「ミュージカル『薄桜鬼』」の最新作「ミュージカル『薄桜鬼 真改』土方歳三 篇」が4月に上演されることを記念して、時代劇専門チャンネルでは3カ月連続企画「ミュージカル『薄桜鬼』土方歳三祭!」を開催。3月に「ミュージカル『薄桜鬼』新選組奇譚」、4月に「ミュージカル『薄桜鬼 真改』山南敬助 篇」、5月に「ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇」が放送されるほか、土方歳三を演じた歴代キャストが集結した特別番組「もっと集まれ!土方歳三PARTY」前後篇が4・5月にオンエアされる。また、配信サービス・スカパー!番組配信では、3月1日より、「ミュージカル『薄桜鬼』土方歳三 篇」「ミュージカル『薄桜鬼』黎明録」を配信中。
ステージナタリーでは、3月上旬に収録された「もっと集まれ!土方歳三PARTY」の様子をレポート。さらに、特別番組に出演したキャストの中から、「ミュージカル『薄桜鬼』」初代・土方歳三役の矢崎広、当代の土方歳三役であり、最新作「真改 土方歳三 篇」で主演を務める久保田秀敏に、土方歳三という人物を通して見えてくる「ミュージカル『薄桜鬼』」の魅力について語ってもらった。
取材・文 / 興野汐里撮影 / 須田卓馬
ヘアメイク / 城本麻紀、橋本紗希スタイリスト / MASAYA(PLY)
「もっと集まれ!土方歳三PARTY」をちょい見せ!
桜舞う春にぴったりな作品といえば「薄桜鬼」。寒さも和らいできた3月上旬のある日、東京都内のスタジオに「ミュージカル『薄桜鬼』」シリーズで土方歳三を演じた歴代キャストが集結した。記念すべき1作目「ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇」(2012年)から「ミュージカル『薄桜鬼』風間千景 篇」(2014年)までの公演に出演し、初代・土方役を務めた矢崎広、「ミュージカル『薄桜鬼』藤堂平助 篇」(2015年)に出演した井澤勇貴、「ミュージカル『薄桜鬼』黎明録」(2015年)で土方役を演じ、その後、鬼の頭領・風間千景役を務めている佐々木喜英、「ミュージカル『薄桜鬼』新選組奇譚」(2016年)から「ミュージカル『薄桜鬼』原田左之助 篇」(2017年)までの公演に出演した松田岳、「ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇」(2021年)から現在に至るまで、土方役として「ミュージカル『薄桜鬼』」カンパニーを率いる久保田秀敏。「ミュージカル『薄桜鬼 志譚』土方歳三 篇」(2018年)と「ミュージカル『薄桜鬼 志譚』風間千景 篇」(2019年)に出演した和田雅成は、残念ながら今回の収録に参加することがかなわなかったが、「もっと集まれ!土方歳三PARTY」では、和田がキャスト陣に宛てた手紙が披露される。
5人が出演する「もっと集まれ!土方歳三PARTY」は、土方役のキャストたちが一堂に会し、ゲーム対決やトークを繰り広げる特別番組。なお2022年には、斎藤一役の松田凌、橋本祥平、納谷健、大海将一郎が出演した特別番組「集まれ!みんな斎藤一PARTY」が放送され、好評を博した。
「もっと集まれ!土方歳三PARTY」では、まず初代の矢崎がMCを担当。その後、“後輩”たちが順番にMCを務め、マイクをつないでいく。舞台上で鬼の副長・土方を演じる姿とは打って変わって、朗らかな表情を見せる5人のキャストたち。アイドリングトークで「(自分たちの)心はいつも土方歳三!」という発言が飛び出すなど、5人は土方愛を隠しきれない様子だ。
場が温まってきたところで、矢崎・井澤による“先輩土方”チーム、佐々木・松田・久保田による“後輩土方”チームに分かれ、ゲーム対決をすることに。「ミュージカル『薄桜鬼』」の舞台映像を観ながら、虫食いになっている箇所のセリフをカッコよく答えるゲームでは、力強いセリフの言い回しに実際の舞台さながらの熱量を感じることができ、土方が俳句好きであることにちなんで、即興で“おもしろ俳句”を考えるコーナーでは、キャストたちの素のやり取りを垣間見ることができる。そのほかにも、俳優としてのキャリアを生かした演技力バトル、お題に合わせて互いの“映え”写真を撮影するコーナーや、キャストたちが本気で挑むチャンバラ対決といったバラエティ豊かなコーナーが目白押しだ。さらに、キャスト陣が土方を演じるうえでこだわったポイントや、苦労したところなどを吐露するトークパートもあり、「ミュージカル『薄桜鬼』」ファンにうれしい構成となっている。
勝利を手にするのは“先輩土方”チームか、はたまた“後輩土方”チームか。負けたチームに待ち受けるドキドキの罰ゲームとは? 答えは放送を楽しみにしておこう。
さらに、視聴者限定のプレゼントキャンペーンも実施。番組内のゲームで実際に使用されたサイン入りグッズや、出演者集合のオリジナルフォトカードなどが合計100名以上に当たる。特別番組の前後篇それぞれで発表されるキーワードを集めて応募可能。応募開始は5月11日の特別番組後篇の放送終了後より、特設サイトの応募フォームにて。
初代と当代、2人の土方歳三が熱く語らう
──「もっと集まれ!土方歳三PARTY」には、「ミュージカル『薄桜鬼』」で土方歳三役を演じた矢崎さん、久保田さん、井澤勇貴さん、佐々木喜英さん、松田岳さんが出演したほか、和田雅成さんが皆さんに宛てたお手紙も披露されました。皆さん和気あいあいとトークされていましたね。
久保田秀敏 みんなでふざけましたねー(笑)。すごく良い雰囲気で収録できたと思います。4月に上演される「ミュージカル『薄桜鬼 真改』土方歳三 篇」が始まる前に、土方役を演じた歴代キャストの皆さんとお会いする機会をいただけて本当に良かったです。土方を演じるうえでどっしり構えていないといけないなと、初心に返ることができました。
矢崎広 自分が演じた土方という役が今もまだ生き続けているということがわかって、素直にうれしかったですね。「ミュージカル『薄桜鬼』」では鬼の副長・土方を演じた僕らですが、「もっと集まれ!土方歳三PARTY」では役とは違った一面もお見せできたんじゃないかと思います(笑)。番組で注目してほしいのは、5人が代わる代わるMCを務めたところ。みんながそれぞれ副長としてどのようにリーダーシップを取っているのかが垣間見えて、ファンの方にも楽しんでもらえると思います。
──矢崎さんは「ミュージカル『薄桜鬼』」の1作目「ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇」(2012年)から「ミュージカル『薄桜鬼』風間千景 篇」(2014年)までの公演に出演し、初代・土方役を務めました。久保田さんは「ミュージカル『薄桜鬼 真改』相馬主計 篇」(2021年)から最新作「真改 土方歳三 篇」で土方役を演じています。お二人が土方という人物を立ち上げるうえで、特に意識したのはどんなところですか?
矢崎 2012年の初演には、近藤勇が登場しなかったんです。なので、「ミュージカル『薄桜鬼』」のカンパニーにおいても、自分が土方のような立場になって、みんなを引っ張っていかないといけない、という気持ちだったのを覚えています。当時は役作りの一環として、土方さんのお墓や、新選組のメンバーが剣術の修行をしていた道場・試衛館の跡地に行って、新選組が生きていた時代の空気を感じる旅をしました。「ミュージカル『薄桜鬼』」の原作は乙女ゲームだから、2.5次元作品において「カッコいい」と言われることを目指すのに対して、このときはむしろ逆の役作りをしていて、当時のキャストはみんな「泥臭くやろうぜ!」という共通認識を持っていたと思います。
久保田 やっぱりみんな、土方にゆかりのある場所を巡るんですね。僕もつい先日、新選組の屯所だった京都・旧前川邸に行って、特別に母屋を見せていただいたんですよ。今、旧前川邸に住まれているご一家にお話を伺って、柱に残った刀傷を見せていただいたりしました。「薄桜鬼」という作品ももちろん愛しているけれども、それ以前に僕は新選組という存在が大好きで。彼らがどんな環境でどんなふうに生きたのか、どういう景色を見ながら命を燃やしたのかを自分の肌で感じたかった。これは、土方を演じるうえで大きな経験になったと思います。
矢崎くんが言ったように、「ミュージカル『薄桜鬼』」に出演したキャストたちは熱い人たちばかりで、みんな心の根底に“時代を変えるためにもがいた隊士たちの魂”を持っている。だからこそ「ミュージカル『薄桜鬼』」シリーズは長年にわたって続いてきたし、お客さんたちもついて来てくれたんじゃないかなと思います。
矢崎 確かに、「ミュージカル『薄桜鬼』」はどこまでも追いかけていきたいと思わせてくれる作品。どの公演も、その公演ごとに違うカラーの新選組がしっかりできあがっているから、本当にすごいなと思って。僕の次に土方役を演じた勇貴は、最初に代替わりを経験した土方。僕らが「ミュージカル『薄桜鬼』」にかけた思いをすべて背負って、舞台に立ってくれたんですよ。まずそこにすごく感謝しています。ヒデくん(佐々木)は、「ミュージカル『薄桜鬼』黎明録」(2015年)で土方のエピソードゼロを演じて、新しい土方像を開拓してくれました。岳はきっと、今までみんなが演じてきたそれぞれの土方が大好き。だから、ほかの人が演じた土方をものすごく研究して、自分の中に落とし込み、さまざまな要素を持った土方を立ち上げてくれたと思います。和田くんは、西田(大輔)さん版の土方を象徴するような存在だと思っていて、「自分たちが新しいミュージカル『薄桜鬼』を作っていく」という気概を感じたんですよね。久保田くんこそ、僕たちがつないできた土方のバトンを持つにふさわしい存在。これまで「ミュージカル『薄桜鬼』」に出演してきたキャストの意思を継ごうと思ってくれていることを強く感じます。でも、むしろ今までの“誠”は忘れて、久保田くんなりの新しい“誠”を作ってほしいとすら思う。次の「真改 土方歳三 篇」もすごく期待しています!
久保田 初代の土方にそんなことを言ってもらえるなんてなあ……。「ミュージカル『薄桜鬼』」に出演するにあたって、皆さんが出演したときの映像を拝見したんですけど、あまり観すぎるとほかの方が演じた土方が心に残ってしまうから、映像を観るのは最小限にとどめてきたんですよ。皆さんが代々受け継いできた“誠”だけはぶらさず、時代に合わせてバージョンアップさせながら、新しい土方像を作っていけたらと思っています。土方として、板の上で倒れても良いぐらいの覚悟はできているので、「真改 土方歳三 篇」の公演に向けて稽古でどこまで積み上げられるか。あとは自分との闘いですね。
矢崎 久保田くんのお話を聞いていて、僕も似たような思想を持ちながら土方を演じていたことを思い出しました。何と言ったら良いのかな。言葉にするのがすごく難しいんですけど……「これは『薄桜鬼』である前に新選組の物語だ!」と思って舞台に立っていました。「薄桜鬼」という素晴らしい原作はもちろん、新選組の泥臭くて熱い生き様をお客さんに見てもらいたかったんですよね。
──「ミュージカル『薄桜鬼』土方歳三祭!」と題された時代劇専門チャンネルの企画では、土方をはじめ、新選組の面々が命を燃やして戦う「ミュージカル『薄桜鬼』」シリーズや、このたび収録された特別番組「もっと集まれ!土方歳三PARTY」が、3カ月連続で放送・配信されます。
矢崎 改めて考えると、自分が最後に「ミュージカル『薄桜鬼』」に出演してからもう10年くらい経ってるんですよ。卒業してからもこういった形で「ミュージカル『薄桜鬼』」に携わらせていただけて光栄ですし、「ミュージカル『薄桜鬼』が長く愛されるシリーズになったら最高だよな!」という当時の願いが実現したこともすごくうれしいです。今後、自分がどれだけ「ミュージカル『薄桜鬼』」に関わることができるかわからないですが、ずっと応援したい作品であることには変わりはないので、皆さんも引き続き「ミュージカル『薄桜鬼』」を愛していただけると幸いです。
久保田 新選組の隊士たちの思い、そして矢崎くんたち歴代キャストの思いを、僕らが板の上で体現して、セリフ一言一言すべてに魂を込めてお客さんにお届けしています。「ミュージカル『薄桜鬼』」、まだまだ終わらせるつもりはありません! 「真改 土方歳三 篇」で新たな伝説がスタートします。「ミュージカル『薄桜鬼』」シリーズを放送・配信で楽しんでいただきつつ、新作もぜひ観に来てもらえるとうれしいです。
プロフィール
矢崎広(ヤザキヒロシ)
1987年、山形県生まれ。2004年にミュージカル「空色勾玉」でデビュー。以降、舞台を中心にテレビや映画、ラジオなど幅広く活躍。近年の主な出演舞台に「舞台『鬼滅の刃』」シリーズ、ミュージカル「ダーウィン・ヤング 悪の起源」、「アメリカの時計」、少年社中「テンペスト」などがある。7月より、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に出演予定。
久保田秀敏(クボタヒデトシ)
1987年、福岡県生まれ。主な出演舞台に「ミュージカル『テニスの王子様』2ndシーズン」「ミュージカル『憂国のモリアーティ』」シリーズ、「舞台『血界戦線』」シリーズなどがある。5・6月に「女の友情と筋肉 THE MUSICAL -幸せの上腕二頭筋-」に出演予定。