ママチャリで疾走、ヘッドバンギングしながらギターかき鳴らしシャウト!
三者三様のマクベス像
製作発表記者会見を数日後に控えた5月上旬、disc1・2・3でそれぞれランダムスター / マクベス役を務める橋本さとし、尾上松也、浦井健治の撮影が早朝から行われた。今回のPVの内容は、ヘビメタバンド・メタルマクベスのボーカル、マクベス役に扮した3人が宮藤官九郎作詞による劇中歌「きれいは汚い、ただしオレ以外」を歌唱するというもの。この曲は2006年の初演時、同役を演じた内野聖陽が披露したナンバーで、ヘビーなバンドサウンドとユニークな歌詞でファンの心を掴んだ人気曲だ。「きれいは汚い」という「マクベス」の名ゼリフに、「ただしオレ以外」とマクベスの心情が追加された一節や、マクベスと夫人の関係を示した「寝ても覚めても俺は愛妻家」といったユーモアたっぷりの歌詞が随所にちりばめられている。
本作が上演される東京・IHIステージアラウンド東京が、日本初の客席が360度回転する劇場であることにちなみ、今回のPV撮影には驚きのアイテムが導入された。それは、体操競技の一種として知られるラート。2本の鉄の輪を平行に繋いだラートにマクベス役の3人が乗り、自ら360度回転してみせるという奇想天外な演出が、本PVの最大の見どころとなっている。
初めに撮影現場に姿を現したのは、disc1に出演する橋本。黒のファージャケットにレザーパンツ、ゴシック調のメイクを施したロックな出で立ちとは裏腹に、橋本は監督やスタッフとフランクに談笑しながら、和やかな雰囲気のまま撮影に入っていく。この日がラート初体験となった橋本は「3人(橋本、松也、浦井)のうちで俺が一番最初なんだよね? ……実験台ってこと!?(笑)」と冗談を飛ばしつつ、真剣な表情でトレーナーから入念にレクチャーを受ける。その甲斐あってすぐに自力で回転できるようになった橋本は、ぐるぐるとスタジオの中を回転しながら、「怖いって言うか、わけがわからなくなるね、これ!(笑)」と戸惑いを見せつつも見事にラートを乗りこなし、スタジオでの撮影を難なく終えた。
続いて、屋外の撮影へ。撮影隊を追って外に出ると、そこには「メタルマクベス」の世界観とは相反する、1台のママチャリが。なんと次なるシーンは、橋本が自転車に乗りながら「きれいは汚い、ただしオレ以外」を絶唱するというものだった。清々しい晴天の下、役に扮した橋本がペダルを回すと、かごに入れられたスーパーの袋が風になびく。自転車の加速に合わせ、歌に熱を込めていく橋本の姿にスタッフから、「さとしさん、いい感じです!」「最高です!」と声が上がり、現場の盛り上がりは最高潮に。このシーンがどのように使用されているかは、完成したPVをチェックしてほしい。
次に、disc3に出演する浦井の撮影がスタート。橋本の衣装とは異なる黒のレースのロングコートをまとった浦井は、普段通りの朗らかな雰囲気で現場に登場。しかし撮影が始まると顔付きが一変し、スモークが焚かれたスタジオ内に、鋭い眼光をたたえた“浦井マクベス”の姿が浮かび上がった。橋本と同じく、この日がラート初挑戦の浦井は、初めは丈の長いロングコートの扱いに苦戦しつつも、回転中も表情が見えるようにうまく裾を捌きながら、落ち着き払った様子で次々と一発OKを出していく。
またセットを移して行われた別シーンの撮影では、監督から「ここはマクベスが宇宙空間で歌っているシーンだから、重力を感じずにパフォーマンスしてみて」という要望が。この難解なオーダーに対し、浦井は屈託のない笑顔で「了解!」と答えると同時に一気にアクセルを踏み込み、長い髪を振り乱しながらノリノリでギターをかき鳴らす。“ミュージカル界のプリンス”からは想像もつかない振り切った姿に、撮影陣からは感嘆の声が漏れた。
この日最後に行われたのは、disc2に出演する松也の撮影だ。「團菊祭五月大歌舞伎」の初日を目前に控え、その稽古後、撮影に参加した松也だったが、疲れを微塵も感じさせることなく、用意された黒のレザージャケットに袖を通して即座に役に入り込む。回転しながら歌唱するという不慣れな状況にも関わらず、松也はラートをすぐに乗りこなし、エレガントなビブラートでスタッフ陣を唸らせた。また松也とカメラマンが至近距離で対峙し、自由に動き回りながら1曲通しで歌唱するシーンでは、松也の“ロック魂”が炸裂。ギターを肩に担ぎ、カメラに向かって“見得”を切りながら、「俺は俺さえ裏切る 俺は俺さえ欺く 俺は 俺は 俺を超えるのさ」と歌い上げ、激しいシャウトをスタジオ中に響き渡らせた。この松也の熱演により、撮影は予定より大幅に時間を短縮して終了。ハードな撮影を見事にこなした松也は、それまでの鬼気迫る表情はどこへやら、「お疲れさまでしたー」と爽やかな表情で挨拶し、スタジオをあとにした。
企画:小池宏史・荒木俊哉(電通)
監督:吉村瞳(TYO SPARK)
撮影:伊藤大介(SIGNO)
照明:島村佳孝
ラート監修:吉田望
プロデューサー:久保田仁(TYOモンスター)
制作:佐藤さくら(TYOモンスター)
次のページ »
初回転を終えて──撮影後インタビュー
- ONWARD presents 新感線☆RS「メタルマクベス」 Produced by TBS
- [disc1]2018年7月23日(月)~8月31日(金)
[disc2]2018年9月15日(土)~10月25日(木)
[disc3]2018年11月9日(金)~12月31日(月)
東京都 IHIステージアラウンド東京 - 作:宮藤官九郎
演出:いのうえひでのり
音楽:岡崎司
振付&ステージング:川崎悦子
(原作:ウィリアム・シェイクスピア「マクベス」松岡和子翻訳版より)
disc1
- キャスト
-
橋本さとし、濱田めぐみ / 松下優也、山口馬木也 / 猫背椿、粟根まこと、植本純米 / 橋本じゅん / 西岡德馬 / 山本カナコ、礒野慎吾、吉田メタル、村木仁、冠徹弥、富川一人、小沢道成 / 穴沢裕介、Erica、見目真菜、齋藤志野、鈴木智久、鈴木奈苗、橋本奈美、原慎一郎、山崎朱菜、山﨑翔太、米花剛史、渡辺翔史、藤家剛、工藤孝裕、菊地雄人、熊倉功、あきつ来野良、横田遼、北川裕貴、紀國谷亮輔
- ミュージシャン
-
岡崎司(guitars)、髙井寿(guitars)、福井ビン(bass)、松田翔(drums)、松崎雄一(keyboards)
disc2
- キャスト
-
尾上松也、大原櫻子 / 原嘉孝(宇宙Six / ジャニーズJr.)、浅利陽介 / 高田聖子、河野まさと 、村木よし子 / 岡本健一 / 木場勝己 / 逆木圭一郎、インディ高橋、保坂エマ、市川しんぺー、徳永ゆうき、伊藤玻羅馬、常川藍里 / 蝦名孝一、大久保芽依、落合悠介、狩野新之介、岸波紗世子、嶌村緒里江、鈴木悠華、武市悠資、西田健二、本多陽葉、本多玲菜、渡部又吁、武田浩二、加藤学、川島弘之、南誉士広、藤田修平、森大、渋谷亘宏、下島一成
- ミュージシャン
-
髙井寿(guitars)、滝和祥(guitars)、大桃俊樹(bass)、雨宮直人(drums)、松崎雄一(keyboards)
disc3
- キャスト
-
浦井健治、長澤まさみ / 高杉真宙、柳下大 / 峯村リエ、粟根まこと、右近健一 / 橋本じゅん / ラサール石井 / 礒野慎吾、吉田メタル、中谷さとみ、村木仁、冠徹弥、上川周作、小沢道成 / 伊藤結花、植竹奈津美、駒田圭佑、鈴木智久、鈴木奈苗、鈴木凌平、新納智子、早川紗代、本田裕子、山崎翔太、米花剛史、渡辺翔史、川原正嗣、藤家剛、工藤孝裕、菊地雄人、あきつ来野良、横田遼、北川裕貴、翁長卓
- ミュージシャン
-
岡崎司(guitars)、髙井寿(guitars)、福井ビン(bass)、松田翔(drums)、松崎雄一(keyboards)