鈴木勝吾×平野良×藤田玲、三つ巴の闘いが幕を開ける「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.4 -犯人は二人-」

息を飲むようなストーリー展開、荘厳なミュージカルソングで人気を博す「ミュージカル『憂国のモリアーティ』」(以下モリミュ)は、「ジャンプSQ.」(集英社)で連載中のマンガ「憂国のモリアーティ」を原作としたミュージカル。1月27日にはシリーズ第4弾「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.4 -犯人は二人-」が開幕する。

このたびステージナタリーでは、2019年の「Op.1」から宿命のライバルを演じてきたウィリアム・ジェームズ・モリアーティ役の鈴木勝吾、シャーロック・ホームズ役の平野良、前作「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.3 -ホワイトチャペルの亡霊-」に続き、チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン役を務める藤田玲にインタビューを実施。佳境を迎えたモリミュで主軸を担う3人に、「Op.4」の見どころを聞いた。

取材・文 / 興野汐里撮影 / Ryusei Imaiヘアメイク / [鈴木勝吾、平野良]古橋香奈子(LaRME)、[藤田玲]小林麗子(do:t)スタイリスト / [鈴木勝吾、平野良]MASAYA、[藤田玲]小田優士

“凪いだ水”vs.“粘度のある水”

──鈴木さんと平野さんは、2019年の「Op.1」からモリミュシリーズに出演されています。最新作「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.4 -犯人は二人-」では、どのような部分を意識してご自身の役に臨みたいと考えていますか?

鈴木勝吾 公演を重ねるごとに、ウィリアムが自身の夢の果てにあるゴールについて語るようになってきたし、シャーロックに対して徐々に心を開くようになってきて、凍っていたものが溶けていくような感覚があるんです。もちろん原作に沿ったストーリーを上演してはいるんですけど、モリミュという作品には、良くんと僕が築き上げてきた関係性が色濃く反映されていると思うので、今回の稽古を通してさらに深めていけたら良いなと。

鈴木勝吾

鈴木勝吾

鈴木勝吾

鈴木勝吾

平野良 物語が始まったばかりの頃、シャーロックは孤独な変人だったと思うんですが、助手であるジョン(・H・ワトソン)のおかげで少しずつ軟化し、謎に包まれた“犯罪卿”ウィリアムと出会ったことで生きる目的を得ました。前作「ミュージカル『憂国のモリアーティ』Op.3 -ホワイトチャペルの亡霊-」(参照:新キャスト迎えたモリミュOp.3開幕!鈴木勝吾「“真実”を観て」)でシャーロックは、“犯罪卿”を許すべきかどうか、ずっと悩んでいたんですね。それが吹っ切れて、もう1歩前進するのが今回の「Op.4」。「Op.1」や「Op.2」の頃からは考えられないくらい、シャーロックが能動的に突き進んでいくので、シャーロックにとって新たな船出のような作品になるんじゃないかと思っています。モリミュならではのシャーロックを立ち上げて、シャーロキアン(シャーロック・ホームズの熱狂的ファン)の方々に納得していただけるように、引き続きがんばっていきたいです。

──約4年にわたって好敵手を演じているお二人ですが、鈴木さん演じるウィリアム、平野さん演じるシャーロック、お互いのイメージを“一言”で表すと?

平野 “凪いだ水”かな。コップに水を注いで、最初はチャポンチャポン!と水面が激しく揺れていたのが、ゆっくり凪いできて、コップに水が収まるようになってきた感じ。

平野良

平野良

平野良

平野良

藤田玲 カッコいい表現だな。

鈴木 自分が“凪いだ水”だとしたら、良くんは“粘度のある水”。初めは粘度が高かったけど、物語が進むにつれてろ過されてクリアになったというか……一言って難しいな!(笑)

平野 よし! 大吟醸ってことにしよう!

鈴木 良くんの言葉を借りて、“大吟醸の日本酒”ということにしておきます(笑)。

──大人なたとえですね(笑)。一方、チャールズ・オーガスタス・ミルヴァートン役の藤田さんは「Op.3」で初めてモリミュに参加されました。ミルヴァートンは、新聞や広告を使ってあらゆる情報を支配するメディア王であり、情報操作と人心掌握により人々を操る“脅迫王”でもありますが、ミルヴァートンという人物に対してどのようなイメージを持っていますか?

藤田 悪役って実は自分なりの正義を持っていることが多いじゃないですか? でもミルヴァートンにそんなものはない!

鈴木平野 ははは!

藤田 正義の「せ」の字もない! これだけ悪にどっぷり浸かっているキャラクターは珍しいので、気持ち良く演じさせていただいています。でも僕自身はそういう人間ではないから「ミルヴァートンは嫌いになっても藤田は嫌いにならないでください(笑)」。

歌い手、ピアノ、バイオリン、3つの“楽器”が奏でる旋律

──「Op.3」の上演時に、藤田さんが「ミルヴァートンの曲はメロディーラインがどこか邪悪で執拗なおどろおどろしさがある」とおっしゃっていたのが印象的でした。ただすけさんが作曲したナンバーを実際に歌唱してみていかがでしたか?

藤田 モリミュの楽曲はグランドミュージカルに近いイメージだと感じました。ミルヴァートンのナンバーに関しては、どのメロディーも難解で、非科学的な仕上がりになっている。良い意味で気持ち悪さが魅力的だなと。

鈴木 確かに。音階が不気味だよね。

藤田 でも、そこにミルヴァートンらしさが詰まっているんです。今回はおそらくウィリアム、シャーロック、ミルヴァートンの3人で歌う楽曲があると思うんですが、僕たち3人は声質や歌い方がまったく違うから、どういう化学反応が起きるのか……。

平野 ケミストリー?(笑)

藤田 そう、ケミストリー(笑)。絶対に何か面白いことが起きるんだろうなという予感がしているので、今からすごく楽しみですね。

藤田玲

藤田玲

藤田玲

藤田玲

鈴木 僕はやっぱり、歌い手、ピアノ、バイオリンがそれぞれ1つの“楽器”として存在しているのがモリミュの魅力だと思います。リズム隊がいないということが関係しているのかもしれないけど、バックに演奏があってそこに歌を乗せる、という感覚とは少し違いますよね?

平野 そうだね。ピアノとバイオリンの音に、自分の声を混ぜて成立させないといけないっていう意識がかなりある。ただすけさんがミュージシャンということもあって、いわゆるミュージカルとは違う理論で音楽を作っているからなのかな。ただすけさんの場合、キャラクターのセリフから着想を得て、曲の構成や音符の位置を考えているそうなんですよ。生演奏ということも相まって、その都度ストーリーに寄り添った音作りができるのが、ほかの作品にない強みだと思いますね。