「埼玉回遊」近藤良平と“回遊先”メンバー座談会

近藤良平が埼玉県内の25箇所の“回遊先”を巡り、人と文化の営みに出会う「埼玉回遊」が、2023年4月の始動から約1年、ショートフィルムと舞台として、1つの区切りを迎える。「埼玉回遊」は、近藤が芸術監督を務める彩の国さいたま芸術劇場が、2023年10月からリニューアル工事のため約1年半休館することを受けてスタートしたプロジェクトで、2023年春に回遊先を“他薦”で募集し、そこから選出された25の回遊先を、近藤が夏から秋にかけて劇場スタッフらと共に巡った。その様子は「埼玉回遊」特設サイトにてドキュメンタリーとして紹介されているほか、回遊先で出会った人やものが登場するショートフィルム「モドキとヤギのあてどない旅」が劇場公式YouTubeチャンネルにて順次公開されている。

ステージナタリーでは「埼玉回遊」の回遊先の1つでショートフィルムにも出演する、川越鳶組合 木遣保存会の頭取・鈴木英明、川越で神楽を実践する梅鉢会主宰の白石信人、埼玉を拠点にする怪談師・北城椿貴に集まってもらい、近藤と共に「埼玉回遊」を振り返るほか、自身の活動について語ってもらった。なお「埼玉回遊」は3月9・10日に「埼玉回遊〈特大号!〉 ~風と土地のロマンス」として彩の国さいたま芸術劇場 大ホールでのステージを予定している。近藤にはその構想についても聞いた。

取材・文 / 熊井玲撮影 / 藤記美帆

普段接する機会がない人たちからにじみ出るものと出会いに

──「埼玉回遊」の構想は、2022年に行われた近藤さんの彩の国さいたま芸術監督就任会見(参照:彩の国さいたま芸術劇場の新芸術監督・近藤良平が掲げるテーマは、“クロッシング!”)ですでに発表されていました。最初からこのような企画になる、というイメージがあったのでしょうか?

近藤良平 いや、なかったですね。そもそも「埼玉回遊」のアイデアは、劇場がリニューアル工事によって一時期使えなくなるため、劇場に来てもらう形ではなく自分たちが劇場から出ていく、皆さんの元を訪れる行動をしたい、という思いから生まれました。人から人へとつながっていく広がりがいいなと思い、自薦ではなく他薦で挙げてもらう形をとって、最終的に123の候補が集まりました。その中から、劇場のスタッフと相談しながら25箇所をピックアップしていき、埼玉は東部、西部、北部、秩父、中央と5つの区分があるんですが、それぞれの地域を訪れることになりました。

「埼玉回遊」メインビジュアル

「埼玉回遊」メインビジュアル

──回遊先には藍染の工場や川魚の水族館、足袋メーカー、彫刻家、面師、チェンバロ工房、秩父屋台囃子、創作書道家、竹間沢車人形保存会、秩父銘仙、ブルーベリー農家……など、多彩な仕事をしている場所や人が選ばれました。どのような点をポイントに、25箇所の回遊先を選ばれたのでしょうか?

近藤 直感……の部分もあるけれど、できれば役者とか音楽家といった、劇場で行われるようなことに“携わっていない人”がいいなと思いましたね。例えば梨農園の農家さんとか、ブルーベリーを作っている人とかは、直接的には劇場と接点がない。そういった、普段なかなかお会いできない方たちからにじみ出てくるものがきっとあると思ったので、そういった方たちと会いたいと思ったんです。

──“他薦”された皆さんは、どんなふうにお感じになりましたか?

鈴木英明 私は川越鳶組合 木遣保存会のメンバーで、保存会では毎月3日ずつ稽古をやっているんです。あるとき、埼玉県立歴史と民族の博物館の元学芸員で斉藤修平さんという方から「木遣の稽古を近藤監督と一緒に見学したい」とご連絡がありました。斉藤さんには、先代の頃に木遣のCDを作った際、お世話になったのですが、稽古の前日だったか、「スタッフも含め、15、6名伺います」と再度連絡があり、「え? そんなにたくさん? なんで?」と(笑)。それに彩の国さいたま芸術劇場というと蜷川幸雄さんのイメージが強かったので「怖い監督が来るのかなあ」と思っていたら、“こんな感じ”(と近藤に目線を向けて)の方で(笑)。最初は監督だと思わず、名刺交換をして驚きました。稽古にいらしたときの近藤さんは、木遣の稽古の真ん中で踊り出すんじゃないかというような雰囲気でしたね。

白石信人 うちは川越でお神楽をやっております。神楽って今や絶滅危惧種で、お能と間違えられたり、「そんなのあったんだ」と言われているような状況なので、お神楽についてどんどん広めていきたいなと思っているところでした。そんなときに監督がいらしてくださることになり、この機会に少しでも神楽のことを皆さんに知っていただけたらと、ありがたく感じました。

北城椿貴 私は普段はIT企業の会社員、土日は怪談師と作家業をしております。今回、友人が私に言わないままに推薦してくれて“寝耳に水”とはこのことだなって(笑)。怪談は文化とか伝統というよりもエンタメのイメージが強いのではと思っていましたが、私が普段、歴史にちなんだ怪談を多く扱っているせいか、怪談を文化という目線で切り取っていただけたのはうれしかったです。

左から川越鳶組合 木遣保存会の鈴木英明、梅鉢会主宰の白石信人、怪談師・北城椿貴、近藤良平。

左から川越鳶組合 木遣保存会の鈴木英明、梅鉢会主宰の白石信人、怪談師・北城椿貴、近藤良平。

──近藤さんが皆さんとお会いになったときの印象は?

近藤 木遣は、一番最初の回遊先だったので、実はけっこうな緊張を伴っていきました。隣町の怖いお兄さんたちに会いに行く感じで……(笑)。特設サイトでは訪問先でのミニドキュメンタリーも紹介しているのですが、そのときの緊張した様子が映っています(笑)。神楽は、川越の稽古場がまず面白くて。白石さんが主宰する梅鉢会の稽古場は、表は刃物屋さんなんですけど、その脇を抜けていくとタイムトリップするような仕掛けがあり、空気が変わるんです。で、古い引き戸を開けてさらに地下に降りていくと、いろいろなお神楽の面なんかが置いてあり、その奥に舞台があって、秘密結社という印象。稽古も見せてもらったんですが、ちょうど夏の手前くらいにお邪魔したのと、地下だから異様に暑かった!(笑) でも皆さん、稽古着などではなく、ちゃんと衣裳を着ていらっしゃるからさらに暑そうで。その“本気度合い”というか、「完全なものをやっている」という並々ならぬエネルギーにグッと心をつかまれました。稽古後にはグッと飲まされもしましたけど(笑)。

一同 あははは!

近藤 北城さんとは……何という講演会でしたっけ、僕の部屋にもあのときの資料が貼ってあるんですけど……。

北城 源範頼という、埼玉県の北本市にまつわる武将がいまして、その範頼にまつわる講演会の講師を、私がしたときですね。

近藤 そうだそうだ。その講演会を聞きに行って、そのあと、北城さんとお話しする時間がありました。講演会での北城さんは“怪談師然”としているっていうか、和服での立ち居振る舞いも語り口も素敵だなと思いました。でも平日はIT企業で会社員をしていると聞いて、謎めいた人だなと思いましたね。

北城 普段はデータ解析などの仕事をしております(笑)。

木遣、神楽、怪談……活動のきっかけは?

──回遊先の皆さんのこと、とても気になってきました! 皆さんはどのようなきっかけで現在の活動をすることになったのでしょうか? 鈴木さんは普段は建築事務所の社長さんで、川越木遣保存会の頭取というお立場です。

鈴木 私の家は代々鳶で、私が4代目なんですね。なので、中学生くらいから現場にかり出されてコンクリート打ちを手伝う、ということをやっていたんですが、コンクリート打ちにいくとその時期の成績が下がったりして(笑)。そもそも鳶は、何もない原っぱから仕事が始まりますから、真夏は暑いし、冬は寒いしで大変な仕事。ということもあり、私は勉強して資格を取りまして、26歳で設計事務所を始めました。設計事務所を始めたときに鳶組合にも入り、木遣会では下積みを経て木遣やはしご乗り、纏(まとい)ふりといろいろ修行し、木遣保存会の会長を経て、昨年、頭取になりました。

──鳶組合に入ると、皆さん木遣をやることになるのですか?

鈴木 そうですね、組合に入った時点で木遣を始めます。ただ個人の資質もあるので、ある程度様子を見ながら木遣を続けられる人を集めて、保存会は運営されています。

川越鳶組合 木遣保存会の、木遣の稽古の様子。(撮影:湯越慶太)

川越鳶組合 木遣保存会の、木遣の稽古の様子。(撮影:湯越慶太)

川越鳶組合 木遣保存会の、木遣の稽古の様子。(撮影:湯越慶太)

川越鳶組合 木遣保存会の、木遣の稽古の様子。(撮影:湯越慶太)

──木遣保存会は普段、どのようなスケジュールで活動しているのですか?

鈴木 まず年末に山に行って、太さや節の状態を見ながら竹を切ってきて、はしごを作ります。昨年はクリスマスにみんなで集まってやったんですけど(笑)、1月7日に八幡様(川越の八幡神社)で祈願して、祈願後すぐに八幡様の境内で奉納はしご乗りをしました。その後、通常だったら出初式に行くんですけど今年はなかったので、そのまま鳶組合の新年総会に行き、そこでもはしご乗りをしました。あとは、通常だと3月に「小江戸川越春まつり」オープニングイベント、11月に「かわごえ産業フェスタ」に参加するので、年4回くらい活動の機会がありますね。するともうその年に作ったはしごはよれてきたり弱ってきたりして使えなくなるので、年末にまた次の年用のはしごを作る、という流れです。ちなみにその使えなくなったはしごは、八幡様の境内に7対5対3の長さに切って埋めて、はしご乗りの練習に使います。が、冬の境内は本当に寒くて、私なんかは身体を動かさず稽古を見る立場なので、本当に寒くてつらいんですよ……(笑)。

──白石さんは、川越で里神楽を実践する梅鉢会の主宰で、神楽師です。

白石 私はもともと小さい頃から川越まつりが好きで、太鼓を打ったり踊ったりしていたのですが、あまりに好きすぎて、そのうちおかめやひょっとこの面をつけて踊る神楽をやっている人にも興味を持つようになり、二十歳頃、踊りを教えてくれる竹間沢神楽の師匠のところに弟子入りしました。その後、15年目くらいに先生に「自分の会を作っても良いか」とご相談したところお許しをいただいて、梅鉢会を立ち上げました。ちなみにうちの先生は三芳町の方で、調べていくと、竹間沢神楽は川越藩の“お抱え神楽師”だった前田筑前社中に伝わった神楽なんです。お抱え能楽師というのはよく聞きますが、お抱え神楽師って珍しいですよね。そんな背景があります。

──梅鉢会には今どのくらいのメンバーがいるんですか?

白石 昨年末にちょっと増えまして、26人くらいですね。小学5年生と、三十代の女性が入りました。

──新しく入られる方は、皆さんの活動を見て興味を持たれたのでしょうか?

白石 メンバーの6割くらいは、川越でもともとお囃子や踊りをやっていた子たちですね。それ以外は、川越に観光で来て、川越まつり会館(編集注:川越まつりに登場する本物の山車が2台展示されているほか、川越まつりに関する資料が展示されている)を訪れて、山車の上で踊るのがカッコいいと思った人や、私が「埼玉回遊」のショートムービーでも舞っているモドキを踊ってみたいと思った方たちなどです。

近藤 川越まつりの山車の上でやられる踊りは、みんな誰から習うんですか?

鈴木 それぞれの流派があって、その流派の先輩から習うんですよね。

白石 そうです。王蔵流、芝金杉流、堤先流と大きな3つの流派があって、それぞれリズムや舞が違います。昔はお金持ち衆がそれぞれ山車を持っていて、農村部から神楽師を呼んできて踊ってもらう、という仕組みでした。ちなみに私たちも現在、川越だけじゃなく東京や千葉、神奈川に呼ばれて、それぞれの土地の神社でも舞っています。

梅鉢会の、神楽の稽古の様子。(撮影:湯越慶太)

梅鉢会の、神楽の稽古の様子。(撮影:湯越慶太)

鈴木 そういうときはお弟子さんを引き連れて行くんですか?

白石 そうですね、10人くらいで行きます。

近藤 不思議なネットワークだなあ(笑)。

──北城さんは平日は会社員、土日に怪談師の活動をされています。

北城 10年ぐらい前、唐突に「『百物語』を体験したい」と思ったんですよ。「百物語」は怪談を100話語り、1話語るごとにろうそくの火を1本ずつ消し、最後の1本の火を消したときに怪奇現象が起きるとされているイベントで、そのとき検索したら偶然1件ヒットしたので、怪談作家さんがやっている「百物語」に参加することになりました。参加者は40人くらい、19時くらいから明け方まで語り続けるんですが、私の話がそのとき一番怖がられて。実はまともに怪談を語るのはその時が初めてだったのですが、「本当に怖かった」と参加者の方が何人かわざわざ私のところに来て感想を言ってくれるほどだったので、自分でも驚きました。それから何年かして、その会の主催者からご連絡があり、「自分の怪談会で特に怖かった6名に声をかけて本を出すことにした」と言われて、急に怪談作家デビューすることになりました(笑)。ただ当時は特に怪談好きというわけではなく、必要に駆られて語っている状態だったので、どうせやるなら好きなことと組み合わせてみようと思い、歴史が好きだったので歴史や土地と掛け合わせた怪談を語るようになったところ、年内に「歴怪」という、私の主催する歴史にまつわる怪談会の書籍版を出させていただくことになり、講演会にも講師として呼んでいただけるようになりました。

──なるほど、そこから現在のスタイルになったんですね。

北城 歴史にまつわる怪談や都市伝説って奥深くて掘り下げがいがあるんです。例えば長野県の小諸城には女性や子供しか入れない隠し通路があり、大久保長安というお金が大好きな武将がお金を隠していたという説がある……とか、埼玉県吉見町にある吉見百穴もそうですが、日本のあちこちの古墳で赤い服を着た謎の女の子が目撃されていたり……とか。そういったお話を、私が主催する歴史にまつわる怪談を語るイベント「歴怪」ではお話ししています。

北城椿貴の講演会の様子。(撮影:湯越慶太)

北城椿貴の講演会の様子。(撮影:湯越慶太)

──怪談師という肩書きで活動されている人は、現在多いのでしょうか?

北城 稲川淳二さんが有名ですが、コロナ禍でYouTubeで配信する怪談系YouTuberが出てきたこともあり、近年爆発的に増えましたね。

近藤 北城さんはYouTubeをやったりはしないんですか?

北城 私はあまり投稿してないですね。歴史にまつわるスポットは楽しいから行きますが、心霊スポットとして訪問したり紹介したりというのは避けています。どちらかというと講演会などを通じて、地域の方と話したいということもあって。

近藤 なるほど、確かに聞き手とリアルに接したいという気持ちはわかります。

「〈特大号!〉」は“はじまり”を感じられるようなものに

──25カ所を回られて、近藤さんの埼玉に対する印象が変わった部分はありますか?

近藤 確実に東京とは違う感じがしましたね。あと、彩の国さいたま芸術劇場がある与野本町もそうですが、意外と土や水が身近にある場所が多いと感じます。ただ、エリアとしては埼玉は広すぎて、一言でまとめるのは不可能に近い感じがします。古いものもたくさん残っているし、気候が違えば文化も違うので……だから「埼玉は広い!」という印象が一番強いです。

──ショートフィルム「モドキとヤギのあてどない旅」についても教えてください。“はじまりの場所(さきたま古墳)”で目覚めたモドキが、隣にいたヤギと共に旅に出るというストーリーで、1月末の段階で序章と「水」「風」の章、そしてこのあと「地」「火」「空」の章が公開されます。

近藤 3月に上演する「埼玉回遊〈特大号!〉 ~風と土地のロマンス」もそうですが、偶然の出会いがだんだんと明晰になっていく、というイメージを持っています。白石さん演じるモドキは自分が誰なのかわからなくなり、偶然出会ったヤギと共に旅をする、というストーリーはありますが、あのヤギもペットショップから借りてきたものではなく(回遊先の1つである)熊谷市のソーシャルファーム・埼玉福興で飼っているヤギですし、モドキが履いている足袋や着ている半纏も回遊先として訪れた場所で作られたものなんです。というように、ストーリーを重視して作るというより、回遊先で出会ったものをつなげたら面白いかなという感じで、どんどんイマジネーションが広がっていきました。またショートムービーではそれぞれの風景が映し出されるので、それぞれの土地が匂い立つような映像にしたいなと、映像演出・撮影の湯越慶太さんとお話ししながら決めていきました。

「水の章」より、モドキ(左)とヤギ。(撮影:宮川舞子)

「水の章」より、モドキ(左)とヤギ。(撮影:宮川舞子)

──鈴木さん、白石さん、北城さんはそれぞれ普段とは違うシチュエーションに置かれての撮影、どんなお気持ちで臨まれましたか?

鈴木 私は滑川町という場所での撮影だったのですが、坂道を降りて行った先にある沼のほとりで木遣をしました。風がある日で、風で木がざわざわざわといい、落ち葉がパラパラパラーっと落ちてきて、その木々の音と木遣の声が混ざり合って……。

近藤 そう、風がいいんですよ! 木遣の皆さんには“妖精”のイメージで、とお伝えしたんですが、木遣の声に木が共鳴しているような感じで面白かったですね。

鈴木 私も初めての経験でしたので楽しかったです。普段私たちは、ホールの中など、無機質なところでマイクを使ってやることも多いので、ああいう場所は新鮮でしたね。

北城 私は熊谷市の利根川沿いの河川敷での撮影でした。ヤギやザリガニと共演するのは初めてですし(笑)、ザリガニが前を向くのを待つシーンなどもあって面白かったです。「風の章」というタイトルでしたが、風がちょうどいい感じに吹いていて、晴れていて、(埼玉県さいたま市の)大宮には氷川神社がありますが、神様がこういう機会を与えてくれたのかなと思うほどいい日でした。

近藤 映像でもわかりますが、利根川には葛和田渡船場があり、地の果てというか、“縁感”がちょっとあるんです。そんな場所でぶつぶつ言っている北城さん、すごく面白かったです!

ショートムービー「風の章」より。

ショートムービー「風の章」より。

──白石さんはショートムービー全編を通してモドキを演じています。

白石 神楽のモドキというのは、シリアスな場面の途中で、「今神様はこういうことをやっていたんですよ」とストーリーを伝えたり、見ているお客さんを和ませたりと、肩の力をふっと抜いてもらえるような役どころなんですが、今回映像の中で私が演じているのも、まさに神楽のままのモドキです。

近藤 「火の章」(2月中旬公開予定)で、モドキ2人が酒を飲み交わすところ、あの仕草や手の動きが素敵だな、さすが師匠!と思いました。

白石 ありがとうございます(笑)。

──ヤギとモドキの、言葉を介さないやり取りも印象的でした。

白石 ヤギが可愛くて、本当にヤギを飼おうかと思いました(笑)。

──3月「埼玉回遊〈特大号!〉 ~風と土地のロマンス」は、「埼玉回遊」の集大成として、彩の国さいたま芸術劇場 大ホールにて2日間にわたり披露されます。どのような内容になりそうでしょうか?

近藤 僕もドキドキしていますが、皆さんが一番ドキドキしているかもしれませんね(笑)。埼玉のあちこちで出会った人やものに登場していただくのですが、ただ各地の伝統や特色を紹介するだけでなく、モドキにしろ木遣にしろ怪談にしろ、実際に触れてもらいたいなって。ほかにも、ダンサーの人たちにも出てもらう予定ですし、演劇やダンスだけをやってきた人が「何だこれは!?」と思うような部分があっていいものにしたいなと思っています。またこの「〈特大号!〉」が彩の国さいたま芸術劇場のリニューアルオープンを記念したものにもなるので、“はじまり”を感じられるような作品にしたいと思っています。

左から川越鳶組合 木遣保存会の鈴木英明、梅鉢会主宰の白石信人、怪談師・北城椿貴、近藤良平。

左から川越鳶組合 木遣保存会の鈴木英明、梅鉢会主宰の白石信人、怪談師・北城椿貴、近藤良平。

プロフィール

近藤良平(コンドウリョウヘイ)

振付家、ダンサー。1996年にダンスカンパニー・コンドルズを旗揚げ。全作品の構成・映像・振付を手がけるほか、大学でのダンス指導や、0歳児からの子供向け観客参加型公演、埼玉県と取り組んでいる障害者とのダンス公演・ハンドルズの活動など幅広く活動。第4回朝日舞台芸術賞寺山修司賞受賞、第67回芸術選奨文部科学大臣賞受賞、第67回横浜文化賞受賞。2022年4月より、埼玉・彩の国さいたま芸術劇場 芸術監督に就任。

鈴木英明(スズキヒデアキ)

川越鳶組合 頭取、木遣保存会 前会長。構造設計一級建築士。

白石信人(シライシノブト)

神楽師。川越の神楽社中・梅鉢会主宰。

北城椿貴(キタシロツバキ)

怪談師。2020年頃から怪談作家、怪談師として活動をスタート。怪談イベント「歴怪」主催。著書に「高崎怪談会 東国百鬼譚」(共著 / 竹書房)ほか。