吉祥寺ダンスLAB. vol.3「PAP PA-LA PARK/ぱっぱらぱーく」かえるP 大園康司×橋本規靖 対談|いろいろな人がいて、時間がある──公園で過ごすように劇場を感じて

この空間でゆったりと過ごしてほしい

──稽古場のホワイトボードには、2005年に開設された架空の公園の歴史が記されていました。フェスが開催されたり、ボールの使用が禁止になったりと、15年分の歴史がポイントでまとめられています。

左から大園康司、橋本規靖。

大園 作品ではその歴史をそのままたどるわけじゃなくて、あえて言うなら、公園のいろいろな時間帯の光景を見せる感じになると思います。場所に力をもらうということをテーマにしているので、例えば吉祥寺シアターは今年15周年ですけど、15年前にできたのが劇場じゃなくて公園だったとしたら、ここでどんな出来事が起こっていたかを想像しながら作ってみたいなと。

──公園の時間と空間が、劇場の中にどう立ち上がっていくのか楽しみです。また今回は、中村友美さんが美術を手がけられます。

大園 最初に中村さんにオファーしたときは、まだ作品のフレームがかっちり決まってなくて、プレイパークのイメージが強いまま話したんですよね。だから劇場内で同時多発的にいろいろなことが起こっているという空間構成を考えてもらっていたんですけど、自分たちがこの場所で本当にやりたいことは何かを考えた結果、やっぱり作品をしっかり観てもらいたいと思ったので、上演は上演としてきちんとできるような空間作りになりました。ただし上演の前後では、“劇場ではあるけれど劇場ではない、広場としての空間”がいかに作れるか、考えています。

──今回は開場が14:00から16:00までで、公演は14:30からの45分。確かに上演時間以外の部分に幅がありますね。

大園 僕らとしてはいつでも来ていいし、いつでも帰れるという時間設定にしたくて、その自由度があるといいなと思ってます。

橋本 お客さんには劇場でぜひゆっくり過ごしてもらいたいですね。

──客席は観客が任意で決められるのでしょうか?

大園 理想はそうですが、密を避けるため、客席エリアは区切り、その中で席を選んでいただく感じになると思います。

──また本公演は「小さなお子さま連れでも安心!」と謳われており、幅広い観客が想定されていますね。noteで展開中のクリエーションレポートでもお二人のお子さんが稽古場を走り回っていて、微笑ましいなと感じました。

チラシ中面に書かれた“公園”のイメージ。

橋本 上演はできるだけオープンにしていきたくて、お客さんが一緒に踊ってくれたりしたらいいなと思っています。ただクリエーション中に子供がいるのはどうかなー。いいこともあるけど……。

大園 全然作れなかったですね(笑)。

一同 あははは!

1人でもできる、でも1人ではできない

──チラシには、「自分たちの環境が大きく変遷した2020年、さらにコロナという未曾有の事態が重なり、活動そのものも変化を余儀なくされました。そのなかで自分たちがダンスを踊る意味について日夜考えています」という思いが書かれていました。クリエーション中の現在、まだその意味を探している過程だとは思いますが、どんな実感がありますか?

橋本 「密はダメ」と言われていますが、クリエーションの間はどうしても密着せざるを得ないことがあって。やりたいこと、見たい風景を求め続ける限り、僕らは密着するってことを避けられないんだなってことがはっきりしました。触れ合ったり話し合ったりすることは生理的に必要で、電話だけとかオンラインだけでは埋められないものが存在するんだなってことを感じています。

大園 そうですね。ダンスって1人でもできるものなんですけど、少なくとも僕にとっては1人でできないものだと思うんですね。誰かがいて、その人に対して踊ってもらったり観てもらったり、誰かと場を共有するための手段として踊りがあるってことを今感じているところです。そのために自分の身体があって、ダンスがあるんだと思います。

──またコロナによって、都心を離れるなど住環境を変える人も出てきたと聞きます。どこで暮らし、どこを活動の拠点にするかは、どんな未来を思い描くかということに関係していると思いますが、かえるPは今後、北海道と東京の2拠点で活動を展開することについて、どんな未来をイメージしていますか?

左から橋本規靖、大園康司。

大園 契約制だった(笑)活動初期の頃に、80歳くらいになったときにバカ売れしようって話をよくしてて。「80歳の世界的スターになると考えれば、今は長い下積み期間だと考えることもできるよね」って。

一同 あははは!

橋本 「80歳になっても今みたいな取っ組み合いの動きができたら、そんなカンパニーはほかにないよね」って(笑)。ただ、2拠点と言っても北海道って飛行機で東京から1時間くらいなので、実は日帰りできない距離ではないんですよ。だから実際、今までとあまり変わらないんじゃないかとも思います。

大園 先ほどもお話しした通り、必要がなければ会わないスタンスで、正直普段は何をやってるのかよく知らないし、これまでも各々のことをやりながら過ごしてきたので、それは今後も変わらないんじゃないかな。でもその感じが、長く続いている要因なのかなとも思います。

──「平行線」と言いつつ、“熟年夫婦”のように息の合ったお二人のトークに、10年の重みを感じました。

大園橋本 あははは!