20周年アニバーサリー公演「Look at Me」がWOWOWに登場!望海風斗&クリエイター陣が見どころ解説 (2/2)

男役をやってきたことは無駄になっていない

──コンサートで望海さんが歌うと、1曲ごとにステージに物語が広がっていくのを感じました。ミュージカルで役を演じながら歌うのと、楽曲を単体で歌うのでは、感覚はどう違いますか?

ミュージカルや物語の中で歌うときは、楽曲によって気持ちが乗ってきて、スムーズに歌えると感じることがあります。楽曲単体で歌うときは、それぞれのナンバーの背景や世界観を作り上げるのが大変ですね。特に歌謡曲やポップスにはアーティストさんの“色”があるので、自分として歌えるようになるまでに時間がかかります。でもコンサートでは、お客様の空気感やその日の自分の気分によって自由に歌えるので、その楽しさはありますね。

望海風斗

望海風斗

──望海さんのさまざまな歌声を堪能できるのも、「Look at Me」の魅力の1つだと思います。望海さんは宝塚歌劇団時代から素晴らしい歌声で知られていましたが、男役として18年間鍛えてきた歌声が、退団後の2年で変わってきたのではないでしょうか。「Look at Me」では男役時代に歌われたナンバーにもチャレンジされていますが、歌声が変わるということについてご自身ではどう感じているのでしょう?

確かに声は変わったし、この2年で声を出しやすくなりました。宝塚時代は「男役として、いかに個性的な声を作るか」について考えていましたが、今は声帯を守ることを重視して訓練をしています。だからどの音域も発声しやすくなったぶん、以前の声にあった危なっかしさはなくなっていますね。そのことに対してマイナスな気持ちはありません。私はまだ女性の役をスムーズに演じられないときがあるので、男性キャストが男性役をやる姿に「うらやましいなあ」と思うこともある。ですが今は、課題を1個1個クリアするのが楽しいんです。「Look at Me」をやって感じたのは、男役を続けてきたことは決して無駄になっていないということ。歌に関して言えば、今後は男役時代の低音域もキープしながら、高音域もさらに歌えるようになりたくて。だからこれからも、“男役”の声が完全になくなることはないと思います。

望海風斗

望海風斗

だまされたと思って観て!ノンストップの1時間40分

──望海さんはブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」の記者会見で、ご自身の次なる“夢”について「宝塚に入る夢は実現できたので、次は自分の家を買いたい」と語っていました(参照:ミュージカル「ドリームガールズ」キャストが劇中歌披露、望海風斗は次なる“夢”明かす)。俳優として次の10年、20年に向けた目標は何ですか?

そうでしたね(笑)。この20年は、いろいろなことを積み重ねて、気が付いたらそれだけ時間が経っていたという感じ。振り返ると「あの作品があったから次があったな」「宝塚があったから今があるな」と思うんです。だから今後も、1作品1作品ごとの出会いに向き合い続けるのが目標です。同時に最近は、ただひたすらがんばり続けるだけではなく、“充電”も必要なのだと思い始めました。だから「家を買いたい」というのも、「ちゃんとエネルギーをチャージしよう」「バランスを取りながらやっていこう」という思いから生まれた私の夢です。

──今後の望海さんの活躍がますます楽しみになりました。最後に、「Look at Me」の配信と放送を楽しみにしている方々にメッセージをお願いします。

ノンストップの1時間40分間です! 舞台を観てくださった方も映像ならではの視点で楽しめるはず。セットリストの中には、皆さんが知っている曲も知らない曲もたくさんあると思います。おなじみの楽曲が素敵にアレンジされていたりしますから、ミュージカルを観たことがない方も、「Look at Me」で音楽の豊かさ、多彩さを味わっていただきたいですね。ぜひだまされたと思って(笑)、観てもらえたらうれしいです。

望海風斗

望海風斗

プロフィール

望海風斗(ノゾミフウト)

神奈川県生まれ。2001年、宝塚音楽学校に入学。2003年、89期生として宝塚歌劇団に入団し、月組公演「宝塚舞踊詩『花の宝塚風土記(ふどき)』-春の踊り-」「ニュー・ミュージカル『シニョール ドン・ファン』」で初舞台を踏む。その後花組を経て、2017年7月24日付で雪組トップスターに就任し、2021年に宝塚歌劇団を退団。退団後に出演した「ネクスト・トゥ・ノーマル」、ミュージカル「ガイズ&ドールズ」の演技が評価され、第30回読売演劇大賞中間選考会で女優賞の上半期ベスト5に選ばれた。2・3月には、ブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」でディーナ・ジョーンズ役を務める。

クリエイター陣が語る「Look at Me」

竹村武司(構成)

竹村武司

元宝塚歌劇団のトップスターと聞けば、当然こちらも身構えます。品行方正から手と足が生えたエレガントの塊のような方かと思っていたら、鮮やかに裏切られました。望海風斗さんには「がむしゃら」という言葉が似合います(もちろん清く正しく美しいがむしゃらです)。「なにくそ」「負けるもんか」「私を見て!」の心意気を隠さず、良い意味で孤高にならない隣近所のがんばり屋さん。そんな望海さんだからこそ、優雅だけに留まらない、躍動的でかわいらしくて何より歌がうまいうまいうまいうまい、望海さんにしかできないコンサートになったのだと思います。私は客席で圧倒されました。皆さんもぜひ圧倒されてください。

プロフィール

竹村武司(タケムラタケシ)

放送作家。大学卒業後、広告代理店を経て、放送作家の道へ。「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」「はなかっぱ」のアニメ脚本、「光秀のスマホ」「サ道」のドラマ脚本、「魔改造の夜」「タモリ倶楽部」「ダウンタウンDX」「新しいカギ」「くりぃむクイズ ミラクル9」などの構成を担当。また「山田孝之の東京都北区赤羽」「植物に学ぶ生存戦略 話す人・山田孝之」など、山田孝之の出演作の脚本・構成を多く手がけている。

ウォーリー木下(演出・上演台本)

ウォーリー木下

舞台上でのあふれるエネルギーに、無尽蔵とも言える引き出し、歌も踊りももちろん演技も全部をオールマイティにやりきるエンターテイナー。それが望海さんです。裏ではキャスト・スタッフを常に労い、ご自身が一番の見本となるように振る舞う。それが望海さんです。「Look at Me」が息つく間もないハッピーでエネルギッシュ、そして感動的なステージになったとしたら、すべて彼女のおかげです。こんなコンサートが観たかった、というようなものを何倍も超えたものにしてくれました。20周年おめでとうございます。これからもよろしくお願いします。

プロフィール

ウォーリー木下(ウォーリーキノシタ)

1971年、東京都生まれ。1993年、神戸大学在学中に劇団☆世界一団を結成し、現在はsunday(劇団☆世界一団から改称)の代表を務める。俳優の身体性を重視した演出が特徴的で、劇団での活動に留まらず、外部作品も多く手がけている。2002年には自身が中心となり、ノンバーバルパフォーマンス集団・The Original Tempoを設立。2001年に「神戸ショートプレイフェスティバル」、2011年に「PLAY PARK-日本短編舞台フェス-」、2013年に「多摩1キロフェス」、2017年に「ストレンジシード」を立ち上げるなど、フェスティバルディレクターとしても活動。2018年には兵庫・神戸アートビレッジセンター(KAVC)の舞台芸術プログラム・ディレクターに就任した。現在、「ミュージカル『ダブル・トラブル』(A Musical Tour de Farce)=2022-23冬=」が上演中。3・4月にミュージカル「ルーザーヴィル」の公演を控える。