参加者
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船戸竜馬役
多田直人(タダナオト)1983年、北海道生まれ。俳優。2004年に演劇集団キャラメルボックス、2019年に青年団に入団。
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林原キイロ役
三浦修平(ミウラシュウヘイ)1990年、北海道生まれ。俳優。2013年、扉座研究所に第17期生として入所し、2015年に扉座へ入団した。
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吉富こゆき役
永田紗茅(ナガタサチ)神奈川県生まれ。俳優。2017年、柿喰う客に加⼊した。
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化野めい役
古賀ありさ(コガアリサ)1998年、福岡県生まれ。俳優。2019年、円・演劇研究所へ入所し、2020年、演劇集団円の会員に昇格した。
予想が見事的中した「2.5次元舞台編」舞台化
──多田さんは演劇集団キャラメルボックス、三浦さんは劇団扉座、永田さんは中屋敷さんが主宰する柿喰う客、古賀さんは演劇集団円と、実際に劇団に所属している劇団ララライキャストの皆さんにお集まりいただきました。「演劇【推しの子】2.5次元舞台編」への出演が決まった際の心境や、「【推しの子】」の原作マンガやメディアミックスに触れたことがあれば、作品のイメージを教えてください。
多田直人 世間でブームになっていたので、もちろん原作のことは知っていたんですが、原作やアニメは「演劇【推しの子】2.5次元舞台編」のオファーをいただいてからしっかり拝見しました。特に「2.5次元舞台編」は身につまされるエピソードが多くて。演劇はスポーツと違って、明確に勝敗がつかない分野だと思うんです。でも「【推しの子】」には、「今は自分よりあいつのほうが優勢だ」「あいつより絶対にうまくなってやる!」とか、少年マンガのような熱い展開が登場するので、そこがすごく魅力的だと思いました。昨今、演劇界では「みんなで仲良く楽しくやろう」をモットーに作品作りをする流れが主流になってきてはいますけど、やっぱり俳優1人ひとりの心の中には、「誰々には負けないぞ」とか「自分はこの物語の中でこの役割を果たすんだ」という気持ちがあるはずなので、普段は可視化されない俳優の心情を顕在化してくれていて、俳優として非常に触発されました……以上です!
一同 (拍手する)
三浦修平 ……右に同じです!
多田 ちょっとー!(笑)
三浦 ははは! 僕、実は「2.5次元舞台編」は絶対に舞台化されるだろうと思っていたんです。「【推しの子】」のストーリーが順番に舞台化されるというよりは、「東京ブレイド」の物語が単体で舞台化されるんじゃないかなって。
一同 すごい!
三浦 まさかその舞台に自分が出演させていただけるとは思っていなかったので、オファーをいただいたときはテンションが爆上がりしましたね。あまりに豪華な顔合わせなので、緊張でガチガチになっていたんですけど、一緒に稽古をするうちに「ああ、この人たちは安全な人たちなんだ」とわかって。
多田 危険な人たちだと思ってたの!?(笑)
古賀ありさ ははは! 三浦さんの気持ち、すごくよくわかります。2.5次元舞台への出演が初めてなので、最初はものすごく緊張しました。私が所属している演劇集団円では出演者と演出家、少数のスタッフだけで稽古をしていることが多いのですが、「演劇【推しの子】2.5次元舞台編」の稽古場にはたくさんのスタッフさんがいらっしゃって……自分にとって、何から何まで新鮮な現場です。原作「【推しの子】」に関して言うと、初めはキラキラしたお話なのかなと思っていたけど、サスペンス要素があって、すごく面白い作品だと感じていたので、今回出演させていただけることになってうれしかったです。
永田紗茅 私は姉から「紗茅は絶対『【推しの子】』好きだと思うよ。読んでみて!」と激推しされたことがきっかけで原作を読んだんです。そうしたら本当に面白くて、気が付いたら何時間もマンガを読み続けるくらい、「【推しの子】」の沼にどっぷりハマりました。しかも「2.5次元舞台編」では、自分が生業としている舞台業界の深いところに切り込んでいるので、そのパートを舞台化すると聞いたときは「なんてチャレンジングな企画なんだ!」と驚きましたね。2.5次元舞台というジャンルで「2.5次元舞台編」を表現するのはハードルが高いかもしれないけれど、中屋敷ならきっと面白い作品に仕上げてくれるんじゃないかと勝手に期待しています。中屋敷が「演劇【推しの子】2.5次元舞台編」に携わることを、どれだけ楽しみにしていたのか、それを間近で見てきた人間の1人なので、今回の作品には特別な思いがありますね。
原作をリスペクトしつつ自由に作る
──通し稽古の様子を拝見して、劇団ララライキャストの皆さんが生き生きとお芝居をされている姿が印象に残っています。お稽古をするにあたって注力したことや苦労したこと、お稽古中に印象的だったエピソードなどがあれば教えてください。
永田 「SMASH HEAVEN」という劇中劇を上演する場面があるんですが、鴨志田朔夜役の北村諒さんや劇団ララライの男性メンバーが舞台上で自由にお芝居をしているのを観て、もう笑いが止まらなくって(笑)。
多田 別に笑わせようと思ってやってないよ! 青春を感じながら真剣に演じてるの!
永田 しかも、多田さんは「SMASH HEAVEN」で観客役をやっている私や古賀さんに向けてファンサービスをしてくるんです(笑)。
多田 “してくる”!? ファンサしないほうが良かった!?
永田 すみません。言葉のあやでした(笑)。「SMASH HEAVEN」のシーンはキャスト1人ひとりのキャラクターが立っているので、何度観ても飽きないですね。
多田 自由にやらせてもらいつつも、気を付けていることがあって。中屋敷くんってやっぱり原作愛がすごく強いんです。「【推しの子】」という作品をどれだけ愛しているか、「【推しの子】」の魅力を自分なりに噛み砕いて、舞台に落とし込むために、どれだけ努力をしているか。そういった愛情が、中屋敷くんの行動の節々から伝わってくるんですね。なので、僕たちはその思いにしっかり応えないといけない。また、お客さんが観ていて不快にならないように、きちんと原作にリスペクトを持って、エンタテインメントとして昇華したいなと思っています。
古賀 苦労したことで言うと、劇団ララライの化野めいというキャラクターと自分自身をどこまでリンクさせたらいいのか、自然体に近いイメージで化野めいを演じていいのか、でもそれは俳優として楽をしているだけなんじゃないのかと悩んで、中屋敷さんに相談したことがあるんです。そうしたら中屋敷さんが「等身大の古賀ちゃんを見せてほしい。そのままで良いよ」と言ってくださって。1幕では自分らしさを出しながら、化野めいが別のキャラクターを演じる2幕の「東京ブレイド」では、また違った一面を出せたらいいなと思っています。
三浦 確かに。俳優が俳優の役を演じて、劇中劇に登場する俳優がさらに別の役を演じるという特殊な構造を、お客さんにも楽しんで観ていただきたいですよね。
細かい芝居も見逃さないで!
──劇場で観劇される方に加えて、配信で本作を鑑賞される方も多くいらっしゃると思います。配信でご覧になる方に向けて、「ココを観てほしい!」という注目ポイントを教えていただけますか?
古賀 まだ資料を拝見しただけなのですが、舞台美術や音響、照明、映像なども素晴らしい仕上がりになっていると思うので、全景映像で舞台全体を観ていただきたいですし、スイッチング映像を通して、劇団ララライのメンバーがいろいろなところで面白いことをやっているのを見つけてもらえたらと思います!
永田 劇団ララライのメンバーがヒソヒソと会話している内容までは伝わらないかもしれないのですが、「劇団ララライのメンバーは今、どんなことを話しているのかな?」と自由に想像してもらい、「演劇【推しの子】2.5次元舞台編」をさらに豊かな作品にしていただけたらうれしいです。ぜひ感想を教えてください!
三浦 たとえば「SMASH HEAVEN」のシーンで観客役の永田さんと古賀さんが使用するペンライトや、「東京ブレイド」のシーンで使う台本など、小道具1つひとつにもスタッフさんの愛が込められているので、その愛情を感じていただけたらと思います。
多田 自分としては、とにかく若い俳優たちのお芝居を観てほしいなと思います。みんな、お芝居がすごく上手なんですよ。自分が20歳そこそこのとき、こんなにしっかりお芝居できていたかな?と顧みてしまうくらい。客席後方からだと捉えきれない、彼らの表情の揺らぎや目の潤みなど、細かいお芝居を見逃さないでほしいなと思います。