道頓堀に石油が湧いた! そんな奇想天外な発想から生まれた高遠響の代表作「大阪は踊る!」が10月、大阪松竹座で舞台化される。大阪市役所“どないしょう課”職員・前田拓郎を演じるのは、大阪松竹座とゆかりの深い浜中文一。前田は、石油が湧いて大張り切りの大阪市長による大阪再生プロジェクト・道頓堀油田開発計画や、政府による油田差し押さえ計画、真実を追求しようとするメディア、さらに街の人たちに翻弄され……。
万博で賑わう大阪の熱気をそのまま舞台に流し込むかのような、賑々しい舞台になること間違いなしの本作に、キャストはどのような思いで臨むのか。浜中のほか、キャストの有沙瞳、松本梨香、長江健次、前田耕陽、大鳥れい、曽我廼家寛太郎、脚本の江頭美智留がそれぞれの思いを寄せた。さらに、演出の川浪ナミヲのインタビューも掲載している。
構成・[川浪ナミヲ インタビュー]取材・文 / 熊井玲
浜中文一(大阪市役所“どないしょう課”職員・前田拓郎)
──原作や台本をお読みになって印象に残ったシーンやセリフ、あるいは全体の印象はありますか。
大阪の象徴でもある、道頓堀に油田があったら、まさにこれくらい大阪の人達は盛り上がるんだろうなと感じました。
あとは、関係各所のドタバタが綺麗に描かれていてとても楽しい展開になっているなと思いました。
──ご自身が演じられるお役の印象を教えてください。どんな人物なのか、観劇されるお客様が親しみを感じられるようなポイントを教えてください。
真面目な頑張り屋さん。街の皆さんのために働くのに向いてる性格で、頼りがいがありそうでなさそうで、でもひたむきに頑張っている。故にあっちいったりこっちいったりとバタバタとなってしまう。
たぶん夜はぐっすり眠ってます。
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。あなたが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うものや場所と、その理由を教えてください。
最初は人柄や言葉遣いがキツく感じるとは思いますが、内心はめっちゃ親切心があります。
だから慣れると大阪にいたくなるはず。
大阪にいくなら、ひとつきは滞在してください。
おもろいので。
プロフィール
浜中文一(ハマナカブンイチ)
1987年、大阪府生まれ。「50Shades~クリスチャン・グレイの歪んだ性癖~」にて舞台初出演。近年の主な出演舞台に「犬神家の一族」「ダブル・トラブル」「レオポルトシュタット」「午前0時のラジオ局」など。2023年に「わが街、道頓堀~OSAKA1970~」にて大阪松竹座開場100周年記念公演の掉尾を飾った。
浜中文一町内会 (「浜中文一オフィシャルサイト」&オフィシャルファンクラブ「浜中文一町内会」)
有沙瞳 (テレビリポーター 麻生直美)
──原作や台本をお読みになって印象に残ったシーンやセリフ、あるいは全体の印象はありますか。
台本を読ませていただき、タイトルの「大阪は踊る!」の通り、とても明るい雰囲気を感じました!
ファンタジーなところもあり、その中にもそれぞれの役のキャラクターがしっかりと存在し、個性的で、素敵な作品だなと感じました。
また、私は今回テレビリポーター麻生直美役を演じさせていただくのですが、劇中に出てくる「真実を伝えたい」というセリフはとても印象に残りました。
──ご自身が演じられるお役の印象を教えてください。どんな人物なのか、観劇されるお客様が親しみを感じられるようなポイントを教えてください。
リポーターとしての仕事に信念を持っており、人としても芯がしっかりある、カッコいい女性という印象があります。
行動力がとてもあり、周りを元気にするところも感じられて……。
いろいろなところに突撃していく仕事に対して真っすぐに向かっていく麻生直美の姿を是非ご覧いただきたいなと感じます。
そして彼女の芯の強さは仕事だけでなくプライベートでも……なところも見どころです。
「大阪は踊る!」というタイトルでもあるので皆さんがどこで踊るを感じるのかも見どころの一つだと思います。
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。あなたが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うものや場所と、その理由を教えてください。
人情! みんな友達!
お節介と思われてしまうところもあるのかもしれませんが、絶対裏切らないといいますか、人情深い方達ばかりだと思います。
関西ならではの美味しい食べ物もたくさんあるので。私は塩たこ焼きにはまってます(笑)。
1人でも多くの方に、大阪、そして関西が好きになってもらえたらうれしいなと思います♪
プロフィール
有沙瞳(アリサヒトミ)
三重県生まれ。2012年、宝塚歌劇団に98期生として入団し、宙組公演「華やかなりし日々 / クライマックス」で初舞台を踏む。2013年より雪組に配属、2016年に星組へ組み替えした。2023年に宝塚歌劇団を退団。近年の舞台出演作に「七色いんこ」「初笑い!松竹新喜劇 新春お年玉公演」「ボニー&クライド」「M FESTIVAL」など。
松本梨香(内閣官房長官 藤木玲子)
──原作や台本をお読みになって印象に残ったシーンやセリフ、あるいは全体の印象はありますか。
道頓堀から石油が湧くなんて、あり得ないようで、でも「もしかしたら本当にあるかも?」と思わせてくれる力がこの物語にはあるんですよね。どこか夢のようなお話なんだけど、だからこそリアルに感じる部分もあって。
奇跡って、派手な出来事だけじゃなくて、実は日常の中にもあるもの。そんな小さな奇跡に気づけるかどうかで、人生って全然違ってくるので、大切にしたいと思います。
──ご自身が演じられるお役の印象を教えてください。どんな人物なのか、観劇されるお客様が親しみを感じられるようなポイントを教えてください。
私が演じる玲子は、内閣官房長官というとても責任ある立場にいる女性で、組織で生きていく中で、感情を表に出さないようになってしまった人物。でも、大阪の人たちのまっすぐで人情あふれる心に触れるうちに、本来の自分に気付く。その変化を表現できたらと……。
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。あなたが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うものや場所と、その理由を教えてください。
大阪の人たちって、誰にでもオープンで、すぐに距離を縮めてくれるんですよね。人懐っこくて、温かくて、言葉にユーモアがあって。私自身も、割と人との距離をすぐに縮めたがるタイプなので(笑)。大阪の空気感にとても親しみを感じています。今回の作品をきっかけに、もっと大阪の文化や人柄、街の魅力をたくさんの人に伝えていけたらと思います。
プロフィール
松本梨香(マツモトリカ)
神奈川県出身。「ポケットモンスター」の主人公サトシ役と主題歌を担当したほか、仮面ライダーシリーズ初の女性ボーカルとして主題歌を担当。絵本やエッセイの執筆、音響監督、演出なども手がけ、クールジャパン・エグゼクティブディレクターとして、日本のエンタテインメントを国内外に発信している。
🌈✨松本梨香✨🌈 (@rica_matsumoto3) | X
長江健次 (拓郎の上司 広瀬康夫)
──原作や台本をお読みになって印象に残ったシーンやセリフ、あるいは全体の印象はありますか。
最初に台本を読んだとき、“道頓堀に石油が湧くって、どんな話やねん!”って思いました(笑)。
でも読み進めるうちに、これはただのコメディじゃなくて、大阪の人たちの誇りや絆、そして“負けへん魂”がぎっしり詰まった物語やと感じました。東京に負けへんように必死です(笑)。
どんな状況になっても、団結して、なんとかしようとする。笑いながら、でも本気で守ろうとする姿が、めちゃくちゃ大阪らしくて。
笑ってるうちに、ちょっと胸が熱くなる。そんな舞台です。
観終わったあと、“大阪ってええ街やな”って思ってもらえたら嬉しいです。
──ご自身が演じられるお役の印象を教えてください。どんな人物なのか、観劇されるお客様が親しみを感じられるようなポイントを教えてください。
最初は“なんやこのええ加減な人…”と思いました(笑)。
実はここぞという時にちゃんと役に立つんですよ。
口は軽いけど、心は熱い。大阪の人って、こういう“憎めないけど頼りになる”タイプ、沢山いますやん!! 私の演じる役もそんな人間味あるキャラクターなので本番が楽しみです! 笑って、泣いて、驚いて!全力でお届けしますので、ぜひ劇場で一緒に楽しんでください!
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。あなたが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うものや場所と、その理由を教えてください。
道頓堀や通天閣や十三の風景も好きです。昼も夜も賑やかで、どこか懐かしくて、でもエネルギーがある。
大阪って、ほんまに“人”が魅力やと思うんです。“ノリと勢いと情”がある街なんですよね。“大阪愛”あふれる舞台です。
そんな大阪の街と人々の魅力を、舞台いっぱいに詰め込んでお届けします。
そして“大阪の底力”を感じてもらえたら嬉しいです!知らんけど(笑)!
プロフィール
長江健次(ナガエケンジ)
大阪府出身。バラエティ番組「欽ドン!良い子悪い子普通の子」のフツオ役として注目を集め、イモ欽トリオを結成。その後、俳優としてテレビドラマや映画、舞台に出演するほかプロのスノーボーダーとしても活動している。
前田耕陽(内閣総理大臣 村井賢次郎)
──原作や台本をお読みになって印象に残ったシーンやセリフ、あるいは全体の印象はありますか。
人の心を動かすのは簡単なことじゃないなと、しかし心からこうだと思ったことはなかなかぶれないんだなと……。
──ご自身が演じられるお役の印象を教えてください。どんな人物なのか、観劇されるお客様が親しみを感じられるようなポイントを教えてください。
内閣総理大臣というものすごくえらい役をいただきました。一見冷酷そうに見えますが、実は自分の立場をわきまえて仕事をしている人だと思っています。大阪を嫌っているという役なんですが、本当は大阪の人のストレートな生き方に憧れをいだいている人物だと思います。心の中では大阪の人の自由に自分を表現する姿勢にちょっと憧れているんです。
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。あなたが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うものや場所と、その理由を教えてください。
大阪の好きなところは、冬の御堂筋。夜になると一面がライトアップされてとても綺麗です。僕自身、大阪に暮らし始めたばかりの頃は飲み屋などで出会う大阪のおじさんたちの話を聞いて、みんな怖い人なんじゃないかと感じたこともありましたが(笑)、でもよく知っていくとみんな優しい人たちでした。
プロフィール
前田耕陽(マエダコウヨウ)
東京都生まれ。1988年に男闘呼組としてデビュー。現在は男闘呼組のメンバーを中心にしたバンド「ROCKON SOCIAL CLUB」で活動中。2015年より大阪を拠点に舞台の脚本を書き、自ら俳優として出演する活動も続けている。現在、ラジオ「日曜の午後は耕陽を聴こうよー!」を放送中。
Write my thoughts | 前田耕陽公式サイト(KoyoMaeda Official)
大鳥れい(アメリカ合衆国国務長官エリザベス・フォックス)
──原作や台本をお読みになって印象に残ったシーンやセリフ、あるいは全体の印象はありますか。
原作者の大阪への愛と敬意と親しみが込められているなぁと感じると同時に私も同じ気持ちを持っていることに改めて気付く事が出来ました。これぞ「大阪の良さ」と人と繋がる事の大切さが詰まっていました。
印象に残っているのは自衛隊と大阪府警の睨み合いのシーンでオバチャンが自衛隊の指揮官(敵方)に「あんたら、お腹減ってるやろ?炊き出し食べにおいで」と屈託なく誘うところはおせっかいだけど胸が暖かくなりました。率直でポジティブな感じがたまりません。
──ご自身が演じられるお役の印象を教えてください。どんな人物なのか、観劇されるお客様が親しみを感じられるようなポイントを教えてください。
エリザベス・フォックスはアメリカ合衆国の実質No.2というスーパウーマン。有能な人物である事に間違いなく、肩書きはお堅いけれど若い頃から弱い立場の人達の為に闘い、手を差し伸べる事が出来る人間だったのでは。
要人としてではなくプライベートで古い仲間に会いにタコ焼き屋に足を運ぶ、義理人情に厚く忌憚ないところが可愛らしいと思います。
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。あなたが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うものや場所と、その理由を教えてください。
私は551の蓬莱の豚まんの実演販売を見ながら列に並びます。生地をこねる人→伸ばして皮を作る人→あんを包む人、からの蒸される豚まんの湯気と香りが空腹を誘います。
大阪ならではの血の通ったパフォーマンスにシューマイも買っとこ。となる
この一連の作業を経て口にする豚まんは100倍美味しく感じられます。
タコ焼き屋さんも当然、目の前で焼いてくれますよね。出来てアツアツのまぁるい愛が詰まっているのです。通天閣は高校の文化祭の時にダンボールで制作、出展したほど好きです。本物はレトロな雰囲気を保っていて哀愁が漂ってノスタルジック。いつでもあの頃を思い出します。
プロフィール
大鳥れい(オオトリレイ)
1993年、宝塚歌劇団に入団。1999年に花組トップ娘役に就任。2003年に宝塚歌劇団を退団。その後は舞台を中心に活動している。近年の主な出演作に舞台「花郎~ファラン~」、劇団そとばこまち「幕末」、大阪・関西万博EXPO2025「未来へのOne Step」など。
大鳥 れい|ARTISTS|ACT JP エンターテイメント株式会社
大鳥れいオフィシャルブログ「Rei Ohtori Official Blog」Powered by Ameba
曽我廼家寛太郎 (大阪市長 館山修)
──原作や台本をお読みになって印象に残ったシーンやセリフ、あるいは全体の印象はありますか。
「目の前で困ってる人がおったら全力で力になるのが公務員や!」このセリフはしびれましたね! もちろん、公務員さんに限らず、どんな職業の人でも、全ての人がこんな気持ちになったら、もっと住み良い世の中になるでしょうね! せやけど、道頓堀に石油が湧くやて、めちゃくちゃ夢がありますやん! 世界中から注目を浴びて人やお金が動きまくって……、そりゃ猫も杓子も舞い上がりますよ!
とは言え、算盤を弾きながらも、目先の儲けに振り回されず、人の為に汗流して、人が喜ぶ顔を見て自分も喜ぶ。
やっぱり大阪人はこれでないとね!
──ご自身が演じられるお役の印象を教えてください。どんな人物なのか、観劇されるお客様が親しみを感じられるようなポイントを教えてください。
全身が石油まみれで、ヌルヌル頭を光らせ、狂喜乱舞してる大阪市長役の私が目に浮かびます。大阪生まれで大阪育ち、こよなく大阪を愛する男!これは私自身とぴったり当てはまります。ただ…、女性もこよなく愛するが故に足元をすくわれ墓穴を掘る…(ん~…、これは私とはかけ離れてるような、離れてないような…)
この人のええところは、おだてられたら、やたら頑張るお調子者で、目立ちたがり屋で、そのくせ寂しがり屋で涙もろく、どこか憎めないおっさん、ってとこでしょうか?
そんな人間臭いところを描けられたらなと思います。
「あぁ~、こんなおっさん、おるおる」とか「こんな人に市長になってほしいわ!」とか、チラッとでも思っていただけたら、うれしくてまた狂喜乱舞致します!
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。あなたが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うものや場所と、その理由を教えてください。
大阪の人に道を聞いたら、ほとんどの人が丁寧に教えてくれますね。中には途中まで一緒に付いて来てくれます。相手がおばちゃんなら別れ際にアメちゃんをくれる人もいます。僕自身も人に道を聞かれたら、よっぽど急いでない限り相手が納得するまで教えてあげます。おせっかいと言えばそれまでですけど。
大阪の人はようしゃべるけど、思いやりが強いと思いますね。初対面の人との会話で、ボケたり突っ込んだりするのも大阪人の特性かもしれません。ウソやと思ったら、試しに街で道を聞いてみてください。お勧めは、天六界隈で、ヒョウ柄の服を着た茶髪のパンチパーマ風のご婦人が狙い目でしょうね! きっとアメちゃんも握らされますよ。知らんけど。
プロフィール
曽我廼家寛太郎(ソガノヤカンタロウ)
大阪府生まれ。1981年に松竹新喜劇に入団。1982年に曽我廼家の名跡を受け継ぎ、曽我廼家寛太郎に改名。2001年に曽我廼家寛太郎一座を旗揚げした。
曽我廼家 寛太郎 | 劇団員 | 松竹新喜劇公式サイト | 松竹
江頭美智留(脚本)
高遠響先生の原作を脚本化するお話を頂いたのは四年前。
私は兵庫で生まれ育った関西人です。小学生の頃からテレビで松竹新喜劇や吉本新喜劇を見て育ち、小学校の卒業文集には「将来は喜劇役者になりたい」と夢を綴り、その夢のために中学、高校では演劇部に所属。方向転換して脚本家になりましたが、私の原点である松竹新喜劇の聖地、松竹座さんでホンを書かせていただけるとは……感無量でした。
当然ながら、全編関西弁。これまでたくさんの脚本を書いてきましたが、関西弁の脚本を書いたことは一度もなく、関西弁で書くのはいつも以上に楽しいものでした。
コロナの関係で上演予定がずれ込みましたが、本当に個性豊かな演者が揃った本作、満を持しての開幕に私の心はもちろん踊ってます!
プロフィール
江頭美智留(エガシラミチル)
兵庫県出身。脚本家。1982年.読売ゴールデンシナリオ賞受賞。1990年、火曜サスペンス劇場「人生相談殺人事件」でシナリオデビュー。劇団クロックガールズ主宰。
川浪ナミヲ(演出)
──作品にどんな第一印象を持たれましたか?
まずタイトルが面白いと思いました。そして、設定が奇想天外だなと(笑)。大阪って全国的に見てもガチャな街と言いますか、独自の文化を持った、ちょっと特殊な街だと思うんです。本作ではそこにまた特殊な設定がぶち込まれて、すごく楽しい作品になるだろうなと思いました。
──7月末に行われた記者会見では「大阪を舞台にした奇想天外なお話ではありますが、街の幸せとは何かということを考えたり、自分たちの街のこれからについて考えるように作品になったらと」とおっしゃっていました。
石油をめぐって、人々が当たり前に暮らしていた大阪の街と、行政とが対立する作品ですが、本作を通じて僕は大阪の人が大阪を見直すだけじゃなく、それぞれの街で暮らす人たちがそれぞれの街を見直す機会になったらいいなと思っていて。日常生活の中ではなかなかそのような機会はありませんが、非日常から見えてくる日常の幸せに気づいてほしいなと思っています。
──劇中では、道頓堀から石油が湧く、というストーリーが展開しますが劇中でそれはどのように表現されるのでしょうか? またタイトルにちなんで「踊る」シーンはあるのでしょうか?
踊ります(笑)。皆さん、できる範囲で踊っていただいて、盛り上がっていただこうと思っています! 石油に関しては……まさか松竹座の舞台に油ぶちまけることはできませんので(笑)、でも“道頓堀が油田に”という驚きを、登場人物たちのリアクションと舞台デザイナーの前田剛さんのアイデアによって表現する予定です。非常に大阪らしいデザインが上がってきていますので、ぜひお楽しみに!
──ちょうど大阪松竹座の横が道頓堀ですが、常に人が行き交う賑やかな場所です。川浪さんは道頓堀にどんなイメージをお持ちですか?
僕も育ちは大阪なのですが、道頓堀って繁華街の中心地でありながら、大阪の人にとってはおそらく気合を入れたり、かしこまって行くところではないと思うんです。「俺の庭に来たで」みたいな(笑)、そんなイメージがする場所なのではないでしょうか。だから街の中心地であり繁華街ではあるけれど、みんなが親しんでいる場所じゃないかと思います。
──主演の浜中文一さんとは久々のお仕事となりますが、何かお話をされていますか?
このお話が決まったとき、まず個人的に「よろしくね」という連絡を取りました。その後、気を遣ってくださったのだと思いますが(笑)、作品のホームページに浜中さんが「演出の川浪ナミヲさんも、昔からお世話になっておりますので、楽しく作品作りできるのではないかと思います」とコメントしてくださって光栄やなと思いました。
浜中さんとは彼がまだ関西Jr.にいた頃から一緒に松竹座で作品作りをしてきたので、戦友のようなイメージが僕にはあります。その浜中さんが、松竹座に主演で帰ってきて舞台をする。その作品を演出できることは、本当にうれしいです……とご本人に伝えたら、恥ずかしそうにしてましたけど(笑)。
──浜中さんと、前田拓郎という役の共通点を感じる部分はありますか?
そうですね。前田は図太いところもあるけど非常に周りに気を遣っている人で、そこが、ちょっとシャイだけれど真っ直ぐで芯がある浜中さんとの共通点だと思います。会見で浜中さん自身は前田を「かわいそうな役」と表現しましたが、僕は決してそんな風には思ってなくて、飄々としているように見えてすごく周りのことを見ている人だと思います。ちなみに今回、キャストの顔ぶれが非常にバラエティに富んでいますが、全体のバランスを考えて決めていったわけではなく、浜中さん含め、それぞれの役に合いそうな人を考えていった結果、こんなに面白い顔合わせになりました。
──本作のチラシ裏に「これを観ればあなたはもっと大阪を好きになる!知らんけど」とコピーが記されています。川浪さんが本作を通じて、「大阪のこういうところが好きだな、もっと知ってほしいな」と思うのはどんなところですか?
大阪らしさって、やっぱり人と人とのつながりがストレートでまっすぐなところだと思うんです。ただ、そこはすでにみなさんよく知っておられると思うので、最初の話につながりますが、今回は大阪以外の場所に住んでいらっしゃる方にもぜひ観ていただいて、自分の地域のことを思ったり、自分の中にある大阪らしさを見つけてほしいなと思います。
プロフィール
川浪ナミヲ(カワナミナミヲ)
兵庫県在住。劇作家、演出家。1995年、劇団赤鬼の旗揚げに俳優として参加、のちに脚本・演出も担当。劇団公演以外のへの出演や演出、脚本提供、テレビ・ラジオドラマの脚本執筆など多数。大阪松竹座の公演では「二階の奥さん」「三味線に惚れたはなし」「新・親バカ子バカ」「愚兄愚弟」などの松竹新喜劇の作品や、「少年たち~格子無き牢獄」「トリッパー遊園地」「アンタッチャブル・ビューティー」などの脚本や演出を手がけている。