小熊ヒデジ×松浦茂之が語る「りすん」2025edition、キャストがつづるリ・クリエーションへの思い (2/2)

キャストが語る
「りすん 2025edition リ・クリエイションツアー」

ここでは2023年に続き出演するキャストの加藤玲那、菅沼翔也、宮璃アリの、2025年版への思いを紹介する。

加藤玲那(妹の朝子役)

加藤玲那

──前回の稽古や上演で印象的だったこと、天野さんの演出で心に残っていることを教えてください。

天野さんは稽古でも劇場でもまるでガンプラを作るかのように本当に細部までこだわっていました。コンマ数秒単位の話です。それはもう職人技というか、天才の感覚を肌で体感した瞬間でしたね。天野さんの頭の中のおもちゃの詰まったカラクリ箱をワクワクしながら覗くような、そんな日々でした。私は車で稽古に行っていて天野さんと家が近かったので、光栄なことに天野さんと一緒によく帰っていました。車中ではほとんど「りすん」とは全く関係ない話で盛り上がっていましたが(笑)。
たまに、ぽつりと、朝子のことを天野さんが伝えてくれるんですよね。それがすごく心に残っています。きっと今回の「りすん」でもその残影を感じていただけると思います。

──リ・クリエーションで大事にしたいことはありますか?

「りすん」原作者の諏訪さんも舞台化した天野さんも、自身が生業としている小説や舞台の本質に問題意識を抱いている。「りすん」はそれをかなり直接的に体現していると思いますし、2年前も今回もそこは特に慎重に扱うべきだと思っています。

また、本作において“時間”という概念は非常に重要な要素です。今回は天野さんと永年一緒に作品を紡いできた小熊さんが演出を引き継いでくださいました。俳優として天野さんと組んできた小熊さんの演出だからこそ、気付かせていただくこともたくさんあって、“時間”への解釈の広がりもその一つです。キノウ、キョウ、アサッテ、イツ? 座組も観客も私自身も全員が一筋縄ではいかないこの感覚を、ぜひ劇場で味わってほしいです。

菅沼翔也(兄の隆志役)

菅沼翔也

──前回の稽古や上演で印象的だったこと、天野さんの演出で心に残っていることを教えてください。

スピード感のある掛け合い、音響・照明との多くのきっかけ、相手のセリフの語尾と自分のセリフの語頭を重ねる独特の言い回し、無限ループ、一瞬で時間が飛んだり戻ったりするタイムリープ……。
初めての天野さん演出作の稽古場は、新鮮かつ刺激に満ちていました。
その一方で、セリフ量の多さも含めて自分にとっては非常に難しく、心と身体がなかなかついていけずに、帰り道ひとりで頭を抱えていたのを今でも覚えています。「もう無理かも……」とよぎったのは初めてのことでした。

──リ・クリエーションで大事にしたいことはありますか?

再演にあたって前回の記録動画を見返したところ「あれ? こんな風に演じてたっけ?」「ちょっと勢いに頼りすぎてるな……」などなど、自分の演技に対して気付くことや思うことが多々ありました。
2年前、当時は自分なりにベストを尽くしていましたが、セリフや段取りを覚えることに必死で、正直、手の届かなかった部分もあったのだと思います。
今回は、小熊さんをはじめ共演者の皆さんと話し合いながら、大きく何かを変えるというよりも、より細部にまで意識を張り巡らせて、舞台に立ちたいと思っています。

宮璃アリ(祖母役)

宮璃アリ

──前回の稽古や上演で印象的だったこと、天野さんの演出で心に残っていることを教えてください。

2023年は、スタッフも含めてほぼ初めてのメンバーの座組でした。稽古や公演を経るにつれて、関係性が築け、それがお芝居にも反映されていたように感じます。
治療しながら稽古に参加していた天野さんをみんなで支えながら創作活動をするという状況は大変ではありましたが、今となればそこにいてくれるだけで幸せだったんだなと思います。

──リ・クリエーションで大事にしたいことはありますか?

天野さんから言われた事や聞いた事は、そのまま生かし、土台として、さらに高みを目指すために小熊さんをはじめみんなで試行錯誤しながら稽古をしています。テンポやリズムだけに囚われない(大事にするという事は大前提として)演劇的要素もとり入れた、より見応えのある作品にしたいし、なるように取り組んでいます。

プロフィール

小熊ヒデジ(オグマヒデジ)

1985年に劇団てんぷくプロ旗揚げに参加。1995年に天野天街と演劇ユニット・キコリの会を立ち上げ、1998年にKUDAN Projectに改称。また2008年に地域演劇文化活性化を目的とした名古屋演劇教室を発足させる。2016年から2021年まで名古屋の小劇場・ナビロフトの劇場プロデューサーを務めた。ほか、他劇団やプロデュース公演への出演や演出多数。

松浦茂之(マツウラシゲユキ)

三重県文化会館 副館長兼事業課長、EPAD理事。金融機関などの民間勤務を経て2000年より三重県文化振興事業団に勤務。2019年より現職。トリプル3演劇ワリカンネットワーク、ミエ・演劇ラボ、Mゲキセレクション、MPAD、“介護を楽しむ”“明るく老いる”アートプロジェクト、なりかわり標本会議など画期的なプロジェクトを多数プロデュースしている。

加藤玲那(カトウレイナ)

1997年、愛知県生まれ。ラジオDJ、ナレーター、俳優、ラジオパーソナリティ。大学進学を機に演劇を始める。2024年、ZIP-FM NAVIGATOR AUDITION2024にて準グランプリを獲得。

菅沼翔也(スガヌマショウヤ)

1989年、愛知県生まれ。名古屋おもてなし武将隊2代目豊臣秀吉役を務めた後、舞台やドラマ、映画等で活動している。近年の出演作に大河ドラマ「どうする家康」「NHKスペシャル未解決事件「File.10 下山事件」、日本の演劇人を育てるプロジェクト「桜の園」、東海ラジオプロデュース「パコfromガマ王子vsザリガニ魔人」ほか。

宮璃アリ(ミヤリアリ)

1975年、三重県生まれ。俳優。少年王者舘所属。ラジオ番組「Morning Wave」(CTY-FM / 火曜)、「que será,será ~stay positive~」(CTY-FM / 土曜)でパーソナリティを務める。近年の主な出演作に、東海ラジオプロデュース「パコfromガマ王子vsザリガニ魔人」、少年王者舘第40回公演「それいゆ」ほか。