ここでは、ディレクターの川崎陽子、塚原悠也、ジュリエット・礼子・ナップが「Shows(上演プログラム)」以外の「Kansai Studies(リサーチプログラム)」「Super Knowledge for the Future[SKF](エクスチェンジプログラム)」、さらにミーティングポイントとフリンジプログラムについて、今回の見どころを紹介する。
自分たちが立脚する「地域」について自覚的に捉え、フィールドワークを通して探求する
「Kansai Studies」
4年目に入り、新しいチームでのリサーチが始まりました。アーティストによるそれぞれの興味やこれまでの制作などに基づいた5つのテーマを公募を通じて提案いただき、すでに多数の記事が特設サイトにアップされています。海外作品を紹介するのみならず、こういった超ローカルで地道な掘り下げをフェスティバルとしてオープンにしてゆくことで、担保できる国際性があるのではないか、これにより海の外との関わりを継続的に生み出し、自分たちの足元のみならず他者の文化のあり方をイメージできるのではないか、と考えています。
実験的な舞台芸術作品と社会を対話やワークショップを通してつなぎ、新たな思考や対話、フレッシュな問題提起など、未来への視点を獲得していく
「Super Knowledge for the Future[SKF](エクスチェンジプログラム)」
舞台芸術を扱うフェスティバルの可能性はまだまだあるのではないか。社会的なトピックスを自由な形式で掘り下げる「スクール」を運営したいくらいなんですが、そのイメージを元にこの企画を立ち上げました。複合的に絡み合う現代の事象や新しい価値観を扱う作品を紹介する際、関連する(かもしれないくらいの距離感?)トークなどがより自立性を持つ必要があるのではないかと考えたためです。妖怪を探して街を歩いたり、アイデンティティの混交について考えたり、染織を通して領域を横断したり、それらの知識群がマジカルに交差することでいろいろな作品が人々の脳内でより立体的に立ち上がることを願っています。
出会いの接点を広げていく、フェスティバルの交流拠点:ミーティングポイントやフリンジ
「More Experiments」
今年のミーティングポイントは、四条烏丸とローム・スクエアの2つに設置します! 四条烏丸は、なんと地下鉄四条駅から直結。ぜひ気軽にお立ち寄りいただき、今年のフェスティバルをよりよく知るきっかけになればと思います。気になる演目があれば、その場でチケットを購入できます! SKFのトークも2つ開催します。フリンジ「More Experiments」は、会期中に京都で行われる実験をもっと楽しめるプログラム。ぜひウェブサイトからエントリーをチェックしてみてください。
「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2023」
2023年9月30日(土)~10月22日(日)
京都府 ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、THEATRE E9 KYOTO ほか
【Kansai Studies】
フェスティバルが立脚する関西地域について、フィールドワークを通して探求する。今回は公募で集まった5人が、「各地域における農耕牛の記憶について」「関西にある水場を埋めてできた土地のリサーチ」など、各自で設定したテーマに則ってリサーチを行う。
リサーチメンバー:今村達紀、谷竜一、野咲タラ、迎英里子、山田淳也
【Shows(上演プログラム)】
イ・ラン「Moshimoshi City:1から不思議を生きてみる | 뚜벅뚜벅 , 1 도 모르는 신기속으로」
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2023年9月30日(土)~10月22日(日)※受付はフェスティバル会期中の金・土・日曜、祝日のみ。
京都府 東九条エリア各所(受付場所:コミュニティカフェ ほっこり)「KYOTO EXPERIMENT 2021 AUTUMN」で始動したプログラム「Moshimoshi City」をベースに、韓国のアーティスト、イ・ランが手がけるオーディオ・パフォーマンス作品。京都の東九条を舞台に架空のパフォーマンスのテキストを執筆する。観客は地図で指定された場所を訪れ、テキストを音声で聞き、脳内でパフォーマンスを想像する。
ウィチャヤ・アータマート / For What Theatre「ジャグル&ハイド(演出家を探すなんだかわからない7つのモノたち)」
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2023年9月30日(土)・10月1日(日)
京都府 京都芸術センター 講堂政治と個の生い立ち、表現との関わりを追求するタイの演出家、ウィチャヤ・アータマートの、大きな権威構造に飲み込まれる自己・他者のありよう、そして過酷で不条理な状況を問う作品。これまでの作品を生み出した政治的出来事や各作品における小道具の役割をたどりつつ、自身の“独裁的な振る舞い”を省みる。
チェルフィッチュ「宇宙船イン・ビトゥイーン号の窓」
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2023年9月30日(土)~10月3日(火)
京都府 ロームシアター京都 ノースホール日本語を母語としない俳優との協働で生まれ、8月に東京で初演されたばかりの、チェルフィッチュ新作。舞台はある国が消滅した後の世界。重大なミッションを果たすため宇宙船イン・ビトゥイーン号が宇宙へ出発するが……。
アリス・リポル / Cia.REC「Lavagem(洗浄)」
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2023年10月6日(金)・7日(土)
京都府 ロームシアター京都 ノースホールブラジルの振付家アリス・リポルが手がけ、リオデジャネイロのスラム街のパフォーマーたちによるダンス作品。“洗浄”を意味する「Lavagem」をタイトルに掲げる本作では、複雑化する社会構造、分断が進む人間関係の中で、“洗浄”の対象となるべきものは何かを問いかける。
バック・トゥ・バック・シアター「影の獲物になる狩人」
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2023年10月7日(土)・8日(日)
京都府 ロームシアター京都 サウスホール知的障害のある俳優を中心としたオーストラリアのインクルーシブシアター、バック・トゥ・バック・シアターの日本初演作。舞台はとある市民集会。人工知能の危険性について議論するべく、障害のある活動家3人が席についているのだが……。
山内祥太&マキ・ウエダ「汗と油のチーズのように酸っぱいジュース」
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2023年10月7日(土)~9日(月・祝)
京都府 THEATRE E9 KYOTOデジタル技術と身体表現を掛け合わせるアーティストの山内祥太と、嗅覚アーティストのマキ・ウエダがタッグを組み、“匂い”をテーマにした作品を立ち上げる。観客から集めた体臭を香水へと作り変え、それをさまざまな香料と混ぜ合わせることで”匂いのジュース”を作り上げる。集められた人間の匂いと、愛する匂いのエピソードが共鳴することで、匂いの楽園が誕生する。
中間アヤカ「踊場伝説」
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2023年10月9日(月・祝)~15日(日)※10月12日は休演日。
京都府 養正市営住宅6棟跡神戸在住のダンサー、中間アヤカが関西コンテンポラリーダンス界で口伝されているさまざまな“伝説”に注目し、リサーチを行うことで伝説の構造を紐解き、再構築していく。1日を通してパフォーマンスやイベントが展開し、パフォーマンスの内容は公演期間中も変化し続ける予定。
ルース・チャイルズ&ルシンダ・チャイルズ「ルシンダ・チャイルズ 1970年代 初期作品集:Calico Mingling, Katema, Reclining Rondo, Particular Reel」
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2023年10月13日(金)~15日(日)
京都府 京都市京セラ美術館 中央ホールポストモダンダンスを代表する振付家ルシンダ・チャイルズの姪で、スイスを拠点とするダンサー・振付家のルース・チャイルズが、ルシンダの1970年代の4作品に新たな命を吹き込む。
デイナ・ミシェル「MIKE」
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2023年10月20日(金)~22日(日)
京都府 京都芸術センター 講堂カナダの振付家、ライブアーティストのデイナ・ミシェルによる新作。ワーク・ライフ・バランスをテーマに掲げ、自身の身体と“仕事”にまつわるオブジェクトを用いた、即興的パフォーマンス作品を繰り広げる。
マリアーノ・ペンソッティ / Grupo Marea「LOS AÑOS(歳月)」
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2023年10月21日(土)・22日(日)
京都府 京都芸術劇場 春秋座アルゼンチンの作家・演出家マリアーノ・ペンソッティによる本作では、2020年と2050年という2つの時間軸が1つの舞台の上で同時進行する。主人公マヌエルは、とあるドキュメンタリー映画で脚光を浴びるが、30年後の彼は過去の人や場所との関係性を再構築しようとしていて……。
サムソン・ヤン「The World Falls Apart Into Facts」
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2023年9月30日(土)~10月22日(日)
京都府 京都芸術センター ギャラリー南香港生まれのサウンドアーティスト、サムソン・ヤンが中国を代表する民謡「Molihua(茉莉花)」の系譜をたどるインスタレーション作品。その国のオリジナルと捉えられる文化的系譜の多くも、実は他国の文化を転用したものや影響されたものであるということが明らかになる。
【Super Knowledge for the Future[SKF](エクスチェンジプログラム)】
- プレイベント ウィチャヤ・アータマート「父の歌(5月の3日間)」上映会&トーク
- 伝承でたどる妖怪まちあるき 平安神宮~真如堂~相国寺
- アリス・リポル 特別トーク
- バック・トゥ・バック・シアター ワークショップ ブリトニーの無意識
- インキュベーション キョウト「シアター?ライブラリー?」
- シアター?ライブラリー?関連企画(1)「アイデンティティの『まぜまぜ』は可能か?」
- シアター?ライブラリー?関連企画(2)「ことばの混交の果てに──『クレオール主義』30年」
- ルース・チャイルズ ワークショップ
- 芸術文化とファンドレイジング—観客・サポーターとの未知の関係性!?
- メディアとしての染織—歴史・テクノロジー・アート
- KEXラジオ
- 批評プロジェクト 2023