰め込んだらこうなったという感じで(笑)、とにかく歌いたい曲を選んだんです。全曲にこだわりが詰まっていますが、前半の「#BROADWAY MELODY」コーナーは英語の曲が多く、「キャバレー」や「シカゴ」のようにオーソドックスなブロードウェイミュージカルのナンバーを歌う難しさがありましたね。いろいろなナンバーを選んだことで、楽曲ごとに異なる歌い方を勉強できたのはすごく良かったと思います。
──「#BROADWAY MELODY」コーナーでは、ミュージカル「ガイズ&ドールズ」の男性キャラクターが歌う「Luck Be a Lady」も披露されました。望海さんは歌いながら早着替えをされていましたね。
「Luck Be a Lady」をカッコよく歌ってみたかったので、あのコーナーも楽しかったです。「コンサートだからできる、“見せる早変わり”をやってみたいね」とウォーリーさんも言ってくださったので取り入れました。「歌いながら着替えるなんてできるかな?」と思っていましたが、皆さんに喜んでもらえて良かったです(笑)。
──アンコール前の「#GOING ON」コーナーでラストを飾った、ミュージカル「ファニー・ガール」の「Don't Rain On My Parade」は圧巻でした。
「Don't Rain On My Parade」については、ファンの方から「人生の中ですごく大切な曲です」という声をたくさんいただきました。またこのナンバーは、20周年を越えて「まだまだ進むぞ!」という思いと、コロナ禍で舞台公演が困難になった現状に対し、「舞台を止めないでね!」というエネルギーを込めて選んだ曲です。自分自身と皆さんの心にエンジンをかけ、背中を押したいという思いでこの曲をラストに持ってきました。コンサート終盤、身体を動かしながらこれを歌うのは大変でしたけど、私の場合は血流が良くなった状態のほうがよく声が出る(笑)。だから終盤じゃないと歌えないナンバーでもあったなと思います。
──すべての場面に望海さんの強い思いが込められているのが伝わってきました。ご自身が特に「このシーンの望海風斗を“Look at Me”!」と思うシーンがあれば教えてください。
「Look at Me」の映像を自分で観ていて特に「カッコいい!」と思ったのは、「#BROADWAY MELODY」コーナーです。ミュージカル「シカゴ」の「All That Jazz」を歌いましたが、こんなに有名なナンバーにチャレンジするなんて我ながら大胆だなと思いました(笑)。この場面はカメラワークが素敵で、映像作品としてもクールに仕上がっていると思うので、ぜひ注目してほしいです。
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男役をやってきたことは無駄になっていない