お客様の代わりに舞台で気持ちを燃やし尽くしたい ミュージカル「SMOKE」大山真志×池田有希子×伊藤裕一×内海啓貴×木村花代 座談会

2021年の「SMOKE」は“お焚き上げ”、カタルシスを届けたい

──コロナ禍の影響で、先の見えない状況が続いています。そんな中で上演される今回の「SMOKE」を通して、皆さんは観客の方々にどんな思いを持ち帰ってほしいですか?

池田 コロナ禍で“死”が身近になったと感じています。「SMOKE」は結核が死に至る病だった頃の物語で、超も海も紅もよく咳き込むから、今の時代と重なる気がして。李箱は若くして病死していますが、紅はずっと「どの道死んでしまうとしても、死ぬまでは生きよう」ということを言い続けますし、自分の中でそういう言葉の説得力が増しています。「“今”のことを言っているな」と思うので、お客様にも何か感じてもらえたら。

内海 この作品には、皆さんの心に響く言葉がたくさんあると思う。僕自身はまだまだ格闘中ですけど、作品に背中を押される感覚があるんです。今は世界中の誰もが窮屈で、生きづらいとき。それでも来てくださるお客様に、セリフや歌を通して何かをお返ししたいです。

木村 私はなぜタイトルが「SMOKE」なのかずっと疑問でした。でも煙を「実体がない」存在と捉えればマイナスだけど、「どこまでも飛んでいける」ものと捉えたらプラスだなって。先が見えない状況ですが、いつかは煙のように自由に飛べるという希望も感じています。「もっと自由に生きて良いんだよ」というメッセージをお客様に届けたいですね。

伊藤 ある演出家さんが「俳優は、観客がやりたくてもできないことを代わりにやる仕事」とおっしゃっていました。うかつに声を出せない今、僕たちは作品を通してお客様の代わりに感情をぶつけ合います。お焚き上げじゃないけど(笑)、僕らは舞台で鬱屈とした気持ちを燃やして、煙にして天空に返します! スッキリして劇場をあとにしてください。

大山 この状況下で観劇するのは大変だと思います。でも今回の九劇公演では、感染対策をしっかり施したうえでの新演出があるので期待してください。あとは伊藤さんもおっしゃいましたが、お客様の気持ちを僕たちが代弁して燃やし尽くして、皆さんの感情を浄化できたら。今やる意味がある作品になると思うので、お楽しみに!

上段左から内海啓貴、大山真志、伊藤裕一、下段左から池田有希子、木村花代。
大山真志(オオヤママサシ)
1989年、東京都生まれ。幼少期から小椋佳主催のアルゴミュージカルに多数出演。「ミュージカル『テニスの王子様』」千歳千里役で注目を集める。主な出演舞台に「ソラオの世界」「舞台『弱虫ペダル』」シリーズ、「Club SLAZY」シリーズ、ミュージカル「ALTAR BOYZ」「ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』イン コンサート」など。10月に「『五番目のサリー』~The Fifth Sally~」、2022年1・2月にミュージカル「ボディガード」が控える。
池田有希子(イケダユキコ)
1970年、東京都生まれ。高校時代にアメリカへ留学し、留学中に舞台に立ち始める。第15回東京芸術劇場で小田島雄志賞、第11回読売演劇大賞で女優賞を受賞。近年の主な出演舞台にミュージカル「リボンの騎士」、ミュージカル「アメリ」、 音楽劇「道」、ミュージカル「プリシラ」、ミュージカル「Dramatico-musical BLUE RAIN」「東京ゴッドファーザーズ」など。アニメ「パワーパフガールズ」バターカップ役の声優としても知られる。
伊藤裕一(イトウユウイチ)
1984年、神奈川県生まれ。俳優・MC・脚本執筆など多彩な才能を活かし幅広く活動している。近年の主な出演舞台に「崩壊シリーズ」、斬劇「戦国BASARA」、「チャオ!明治座祭10周年記念特別公演『忠臣蔵討入・る祭』」「フェイス FACE/FAITH」「楽屋」、ミュージカル「僕とナターシャと白いロバ」など。
内海啓貴(ウツミアキヨシ)
1995年、神奈川県出身。NHK Eテレ「Rの法則」にレギュラー出演。「ミュージカル『テニスの王子様』」3rdシーズンの日吉若役で知られる。近年の主な出演舞台に「ミュージカル『黒執事』-Tango on the Campania-」、ミュージカル「いつか~one fine day」、ミュージカル「アナスタシア」、ミュージカル「35MM: A MUSICAL EXHIBITION」、ミュージカル「BARNUM」など。11月にミュージカル「GREASE」が控える。
木村花代(キムラハナヨ)
大阪府出身。劇団四季時代、「夢から醒めた夢」「キャッツ」「オペラ座の怪人」「美女と野獣」など多数のミュージカルで主要な役どころを務める。近年の主な出演ミュージカルに「ミス・サイゴン」、丸美屋食品ミュージカル「アニー」、TipTap「Play a Life」「キューティ・ブロンド」「ラヴズ・レイバーズ・ロストー恋の骨折り損ー」「ミュージカル回想録『HUNDRED DAYS』」など。12月に「キッド・ヴィクトリー」、2022年3月から6月にかけて「メリー・ポピンズ」が控える。
菅野こうめいが語る「SMOKE」

ここでは、ミュージカル「SMOKE」で日本語上演台本・訳詞・演出を担う菅野こうめいが本作を語る。菅野は2018年の日本初演、2019年の東京・東京芸術劇場 シアターウエスト公演、浅草九劇公演を手がけてきた。来たる2021年公演に向け、菅野が観客に送るメッセージとは?

──菅野さんが「SMOKE」と向き合うのは、日本初演から今回で4回目です。改めて作品のどのような点に魅力を感じていますか?

菅野こうめい

まずは脚本の巧みさと、楽曲の素晴らしさ。ミュージカルにとっては一番重要で欠かせない2つの要素に尽きると思います。加えて、それに真摯に力一杯取り組み、舞台に立つ俳優たち個々の表現。これも魅力だと言わざるを得ないでしょう。もうあとはすべて! 九劇で観られるディテールの何もかもを、愛おしく感じています。

──過去に浅草九劇で上演された際は、観客が3人のキャストと緊密な空間を共有できる点が特徴的でした。コロナ禍での上演となる今回は、どのような演出を考えていますか?

最初に断っておきたいのは、緊密な空間を共有する演出は日本版だけであり、韓国のオリジナルプロダクションにはない我々固有のものです。これは浅草九劇と言う劇場で四方に客席をレイアウトするアイデアと闘ったオリジナルキャストたちのレガシーなのです。しかし今回だけはそれが仇になりかねない状況で、実は困り果てていました。「コロナ禍で演出は変わりますか?」と聞かれれば、変えなければいけないでしょう。だって「SMOKE」は完全に“密”なんだから。じゃあ、どうするか? “密を逆手に取る”しかないですね。コロナ禍でさらに密なるものをご覧に入れる。それは劇場で“目撃”なさってください。

──2021年版の「SMOKE」に、どのような思いで臨まれますか?

コロナ禍が分断を生み、個人が内に閉じこもることを余儀なくされた1年半あまりの間、エンタテインメントは数え切れないほど格好の題材を手にしたと僕は思っています。今回の新しい「SMOKE」も同様に、自らの中に閉じこもり、問いかけ、呼応し、さらに分断の深みに歩を進めることで、大きなエネルギーを手にすることができたと思います。そのエネルギーが必ずや、ご覧になったすべての方々に生きる力を与えられると信じています。諦めない3人の姿は、エンタテインメントの力を信じて闘う我々全員の覚悟でもあります。緊急事態宣言下の上演になりますが、その覚悟をぜひ、観に来ていただきたいと思います。くれぐれも、ご無理のないように。それだけはお願いいたします。

菅野こうめい(スガノコウメイ)
1957年、神奈川県生まれ。木の実ナナ・細川俊之の「SHOW GIRL」シリーズで、1979年から約10年間、福田陽一郎の演出助手やショー構成を担当。1985年「小堺クンのおすましでSHOW」で演出家デビュー。紀尾井町のクリスタルルームでショーディレクターを務め、前田美波里・夏木マリ・ピーター・金井克子・奈美悦子らのレビューショーを担当。「Footloose」「The Producers」「ハイスクール・ミュージカル」「ハウ・トゥー・サクシード」など、多数のミュージカルを演出したほか、コンサート、博覧会、大型スポーツイベント、テーマパークの総合演出なども手がける。