お客様の代わりに舞台で気持ちを燃やし尽くしたい ミュージカル「SMOKE」大山真志×池田有希子×伊藤裕一×内海啓貴×木村花代 座談会

「SMOKE」が4度目の上演を迎える。本作は、1937年に満26歳で夭折した朝鮮生まれの詩人、李箱(イ・サン)の連作詩「烏瞰図(うかんず)詩第15号」と、彼の人生に着想を得て創作された韓流ミュージカル。日本では菅野こうめいの上演台本・訳詞・演出により、2018年に東京・浅草九劇で初演された。囲み舞台で行われる熱量の高いステージは、“愛煙家”と呼ばれる熱烈なファンを生み出し、2019年の2公演を経て、今年は浅草九劇と大阪の梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティで上演される。

今回の「SMOKE」では、10名のキャストから3名ずつが、36通りの組み合わせで出演する。本特集では出演者の中から、大山真志、池田有希子、伊藤裕一、内海啓貴、木村花代の座談会を実施。初演から続投する大山と池田、今回初参加となる伊藤、内海、木村が、作品の魅力や胸に刺さった劇中のフレーズ、韓国発の舞台作品の特徴などについて、熱い思いをたっぷりと語ってくれた。特集の後半では、演出の菅野からのメッセージも掲載している。

取材・文 / 中川朋子

99%はわからなかった、「SMOKE」との出会い

──本作は、陰のある男性・超(チョ)と海を夢見る純粋な青年・海(ヘ)が、海に行く資金を得るため、三越デパートの令嬢とされる女性・紅(ホン)を誘拐するシーンから始まります。大山さんは2018年の初演で海役を担当され、2019年公演と今回は、超と海を演じます。

大山真志 僕は「SMOKE」が初の韓国ミュージカル。実は初めて台本を読んだときは「何のこっちゃ?」でした(笑)。実際にやってみたらしんどさもあったのですが、とてつもない熱量で。1回ごとに達成感があり、魅力を感じたのを覚えています。

池田有希子 私も真志くんと同じく初演メンバーで、今回も紅を演じます。「感情同士をガン!とぶつけたら、どのくらい火花が出るだろう?」という感じで書かれた作品だなと思いましたね。ストーリーの整合性というより、「どれだけ“血”が出るか」が大切だなと思って取り組んできました。

──初出演の伊藤さんは超役です。

伊藤裕一 本格的にミュージカルに出演するのは、今回が2回目です。オーディションのお話をいただき、台本の一部と音源で初めて「SMOKE」に触れました。まねにならないよう、オーディション終盤まで過去の映像を観ないようにしていたんです。今は稽古しながら、物語のピースがはまっていく感覚を味わっています。だから僕はまだ本当の意味で「SMOKE」と出会っていないのかも(笑)。

──同じく初参加で紅を演じる木村さんは、キャスト発表時に本作について「好きか嫌いかで言えば大好物」とコメント(参照:ミュージカル「SMOKE」大山真志&池田有希子が続投、東山光明らが初参加)されていました。

木村花代 そうなんです! 初演を観たとき、難解だけど胸に突き刺さる感じが素敵だと思いました。いざ稽古が始まってみたら、台本を読んでも読んでも答えが見つからなくて……でも噛めば噛むほど、リピーターのお客様が多いことに納得です。今回はキャストの組み合わせが36通りありますし、座席の位置によっても見え方が全然違うと演出の(菅野)こうめいさんがおっしゃっていて、お客様にどのように観ていただけるか楽しみです。

──海役で初参加の内海さんはいかがでしょう。

内海啓貴 僕は今26歳なんですが、十代の頃に俳優をやっていたものの、面白さがわからなくて一度辞めたんです。でも「ミュージカル『テニスの王子様』」に出演したことをきっかけにミュージカルに興味を持って。2018年に帝国劇場で観たミュージカル「モーツァルト!」で感動して、ミュージカルをやろうと決意しました。それでいろいろな演目を観ていたときに出会ったのが「SMOKE」の初演。当時の感想はシンプルに「役者さんってすごい!」でした。正直初めて観たときは、物語の99%くらいは理解できなくて(笑)。でも「いつか自分も」と思っていたから、お話をいただいて「やりたい!」と即答しました。

完璧超人になりたい超、純粋な少年の海、愛情あふれる応援者の紅

──「SMOKE」は誘拐事件を軸としたクライムサスペンスのように始まりますが、超、海、紅のやり取りからはやがて、“詩人”の内面世界の葛藤や苦悩が浮かび上がってきます。現時点でそれぞれ、役に対してどのような印象を抱いていますか?

上段左から内海啓貴、大山真志、伊藤裕一、下段左から池田有希子、木村花代。

大山 面倒くさいやつらだな!と(笑)。

一同 あはは!

大山 超も海も紅も、詩人の李箱の内面にいるキャラクター。僕は3人とも、人間の弱さや人に見せたくない部分、ナルシストっぽい面などを表す化身のような存在だと思っています。僕は超と海の2役を担当しますが、超は名前の通りに完璧超人であろうとしている人。海は14歳の純粋な男の子というイメージかな。

内海 海は3人の中で一番変化が見えるキャラクターなので、そこを演じるのが楽しみ。僕自身の中にも海がいるなと思うんです。挫折して「無駄だったのかな」と思ったことが、今「SMOKE」に生かせている気がする。自分の体験を引き出して海に肉付けをしたいですね。

池田 3人とも李箱の人格だと考えることもできるし、李箱の人生に影響を与えた代表的な人物を表しているとも捉えられます。紅は絶対に諦めない人だと思う。とにかくポジティブで、ものを作る人間への愛情あふれる応援者として私は演じています。

木村 愛情といえば、紅は3人の中で唯一の女性ですね。紅には母親や姉、恋人といった女性像が何層にも重なっているという意識で演じたいです。さっき内海くんが「体験を引き出して」と言ってくれましたが、私自身は根性でどうにかなる!という性格(笑)。だから厳しすぎる紅にならないか心配もあるんです。ゆっこさん(池田)がおっしゃるように、愛情ある紅を演じたいなって。

伊藤 超はみっともないところばかりで後ろ向きな印象なので、演じながらみじめな気持ちになることがあって。でも今回はありがたいことに、自分以外の演技を観られる。稽古で人が演じる超を観て「超ってこんなにカッコいいんだ」と思いました。気持ちをむき出しにしている姿から目が離せなくて。彼のその姿が“超”という名前のゆえんであり、この作品で彼が担う役割なのかなと。僕がそのように演じられるかわかりませんが(笑)、ジタバタと暴れるのが超を愛することなのかなと思えました。

憧れの先輩との再会に喜び、大山真志は“伝説の生き物”?

──ここでお話しいただいているメンバーには、同じ役を演じる方が2人ずついるので、同役を担当される相手の方についてお伺いしたいです。海役の大山さんと内海さんはお互いにどんな印象をお持ちですか?

大山 内海くんとの初対面は、彼の初舞台でした。当時はお芝居に苦戦している様子だったけど、バチバチに成長していて「すごいやん!」って。僕には真似できない海を確立しようとしているなと感じます。

内海 うれしい! 僕は初舞台のとき真志さんを「素敵だな」と思っていました。「SMOKE」の初演でやっぱりすごい方だと思ったし、今回のキャストを知ってまず「やった! 真志さんと同じ役」って喜びました(笑)。僕は真志さんの海が大好きですが、同じ海は僕にはできません。オリジナル路線で海を目指しながら、真志さんと一緒に作り上げたいです。

──超役の大山さんと伊藤さんはいかがですか?

伊藤 真志くんとは昨年末に「チャオ!明治座祭10周年記念特別公演『忠臣蔵 討入・る祭』」(参照:平野良&小林且弥がW主演「忠臣蔵 討入・る祭」全キャスト発表)で共演したものの、舞台で絡みはなかったんです。僕はあまりミュージカルに詳しくないけれど、僕の中でミュージカルといえば真志くん。“麒麟・青龍・白虎・大山真志”というか……伝説の生き物みたいな感覚です。

大山 何でだよ!(笑)

伊藤 ご一緒してみたら可愛らしい方で、演出のこうめいさんからも信頼されているし、僕も真志くんに引っ張ってもらっている。でも「俺について来い!」ではなく、しれっと助けてくれるあたりも“伝説”っぽいです。

大山 何が伝説ですか!(笑) 僕は伊藤さんと昨年ご一緒する前に、伊藤さんとサカケンさん(坂元健児)の二人芝居「フェイス FACE/FAITH」のDVDを観ていて、「伊藤さんには超が合いそう」と思っていたんです。伊藤さんは何かを伝えようとする力がすごくて、本読みの時点で「もう“画”が見えている」という演技をされていました。歌は練習で上達するかもしれませんが、センスは練習では身に付かない。そんなセンスを持っている方です。

──池田さんと木村さんが同じ作品に出演されるのは、今回が初めてですね。

池田 花ちゃんは歌のスキルがすごい。「えっ、今ここブレスなしで歌った!?」みたいなことがしょっちゅうで、驚いています。それに私とは“山”の登り方が全然違うから、観ていて面白くて。私と違う角度から紅に迫っているけど、短期間で紅の本質をもうつかんでいるようで素晴らしいです。実は私、「SMOKE」を“パンツ芝居”って呼んでいます。心のパンツをご開帳してなんぼ、という(笑)。稽古を重ねるとどんどん心をさらけ出せるようになるから、そういう意味では今後、花ちゃんの“パンツ”を観るのが楽しみ!

木村 あははは! 私がゆっこさん(池田)を初めて知ったのは10年くらい前。私が劇団四季を退団したばかりの頃、初めて参加したワークショップにゆっこさんも参加していらっしゃったんです。「素晴らしい女優さんだな」と印象に残っていたので、「SMOKE」の初演もゆっこさんの回を観劇しました。

池田 え、そうだったんだ!

木村 ずっと共演したかったんです! 今回は同じ役だから共演ではないけど、憧れの女優さんなので幸せ。改めてよろしくお願いします(笑)。