PARCOプロデュース「プレイハウス」根本宗子×磯村勇斗×松隈ケンタ|GANG PARADEと挑む異色ミュージカル、常識をぶち壊す最高の“遊び場”

10個のいいところを探す

──根本さんは今年10周年を迎えた月刊「根本宗子」を軸に、磯村さんは俳優としてさまざまな現場で活躍され、松隈さんはサウンドチーム・SCRAMBLESを率いて音楽制作をされています。集団でもの作りをすることへのこだわりについて教えてください。

磯村勇斗

磯村 特別なこだわりはないですね。舞台も映画もドラマも、もちろん1人ではできないので、みんなで1つの目標に向かって作っていくというのは、どの現場でも変わらない。今回もギャンパレさんとのW主演ではありますが、主演だからといって「俺についてこい!」みたいなこともないですし、全員で高め合えればいいなと思います。

根本 演劇は毎回座組が違いますし、新しい人たちと一から空気を作っていく中で、自分はどういうふうにいたら、いい雰囲気で進めるかは考えます。今回、稽古が始まる前、松隈さんのディレクションを見られてよかったと思っていて。松隈さんは、メンバーのいいところをすごく丁寧に褒めるじゃないですか。それって大事だなと改めて思いました。稽古が佳境になってくると、私は褒め忘れるんですね。「ここを直して」って悪いところばかりを指摘しなきゃいけなくなってきて、気持ちもどんよりしてくるんですけど。自分が俳優として出てるときも「そこよかったよ!」と言われると、ちょっと肩の荷が降りたり、「じゃあもっとやってみよう!」ってなるので、ギャンパレにも「もっとやっていいんだ!」と思ってもらえるよう心がけたいです。

松隈 特別褒めている感覚はないんですが、「それ、いいね!」だけで埋め尽くして、その子の歌のいい部分や個性をどんどん拾ってあげたいと思っていて。1曲の中で1人につき10個のいいところを探すんです。「はい、スタート!」で歌ってもらって、「今のよかった!」と加算していく。10ポイント取れたら「OK!」っていう感じで。なかなかポイントが取れないときは違うところを歌わせたり、歌い方を変えてもらったり。でも、この作り方はレコーディングだからできることかもしれないですけどね。

根本 その作り方が本当は演劇でもできればいいんですが、そうすると、毎日のようにセリフを書き換えないといけないんですよね。「このセリフはこの子に振ったほうがいいな」みたいになると、台本がいつまでも定まらない。製作期間が3カ月くらいあればできるかもしれませんけど。

松隈ケンタ

松隈 なるほど。根本さんの話を聞いていて、すごいなと思ったのは毎回違う人たちと組まれていることですね。僕はずっと同じチームで積み重ねてきたから、そこは大きく違うなと。

──磯村さんは褒められたほうが伸びるタイプですか?

磯村 もちろん褒められたらうれしいですが、ダメ出しのほうがいいですね。褒められるとそこで満足してしまうので。ダメ出しをいただくと悔しくはあるんですが、そのぶん、2倍・3倍努力して作っていこうというエネルギーが生まれるので。

根本 私が稽古で褒めているのはギャンパレだけなんですよね(笑)。

磯村 俳優陣は一切褒められないですね(笑)。

根本 ギャンパレのみんなは本来女優さんをやりたいわけじゃないでしょうし、今回はアーティストとして舞台に出るので、まずは「演技するのが楽しいな」って思ってほしいんです。

「こんなに面白い人たちがいるんですよ!」と伝えたい

──「プレイハウス」のチラシには「ようこそ、みんなの遊び場、新宿歌舞伎町プレイハウスへ。」と書かれています。実際に東京芸術劇場のプレイハウスで上演されるわけですが、この広い劇場空間をどんな“遊び場”にしていきたいですか?

磯村 まずはいかにお客さんに楽しんでもらえる空間にできるかが勝負かなと。そのうえでいろいろ感じてもらえたらうれしいですね。僕自身、今まで挑戦したことがないタイプの作品なので難しさもありますが、未知のゾーンに足を踏み入れることをためらわず、楽しんでいけたらと思います。

根本宗子

根本 “遊び人”(ギャンパレファンの呼称)の方々にも、もちろん観てほしいですが、私自身がギャンパレのファンだからこそ、この作品で初めてギャンパレを知る人たちに、「こんなに面白い人たちがいるんですよ!」と伝えたい。勝手ながら、そんな気持ちを込めて作っています。そして「これは、お前のことだぞ!」って急に胸ぐらを掴まれる感覚がお客さん1人ひとりに残ればいいなと思います。

松隈 僕は自分の作った音楽をミュージカルに使っていただけるというのが、まず超楽しみです。演劇的には素人のギャンパレが、いい意味で空気を読まず、無茶苦茶やってほしいですね。実は僕も演劇作品の音楽制作や、舞台に立った経験があったりするんですが、演劇ってちょっと“凝り固まってる人”が多いなという印象もあって。演劇界の常識やルールみたいなものってなんとなくあるじゃないですか。

根本 たいして守らなくていい場合も多いですけどね(笑)。

松隈 そうですね(笑)。だから、この「プレイハウス」では、常識や固定概念をぶち壊してほしいんです。根本さんは新しいタイプの演出家ですし、根本さん、磯村さんがきちんと基盤を作ってくださると思うので、ギャンパレの10人が枠をはみ出して、大暴れしてくれたら最高の“遊び場”になると思います。

左から磯村勇斗、根本宗子、松隈ケンタ。