上映後、来場者3組にも感想を聞いた。
1組目は同ホールの元所長・加藤さん。実は、今回の上映会の大きなきっかけを作ったのが加藤さんだった。
「昨年、所長時代に岡山芸術創造劇場ハレノワで全国公立文化施設協会の定時総会・研究大会(編集注:公立文化施設の関係職員、地方公共団体文化行政担当者など、関係者が一堂に会する会合)で、EPADさんの説明会と8K定点映像の上映会があったんです。それを拝見して、非常に臨場感を感じましたし、館の大きさや条件などを考えたときに文化の森のホールに適しているんじゃないかと思いました。それで文化の森の担当者に話をして予算を取り、上映会が実現したという感じです。徳島はホールや劇場が少ない県で、普段私もあまり舞台を観る機会がないのですが、今日の上映会は実際に舞台を観ているような気分になれてよかったです」
あまり舞台を観る習慣はないと話す加藤さんに「今後もまた上映会があったら参加したいか?」と尋ねると、「はい」と即答。
「機会があれば観たいと思っていますし、県内にそういう場所がもっとあるといいですね。今回の『ルーシー』も良かったですし、やっぱり楽しい舞台を観てみたいです」
そう言って笑顔になった。
2組目はご夫婦で参加された森さん。夫の俊樹さんは、以前東京で働いていた頃、よく舞台を観ていたが、地元・徳島に帰ってからは観る機会が減ったと言う。妻の由記子さんは宝塚歌劇が好きで、兵庫県の宝塚まで遠征することもあるそう。2人は今回、「舞台映像上映 Reライブシアター」を初体験した。
「良かったですね。映画とは違う、舞台ならではの雰囲気が好きなのですが、『舞台映像上映 Reライブシアター』は臨場感もあったし、実際の舞台のような感覚で没入できました」(俊樹)
「等身大で投影されるのが良かったです。徳島におると本格的な舞台をあまり観る機会がないのですが、感覚ごと体験できる感じがしました」(由記子)
かつてはテレビの舞台中継をよく観ていたと話す俊樹さんは、上映会のパンフレットを観ながら「いろいろなところで、いろいろな作品がやられているんですね!」と興味津々の様子。
「徳島には来ないような、小劇場の作品もやってくれたらいいなと思います」(俊樹)
一方、由記子さんは定点映像が気に入ったそう。
「DVDで舞台を観ることもありますが、寄り引きがあると舞台を観ているような没入感は感じにくいし、自分が本当に観たい役者さんが見えなかったりすることもあります。私は推しの役者さんを舞台上でも追いかけたいので、大きなスクリーンで定点映像が観られるのがすごくいいなと思います!」
最後は、今年度の「舞台映像上映 Reライブシアター」ツアー最初の地、香川県のレクザムホール(香川県県民ホール)の職員、阿部さんがインタビューに応じてくれた。レクザムホールでは8月にこまつ座「母と暮せば(2024ver)」と二兎社「ザ・空気 ver.3そして彼は去った…」が上映された。阿部さんが上映作品を観るのは今回が3回目だと言う。
「前回、定点収録映像を観て、人物のサイズ感がリアルですごいなと思い、もっといろいろな作品を観てみたくなって、今回参加しました。最初は映像だと思って観始めますが、いつの間にか没入して、映像であることを忘れてしまう瞬間がありますね」
阿部さんは舞台芸術が大好きだそうで、気になる作品を観に大阪や東京へ行くこともしばしば。
「でもスケジュールの調整や交通費などの出費も大変ですし、こういう形で観たかった作品が観られるのはうれしいです。しかも自宅のテレビなどではなく、劇場で観劇の擬似体験できるのがすごく貴重です」
さらに阿部さんは、劇場関係者としても「舞台映像上映 Reライブシアター」に可能性を感じていると言う。
「たとえばテント芝居にいきなり行きづらい人がいるかもしれませんが、映像でどんなものかがわかればそれがきっかけになってお芝居に興味を持ってくれるかもしれない。『舞台映像上映 Reライブシアター』をきっかけに生の舞台にハマってくれたらすごくいいですよね」
「舞台映像上映 Reライブシアター」はこのあと、10月25日に宮崎・都城市総合文化ホール 大ホール、11月1日に高知・高知県立県民文化ホール グリーンホールと三重・三重県文化会館 中ホール、16日に兵庫・福崎町エルデホール メインホール、29日に兵庫・神戸文化ホール 中ホールと福岡・SAWARAPIA福岡県立ももち文化センター、12月20日に鳥取・境港市民交流センター みなとテラス 市民ホールでも開催される。




