下田昌克×ノゾエ征爾×山内圭哉が語る音楽劇 「死んだかいぞく」──“死”を受け入れ“生”の起源を辿る (2/2)

子供は結局、怖いものに興味がある

──皆さんは子ども時代、「これはインパクトを受けたぞ!」という作品はありますか?

山内 年齢が離れた兄貴が、よく映画に連れて行ってくれたんですよ。「エクソシスト」を観て……もう恐怖で泣き叫びましたね。

一同 (笑)。

山内 騒ぐとつまみ出されるから、兄貴に口を抑えられながら観ました。

山内圭哉

山内圭哉

下田 僕もあの映画は衝撃でした!

ノゾエ 僕は「グレムリン」が発狂するほど怖くて、「これ、キャパ超えてるよ」と思ったなあ(笑)。

下田 子供は結局、怖いものに興味がありますからね。「サスペリア」も震えながら観た記憶がありますけど、同時に「キレイだな」とも思ったし。

山内 ホラー映画で免疫がついていたせいか、お祭りの見せ物小屋で蛇女を見ても「意外と蛇、ちっちゃいねんな」と、ちょっとガッカリしたもんな。もっとすごいもんが出てくると思っていたから。

ノゾエ 4・5歳の子供にそんなこと言われたら、蛇女もショックでしょうね……。

ノゾエ征爾

ノゾエ征爾

──話題が「子供の頃の恐怖体験」になってきましたが(笑)、大人が勝手にこしらえてしまった“検閲”では遭遇できない、未知なる経験も大切ですものね。

下田 例えば子供がトイレに行くのが怖いのって、暗闇とか、ドアの向こうに非日常の何かを想像しちゃうからだと思うんですよね。小さい頃にはそういった、さまざまな見えない世界の層が重なったところに生きていたのに、大人になった途端にすべてが平たくなるのって、なんてつまらないんだろう、と思うんです。怖いとおもろいが半分ずつあるような瞬間とか、人は多種多様なものを自分の箱に入れて成長していくことが大切なんじゃないかなあ。この絵本を通して、子供は死に対しても、大人が想像しているよりもタフだということも発見できましたし。

下田昌克

下田昌克

山内 きっとこの作品を観た帰り道には、親子で感想を話し合いたくなると思うし、普段はできないような深い話にもなると思うんですよ。そういった部分でも、お客さんを刺激できる作品にしたいです。

ノゾエ むしろ親御さんが前のめりで「楽しむぞ!」という気持ちで来てくれたらうれしいですよね。

山内 いやもう、たくさんの方々に来てもらわんと困るんですよ。劇場で、何かバラまいたらいいんかな。

一同 (笑)。

山内 いやでも、稽古開始が本当に楽しみですよ。絶対クリエイティブな稽古場になるし、僕も50歳を過ぎて過去を振り返ると、未知数なことが多い現場はどれも楽しかった。残りの役者人生、そうした現場をあといくつ経験できるかはすごく大きいですね。子供だけではなく、大人も新鮮な体験が大切なんです。

左から下田昌克、山内圭哉、ノゾエ征爾。

左から下田昌克、山内圭哉、ノゾエ征爾。

プロフィール

下田昌克(シモダマサカツ)

1967年、兵庫県生まれ。画家、アーティスト。1994年から2年間、中国、チベット、ネパール、インド、ヨーロッパを巡り、出会った人々のポートレートを描く。その後、イラストや絵本などの創作活動とともに、布を使った恐竜作品の制作も行う。2018年のメンズコレクションのショーにてコム デ ギャルソン・オム・プリュスにそのヘッドピースが採用され、パリコレに恐竜が登場した。主な著作に「PRIVATE WORLD」(山と渓谷社)、「恐竜がいた」(スイッチパブリッシング)など。近著に「よるがやってくる」(こぐま社)、詩人 谷川俊太郎との共作「ハダカだから」(スイッチパブリッシング)がある。宮本亜門演出「ピノキオ~または白雪姫の悲劇~」では舞台美術、ノゾエ征爾演出「ボクの穴、彼の穴」では衣裳・小道具デザインを手がけた。

ノゾエ征爾(ノゾエセイジ)

1975年、岡山県生まれ。脚本家、演出家、俳優、劇団はえぎわ主宰。1999年にはえぎわを始動以降、全作品の作・演出を手掛ける。2012年、はえぎわ公演「○○トアル風景」にて、第56回岸田國士戯曲賞受賞。またさいたまスーパーアリーナで約1600人の高齢者が出演した大群集劇「1万人のゴールド・シアター2016」の上演、松尾スズキ原作の絵本を舞台化した「気づかいルーシー」なども手がける。近年の主な演出作品に「物理学者たち」「明るい夜に出かけて」「ガラパコスパコス~進化してんのかしてないのか~」、はえぎわ×彩の国さいたま芸術劇場「マクベス」などがある。9月に「ボクの穴、彼の穴。W」(翻案・脚本・演出)、11月より「ロボット」(潤色・演出)が控える。

山内圭哉(ヤマウチタカヤ)

1971年、大阪府生まれ。俳優、ミュージシャン。笑殺軍団リリパットアーミー、Piper、福田転球とのユニット・2cheat、新ロイヤル大衆舎などで活動。近年の主な舞台にCOCOON PRODUCTION 2023「パラサイト」、ケムリ研究室no.3「眠くなっちゃった」、「モンスターコールズ」など。2025年2月に新ロイヤル大衆舎×KAAT神奈川芸術劇場 vol.2「花と龍」に出演、音楽も担当する。