「終点 まさゆめ」で松井周と菅原直樹が目指す演劇を通じた“未知の何か”そして久保井研らキャスト6名のメッセージ (3/3)

船出を共にするキャストたちが思う「終点 まさゆめ」

ここではキャストの久保井研、篠崎大悟、荒木知佳、オーディションキャストの小川隆正、石川佳代、山田浩司が「終点 まさゆめ」について語る。

久保井研

──今回、出演したいと思われたポイントは?

松井くんとは何本か芝居をやってきた。その遊戯性、物を何かに見立てて物語をすすめていく面白さをいつも感じていた。以前やった作品も天国地獄の水先案内人のような役柄で、それをきっかけに「老い」や「死」を考える様になった。還暦を迎えた時は考えなかったのに……。
今回、「老い」や「死」をテーマに、65歳以上の出演者を中心に岡山で芝居を創ると聞いた。出てみたいと思った。松井くんなら軽やかに、戯れる様に「死生観」を料理するだろうと。

──稽古の中で、松井さんあるいは菅原さんの発言で印象的だったことは?

稽古の冒頭、松井くんはこう言った。「この芝居、完成は目指しません」
この「終点 まさゆめ」は出演者の即興の会議!?によって進められていく。物語の中にはその会議のシーンが数回用意されていて、その会議の転がり具合は未知数だ。つまり結末さえ変わってしまう可能性がある。
「それは芝居じゃないだろう」私は胸中で叫んだが、「芝居じゃないことをやりたいんです」松井くんは力強くいった。
さてどんなモノが出来あがるのか……。

プロフィール

久保井研(クボイケン)

1962年、福岡県生まれ。1989年に劇団唐組に入団。2012年より座長代行として唐組全作品の演出を務め俳優としても出演する。松井作品には「さいごの1つ前」ほかに出演している。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

篠崎大悟

──今回、出演したいと思われたポイントは?

どの公演もそうなのですが、“今回は特に今出ておかないと他では経験できない公演になる”という予感があり出演を決めました。地方での滞在制作やさまざまな出自の方との作品作り、台本も即興的な部分も多く経験したことがないことだらけです。
俳優としてもそうですが、人間的な部分でもたくさん学ぶことが多いと思います。そこに魅力を感じて出演を決めました。

──稽古の中で、松井さんあるいは菅原さんの発言で印象的だったことは?

松井さんが、“完成を目指す舞台ではない”と言っていたのが印象的でした。悪い意味ではなく、何かが起きたとしてもその都度やり方を変えたりしながら今のメンバーでその時にできる事を考えて公演をする。
その姿勢は今回の舞台の本質的な部分のように感じてとても印象的でした。
僕もその都度の変化を楽しんで演じたいと思います。

プロフィール

篠崎大悟(シノザキダイゴ)

1985年、千葉県生まれ。俳優、ロロのメンバー。近年の主な作品にPARCOプロデュース2024「最高の家出」、ストレンジシード静岡2024 コアプログラム ロロ オムニバス・ストーリーズ・プロジェクト「パレードとレモネード」ほか。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

荒木知佳

──今回、出演したいと思われたポイントは?

2022年に「導かれるように間違う」という作品で松井さんとご一緒致しました。松井さんの書く、とっても不思議だけど、どこかすごく身近に感じられる世界が好きで、今回お話をいただいたときに是非参加したいと思い、出演を決めました。
「安楽死」をテーマにした作品と伺っております。私自身どういう死に方が理想なのかすごく考えたことがあって、でも答えが出ませんでした。今回この作品に参加することによって「安楽死」というテーマに向き合いたいなと思っています。

──稽古の中で、松井さんあるいは菅原さんの発言で印象的だったことは?

松井さんが、「この作品は絶対オモシロイ物にする!」とおっしゃった時、それを聞いた出演者の皆さまが笑顔で拍手をされました。このメンバーに出会えて一緒に作品を作れること、ほんとうに幸せなことだなと思いました。これから一緒に創作をすること、楽しみです。

プロフィール

荒木知佳(アラキチカ)

1995年、北海道生まれ。俳優。2021年、KYOTO CHOREOGRAPHY AWARD 2020にてベストダンサー賞受賞。同年、マルセイユ国際映画祭(FID)にて俳優賞受賞。松井周作品には「導かれるように間違う」に出演。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

小川隆正

──今回出演したいと思われたポイントは?

本年3月に菅原直樹氏の作・演出による「老人ハイスクール」で、人生初の演劇に出演しました。稽古、本番を通じて、菅原作品の素晴らしさを知り、この人はただ者ではないと感じました。同時に、無縁だった演じることの楽しさと奥深さも知り、新たな挑戦機会と思って、オーデションを受けました。自分のような素人高齢者にこのような挑戦機会が与えられ、それを通じて地域の芸術文化が活性化すれば、岡山芸術創造劇場ハレノワがつくられて良かったと感じる市民が増えるのではという思いもありました。

──稽古の中で、松井さんあるいは菅原さんの発言で印象的だったことは?

松井周さんの印象的だった言葉
・何千年もの歴史のある「演劇」の持つエネルギーや面白さをアップデートし、誰でも楽しめて、何かしら刺さるような、しかも今まで見たことのない作品をこのメンバーでつくりたい
・「老い」の暗いイメージを反転させて、ユーモアあふれるものにしたい。
・ドキュメンタリーなのか、フィクションなのか見ている側もわからない作品。人生を生きてきたそのままが、舞台に良さとして出る。(セリフのないパートでも)とまどいながらも各自が工夫してコミュニケーションすることで、絶対に面白いものにしたい。物おじせずに気になることは聞いてほしい。皆さんの良さをふんだんに取り入れた作品に出来れば。

プロフィール

小川隆正(オガワタカマサ)

1954年、岡山県生まれ。福武教育文化振興財団常任理事。2024年にオリジナルミュージカル「マイ・シンデレラ」、菅原直樹と三重県文化会館のプロジェクト「老いのプレーパーク」に出演。弾き語りが趣味、2024年5月に「岡山パリ祭2024」で有森裕子賞受賞。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

石川佳代

──今回出演したいと思われたポイントは?

自分の老いと真っ正面から向き合って見ようとの思いです。
14年前の「聖地」に参加した時は60代でしたが、老いはまだ他人事でした。ところが齢80になり、変形性膝関節症になったり、直近の記憶がなくなったり、老いは切実な自分事になりました。「聖地2030」がコロナのためまぼろしに終わりましたが、今回こそ自身の老いを認めつつ、最後まで生ききるとはどういうことか追い求めたいと思います。

──稽古の中で、松井さんあるいは菅原さんの発言で印象的だったことは?

今回は劇中にセリフの決まっていない話し合いの場面が出てくる。そこでは各自が毎回違った役割で話をしてほしい。すくなくとも10通り位は用意してほしい。ただし、細部まで作り込まないで、他の人とのやり取りの中から話を展開していってほしい。フィクションだけど、とっさに出る言葉に、その人の人間的な魅力が出たら良いなあと考えている。果たして演劇と言えるのか分からないが新しい試みをしたい。
との言葉です。不安いっぱいですが、どうか私たちが日替わりでやりきれますように‼️

プロフィール

石川佳代(イシカワカヨ)

1944年、神奈川県生まれ。フリーのキャリア・カウンセラー。さいたまゴールド・シアターに在席し、全作品に参加。ほか出演作に2015年から2018年にかけて庭劇団ペニノ「地獄谷温泉 無明ノ宿」、2024年にダンス公演 REVO2024「『Sea Horse』劇場版『Lost』」など。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

山田浩司

──今回出演したいと思われたポイントは?

4月の県報(三重)に高齢者の演劇出演者募集を知り、高齢者対象だからきっと緩い演劇だろうと軽い気持ちで応募してしまいました。三重のオーディションには、10名の応募者がありましたが何故か私一人だけになってしまい、これは辞められないなぁと責任を感じました。
全く、演芸の知識や経験も無いのですごく不安でしたが、複数回のメンバーミーティングに参加して少しずつ不安は解消されました。台本を頂いた時点で「得難い経験」と考えて覚悟を決めました。
気負わず私らしく自然体で演じられるよう公演終了までがんばります。

──稽古の中で、松井さんあるいは菅原さんの発言で印象的だったことは?

松井様には不安を解消する為にいろいろと尋ねましたが、「そのままで演じてください」と言われその時は納得していましたが、いざセリフが入ると言い回しや「間」を変に意識してしまい難しさを感じています。

プロフィール

山田浩司(ヤマダコウジ)

1945年、京都府生まれ。三重県名張市在住。高島屋大阪店、手打ちそば やまだ庵を経て、現在は無職。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。

「終点 まさゆめ」稽古の様子。