カンパニー1の曲者・山本一慶、日に日に“釈迦化”する久保田秀敏
──モリミュでは、2019年の「Op.1」から西森英行さんが脚本・演出を担当しています。西森さんとキャストの皆さんは、稽古場でどのようなやり取りをしながら作品を立ち上げていくのでしょうか?
鈴木 原作の中に描かれている哲学をどうやって見せるか、もしくはあえて見せないようにするか、ただすけさんも交えて毎回吟味しながら作っていますね。
平野 西森さんは映画がお好きなので、まず「あの作品のあのシーンのようなイメージで大枠を作ってほしい」というアイデアをくださって、それを俳優たちが装飾していく感じです。装飾の仕方に関しては概ね僕たちに任せてくれますね。例えるなら、“西森さん=曲者ぞろいの俳優たちをまとめる指揮者”……?(笑)
──特にどなたが曲者なのでしょう?(笑)
藤田 (山本)一慶はうるさいですよー!
鈴木 最近の一慶は本当に面白いんだよなあ(笑)。
平野 ははは! しゅんりー(髙木俊)さんのネタを自主的に考えてきたりしてるよね。自分で演出をするようになったのが大きいのかな。
鈴木 そうですね。一慶は賢くて、自分の中でいろいろなことを考えてお芝居をするタイプだから、彼の一言で気付かされることが多いかも。一方で、モリアーティチームには一慶とは対照的な久保田(秀敏)兄さんがいるのも面白いんですよ(笑)。
藤田 くぼひで(久保田)は、もうすぐ悟りを開きそうだよね。日に日に“釈迦化”してる(笑)。
鈴木 どんどんアルバート(・ジェームズ・モリアーティ)らしくなっていってますよね。モリアーティチームはけっこうみんなでディスカッションをするんですけど、ホームズチームはどうですか?
平野 モリアーティチームとは対照的に、僕らはあまり打ち合わせをしないかも。シャーロックが好き勝手なことをやって、それをワトソンが支えて、(ミス・)ハドソンが「もー!」って言う、お決まりの流れがあるから(笑)。
鈴木 ははは!
終わりの始まりを迎えるにあたって
──2021年夏に上演された「Op.3」以来、約1年半ぶりの新作公演となる「Op.4」がまもなく始動します(取材は12月中旬に行われた)。稽古開始を目前にした、現在の心境をお聞かせください。
鈴木 今回、なぜだかちょっと怖いんですよね。
平野 そうなんだ?
鈴木 モリミュチームで「Japan Musical Festival」(参照:「Japan Musical Festival 2022 Winter Season」開催決定に中川晃教が喜び、ミュージカルの幅広さ示す)に参加させていただいたり、モリミュとは別の作品に出演させていただいた経験を経て、以前とは違う景色が見えるようになったからこそ、プレッシャーを感じる部分が大きいのかな。それを乗り越えられたら、「Op.4」はこれまでの3作品を超えるものにできると思うんですけど。
平野 ストーリー展開的に、終わりの始まりを迎えているからっていうのもあるんじゃない? どう締めくくるかを考えてしまうというか。
鈴木 確かに、その影をうっすらと感じているからかもしれないですね。終活を始めるときのような心境というか、人生に対して抱く不安感に近いのかな。
藤田 なるほどね。僕と良くんはモリミュの直前まで一緒の作品に参加しているんですけど、その関係で稽古合流が少し遅れるんです。時間的にあまり余裕がないから不安に感じる部分もあるんですが、モリミュには心強いキャスト・スタッフがいてくれるからきっと大丈夫!
平野 結局、尻を叩かれたらやっちゃうんだよねえ。
藤田 そうなんですよね。悲しい生き物だね、役者って(笑)。
──(笑)。「Op.4」では、ウィリアム、シャーロック、ミルヴァートンによる三つ巴の闘いが展開されます。3つの陣営の関係も見どころの1つになると思いますが、お三方が考える「特にここを楽しんでほしい!」というポイントは?
藤田 やっぱり僕たち3人の歌声と、ピアノ、バイオリンのコラボレーションですね。絶対に素敵なものに仕上がると思うので、楽しみにしていただきたいです。
平野 僕はシャーロックとジョンのシーンかな。孤独だったシャーロックが人の心に触れて、変化した姿を見てほしいですね。原作でも特にお気に入りのシーンなんですけど、“シャーロックが屋根の上から見た景色”を、僕たちの音楽によって表現できたら良いなと思っています。
鈴木 僕はアダム・ホワイトリーが「Op.4」におけるキーパーソンになると思っていて。シャーロック陣営、モリアーティ陣営、ミルヴァートンが3方面からどのようにホワイトリーと関わっていくのか、そこに注目していただけたら、「憂国のモリアーティ」という作品がよりクリアに見えてくるんじゃないかと思っています。終わりの始まりを迎えてはいますけれども、カンパニーメンバーはもちろん、モリミュファン、原作ファン、各メディアミックスのファンの方々と一緒に最後まで歩んでいけたら。観劇や配信、さまざまな形で応援していただけるとうれしいです。
プロフィール
鈴木勝吾(スズキショウゴ)
1989年、神奈川県生まれ。俳優。2009年に特撮ドラマ「侍戦隊シンケンジャー」のシンケングリーン / 谷千明役で俳優デビュー。近年の主な出演作に、「ミュージカル『薄桜鬼』」、S-IST Stage「ひりひりとひとり」、ミュージカル「DOROTHY(ドロシー)~オズの魔法使い~」、エン*ゲキシリーズ#06 即興音楽舞踏劇「砂の城」など。2023年に「舞台『鋼の錬金術師』」の公演を控える。
鈴木勝吾[Official] (@Shogo_Suzuki_) | Twitter
平野良(ヒラノリョウ)
1984年、神奈川県生まれ。俳優。テレビドラマ「3年B組金八先生」(第5シリーズ)で映像デビューを果たす。近年の主な出演作に、「笑う門には福来・る祭 明治座でどうな・る家康」ほか。日テレプラス ドラマ・アニメ・音楽ライブで放送されている情報バラエティ番組「2.5次元ナビ!」でMCを務める。2023年3月、「信長未満-転生光秀が倒せない-」に出演予定。
藤田玲(フジタレイ)
1988年、東京都生まれ。俳優、ミュージシャン。2003年、特撮ドラマ「仮面ライダー555」で俳優デビューを果たす。俳優業の傍ら、ロックバンド・DUSTZのメンバーとしても活動。近年の主な出演作に、ミュージカル「ネクスト・トゥ・ノーマル」、舞台「呪術廻戦」、「MANKAI STAGE『A3!』」など。2023年3月、ミュージカル「フィーダシュタント」に出演予定。