古代モンゴル帝国を描くスペクタクル歴史ドラマが今秋来日!「モンゴル・ハーン」モンゴル公演レポート (2/2)

モンゴルの歴史を感じよう
「モンゴル・ハーン」の会場、国立ドラマ劇場周辺を散策

モンゴルの演劇事情

モンゴルと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。牛や羊と共に広大な草原を駆け抜け、移動式の住居ゲルで暮らす遊牧民たちの姿か、はたまた、大相撲で活躍した朝青龍、白鵬、日馬富士、鶴竜、照ノ富士、豊昇龍といったモンゴル出身の歴代横綱の顔ぶれか。近年では、日曜劇場「VIVANT」(2023年)のロケ地としても知られ、ドラマの聖地巡礼に訪れる邦人も多い。「モンゴル・ハーン」の会場となった国立ドラマ劇場も「VIVANT」のロケ地の1つとなっており、劇中に登場するバルカ国際銀行の外観として使用されている。

モンゴルの首都ウランバートル市内には、国立ドラマ劇場のほかにも、国立ドラマ劇場と双璧を成す舞台芸術の発信地である国立オペラ・バレエ劇場や、モンゴルの伝統芸能を上演している子供宮殿といった劇場がある。その名の通り、国立ドラマ劇場では主に現代劇や歴史劇、国立オペラ・バレエ劇場ではオペラやバレエ作品が上演されることが多い。小規模な劇場もウランバートル市内にいくつかあるといい、「今後もより一層、舞台芸術の発展に力を入れていきたい」と現地の演劇関係者は語っている。

また、モンゴルではサーカスが盛んで、サーカスは演劇や音楽などと並んで文化芸術の1ジャンルにカテゴライズされている。国立ドラマ劇場から徒歩10分ほどの場所には、ASAアリーナという青いドーム状のサーカス会場があり、このASAアリーナの建設には元大相撲力士で第68代横綱の朝青龍が関わっている。「モンゴル・ハーン Japan Tour 2025」を観劇しモンゴルに興味を持った方は、ぜひそのほかのモンゴルの舞台芸術にも触れてみてほしい。

老若男女、国民が集うスフバートル広場

国立ドラマ劇場の近辺には、政府庁舎をはじめモンゴル国内の要所が集中しており、それぞれが歩いて散策できる距離にある。その中から、「モンゴル・ハーン」の題材となったモンゴル帝国時代の歴史を感じられる場所をいくつか紹介したい。

まずは、国立ドラマ劇場の北東に位置するスフバートル広場だ。石畳が敷かれたスフバートル広場には、モンゴル帝国を築いたチンギス・ハーンや、オゴタイ・ハーン、フビライ・ハーンの像、そして19世紀に活躍した革命家ダムディン・スフバートルの騎馬像が鎮座している。スフバートル広場は国民の憩いの場としても知られており、モンゴルの民族衣装・民族衣裳を着た中高年のグループや、タキシードやウエディングドレスを着用したカップルが記念撮影を行っていた。中高年のグループに話を聞くと、高校時代の同級生が数十年ぶりに集まり、同窓会を開いているのだという。

チンギス・ハーン博物館で歴史を学ぼう

スフバートル広場から北西に向けて数分歩いたところに、9階建ての白い建造物が現れる。これは、旧自然史博物館跡地に建てられたチンギス・ハーン博物館で、2022年10月に開館した比較的新しい歴史博物館。主な展示スペースは3階から8階まで。フロアごとにテーマが設定され、モンゴル帝国時代から近代に至るまでのモンゴルの歴史をたどることができる。展示品は多岐にわたり、石像、衣料品、工芸品、絵画、武器、楽器などが所蔵されており、特に歴代ハーンの肖像画がずらりと並ぶコーナーは壮観だ。またこれらの展示物を観ると、「モンゴル・ハーン」に登場した衣裳や小道具などが、過去の資料に基づいて精巧に作り込まれていることがわかる。

2025年6月現在、9階では特別展示が行われており、ブロンズと金で構成された巨大なチンギス・ハーン像が、ゲルを模したスペースの中に展示されている。1階にはミュージアムショップがあり、Tシャツやハガキといった記念品を購入することが可能だ。

さらに、チンギス・ハーン博物館近辺には、モンゴル国立博物館をはじめとする博物館や美術館など、同じくモンゴルの歴史変遷を学ぶことができる施設が多数ある。これらの施設を巡りながら、「モンゴル・ハーン」で描かれたモンゴルの“過去”と“現在”に思いを馳せてみてはいかがだろう。