「ショールームダミーズ #4」ジゼル・ヴィエンヌ、エティエンヌ・ビドー=レイ対談|生身の身体と人形──表現したいのは“他者と自分”のこと

6人が証言、「『ショールームダミーズ』のパフォーマーになるために、必要なこと」

ここではキャスト6名にそれぞれの実感をインタビュー。出演の動機から、クリエーション中のエピソード、さらに本番に向けた現在の心境まで、出演者6名がそれぞれの思いを語る。

朝倉千恵子
朝倉千恵子(アサクラチエコ)
以前、ジゼルさんのワークショップに参加させていただき、それが面白かったのでジゼルさんの作品の作り方にとても興味を持ち、オーディションを受けました。6月のクリエーションでは、ランスルー中にジゼルさんから「Take your time」と言われたことで、自分が無意識に自分の想像やそこから生まれる感情、そこで過ごす時間に嘘をついていたんだとハッとしました。舞台には敏感かつ繊細な状態で存在し、豊かな想像力を持ってその場を楽しむことが大事だと感じています。また、動きのダイナミックさについても新たな発見がありました。現在は、自由にのびのび想像力を持てるようになりたいと思い、マネキンが作品の中に出てくることにちなんで、いろんな彫刻作品をよく見るようにしています。それとジゼルさんとエティエンヌさんから参考資料をもらっているのでそれをさまざまな視点で読み直しています。公演までの時間が長いと、音楽や本などいろいろなものから表現するときの栄養をたくさん得ることができて、アイデアの引き出しがたくさんできると思うので、上演がより肉厚で濃厚なものになると思います。またメンバーたちとそれぞれが得たインスピレーションについて共有するのが楽しみです。
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東京藝術大学大学院卒業。2014年よりパフォーマンスの制作を始める。現在、俳優としてフリーランスで関東を拠点に活動中。2017年、MEDIA PRACTICE16-17にて「日々淡々とその日にそなえる」「そのあとふり かえる、わたし、別のわたし、別のだれか」を発表。2017年よりチェルフィッチュ「三月の5日間 リクリエーション」に参加。2019年、MEDIA PRACTICE18-19にて「流れうつるわたしの複数」を発表。
大石紗基子
大石紗基子(オオイシサキコ)
2013年のロレーヌバレエ団在籍時に、ジゼルとエティエンヌと一緒に働かせてもらう機会がありました。そのときに2人が生み出す独特な空気感や仕事の仕方に共感し、素晴らしい才能のある演出・振付家の1人だと感じました。またロームシアター京都は私がバレエ団時代の最後の舞台となった所縁のある場所。再びこの素敵な舞台、関係者の方々と上演できると聞き、何か運命のようなものを感じて参加したいと思いました。6月のクリエーションでは毎日ヨガのクラスをやっていました。劇中、ハイヒールを履くのですが、ヨガをやっていると、床からの力を感じやすくなりヒールでも動きやすくなるんです。またヨガは、無駄なことは考えず集中力高める効果があると思っています。現在は、ジゼルがインスピレーションを受けたという本や映画を見たり、クリエーションで学んだ人間の自然で動物的な動きを観察・研究したり、サディズム、マゾヒズム的感覚などについて考えたりしています。本番までの時間が空くと、習った踊りのテクニックが抜けてしまうのではないかと不安もありましたが、今はその時間を使って考えたり、“観察”したりすることで少しずつ勉強ができ、作品の深みが出てくるのではないかと考えています。
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5歳よりバレエを始める。2005年、フランス、マルセイユ国立バレエ学校に入学し、首席で卒業。2006年、Cellule d'Insertion Professionnelleに所属し、マルセイユバレエ団やBallet D'Europeで経験を積む。2009年、CCN Ballet De Lorraine (ロレーヌバレエ団)に入団。その後ウィリアム・フォーサイス、トワイラ・サープ、マース・カニンガム、ジゼル・ヴィエンヌ、マーサ・グレアムなど多様な振付家の作品を踊る。現在はフリーランスダンサーとしてフランスを拠点に多数のプロジェクトに参加している。
高瀬瑶子
高瀬瑶子(タカセヨウコ)
「ショールームダミーズ」の舞台写真を観てとても惹かれたこと、またクリエーションの機会を渇望していたこと、いろいろなチャレンジをしているイメージがあるロームシアター京都で踊ってみたかったこと……などが参加したいと思うきっかけです。稽古の中で言われた言葉では「let it go, no judge」が印象的でした。体を使うことはトレーニングしてきましたが、解放することにはあまり重きを置いてきませんでしたし、出産を経て、日常生活では自分の意思ではどうにもならない環境の変化を感じていたのですが、自分を解放し受け入れること、“自分を判断しない”ことの必要性を普段から強く感じるようになりました。その後、本や映画を見たり、人間観察したり、体を緩めるトレーニングや“自分を判断しない”ことを意識しつつ、マゾヒシズムについて考えたり、“間”“瞬き”など微かな動きの力をどう楽しむか、どう表現するかを考えています。時間をかけることで消えていくものと生まれてくるものがあると思いますが、その両方が頭と体を通過していった痕跡が、作品のどこかに残っていくはずです。そして相手と向き合ったときにふとした瞬間、それがうわっとあふれてきて化学反応を起こすのではないかと思っています。
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幼少よりモダンバレエを始め、のちに橘バレエ学校にてクラシックバレエを学ぶ。Austria Ballet Company-Tokyoを経て、現在は骨で動ける身体を探し、コンテンポラリーダンサーとして関西を拠点に活動中。こうべ全国洋舞コンクールモダンダンス部門1位受賞。青木尚哉、中村恩恵、近藤良平などの作品に出演。自作自演も発表する傍ら、白井晃演出、森山開次振付「Lost Memory Theatre」「夢の劇」、CMなどに出演し、踊りを通して演劇やメディア活動での表現も探求している。
花島令
花島令(ハナシマレイ)
今のフランスおよびヨーロッパで受け入れられているスタイルや作風が知りたかったのと海外の演出家・振付家の作品に自分が通用するのか試したくオーディションを受けました。1週間というオーディションは、私のダンサー人生の中で一番長く、ある意味、神経の擦り切れるものでした。最初は雲をつかむような作業でした。だんだんと2人の言葉を理解できるようにはなりましたが、6月のクリエーションでもやはり感覚、イメージの違い、捉え方の違いを感じました。2人が常々言っていたのは「small movements can be a big massage」ということ。いかに小さな動きで空間や相手を圧倒できるか、は私にとって非常にインスパイアされる言葉であり、これから表現を続けていく中で大切な言葉となりました。6月のクリエーション後、そのことを日常的にも意識するようになりましたし、人間観察もさらにそのような観点からするようになりました。あとは、役柄として主従関係のある作品、映画などを資料として観るようにしています。稽古期間がどんなに長くても、ゴールや正解はありません。ただいろいろな(主従関係、感情、キャラクターなどの)可能性に関して想像や仮説を立てられることは、舞台に立つうえで身体が非常に濃密なものになるような気がしています。
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ニューヨーク、カナダ、ヨーロッパなどでトレーニングを積み、2012年に英国Rambert Schoolを卒業。カンパニーデラシネラ、印象派、NODA・MAP、I COULD NEVER BE A DANCERほか多数の作品に出演。舞台だけではなく大学や美術館、世界遺産でのパフォーマンスのほかに、海外フェスティバルに招聘されるなど幅広く活動。現在フリーランスとして関東を拠点に活動中。PV・映画、舞台などの振付も行う。
藤田彩佳
藤田彩佳(フジタアヤカ)
ジゼルとエティエンヌの経歴、特に出身校、この方たちがどういうクリエーションをし、どういう世界を創り上げていくkale companhia de dancaに入団。のか、ということに興味がありました。本物の人間か、マネキンなのか……という「ショールームダミーズ」の舞台写真も印象的でしたね。6月のクリエーションで印象的だったことはたくさんあります。例えば、作品の中での自分のキャラクターで自己紹介をし、それぞれについて話し合うという時間があったのですが、それによってみんなとの関係性やいろいろなシチュエーションをイメージすることができるようになり、自然と作品に入り込めるようになりました。ほかにも観客をリラックスさせるために、自分たちがリラックスした状態でいること、観客に“その先”を想像させるストップ(停止)のあり方、起きたことに自然に反応すること……などが印象的です。6月のクリエーションを経て、例えば電車に乗ったときに周りを観察してみたり、考えることで忙しい、という状態を作るようにしています。と同時に、無意識に入っている力を抜く、ということを心がけています。この半年間、メンバー個々にさまざまな経験、観察をしていると思います。また違うアプローチやそれに対しての答えがどうなるか、怖いながらも楽しみです。
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5歳よりバレエを始める。法村友井バレエ学校で法村牧緖らに師事。高校卒業後にスイスのルードラ・べジャール・ローザンヌ・バレエ学校に入学し、クラシックバレエやグラハムテクニックをミシェルガスカールらに師事。卒業後はポルトガルのkale companhia de dancaに入団。退団後、Noism準メンバーとして活動。現在フリーランスとして関西を拠点に活動中。
堀内恵
堀内恵(ホリウチメグミ)
「どのようにして『ショールームダミーズ』ができあがったのか? 日本で日本のダンサーによって作品がどのように変化していくのか?」が気になり、参加したいと思いました。稽古の中では“舞台の上で自然体でいること”を特に言われています。それによって小さな動き、視線だけでも伝わることがある、ということを学びました。ダンスしていると、知らず知らずにお客さんに“見せよう”としている自分がいることに気付いたので、今回新たな表現を得たと思います。6月のクリエーションを経て現在、“生活の中で無意識に動きが止まる瞬間”を発見するようになり、なぜ自分が止まったのか」を振り返って考えてみるようになりました。また、街の中で道行く人を観察したり、身近な人たちの人間関係をジル・ドゥルーズの哲学的に観察したりする、ということをしています。本番まで今回のように長い時間があるのは初めてで不安でもありますが、それぞれが6月のクリエーションで得たことを熟考できる時間になっているのではと思います。次のリハーサルでどんな変化が表れるのか楽しみです。
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大阪ダンス&アクターズ専門学校卒業。2年間ニューヨークに留学。日本に帰国後、ニューヨークで学んだモダンダンス、コンテンポラリーダンスをベースに自分のスタイルを追求している。現在フリーランスとして関西を拠点に活動中。また、フィルムカメラで自身が撮影した写真の展示活動も行っている。