EPADが切り拓く、舞台芸術の新たな未来を考える6時間|「EPAD 2024年度事業報告シンポジウム」レポート

2020年に立ち上がったEPADは、文化庁や舞台芸術界と連携して進める、舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(Eternal Performing Arts Archives and Digital Theatre)。舞台芸術の新たな可能性の創出、収益化、利活用を目指して、多彩な展開を広げている。

立ち上げから4年となる2024年12月、紀伊國屋ホールにて「EPAD 2024年度事業報告シンポジウム」が開催され、2024年度に行われた多彩な活動報告と、今後の展開に関する議論が6時間にわたって行われた。

ステージナタリーでは、そのシンポジウムの様子を3回にわたってレポート。有識者や関係者たちの発言から、EPADが切り拓く舞台芸術の新たな可能性が垣間見える。

構成 / 熊井玲

EPADとは?

一般社団法人EPADが文化庁や舞台芸術界と連携して進める、舞台芸術アーカイブ+デジタルシアター化支援事業(Eternal Performing Arts Archives and Digital Theatre)の略称。EPADは、2024年3月時点で舞台芸術映像約2800作品(権利処理サポート含む)、戯曲約900作品、写真やデザイン画など舞台美術資料約20000点を取り扱っており、それらのデジタルアーカイブ化や利活用を進めると共に、収録、保存、配信、上映、教育利用などの標準化と、利用を可能にするための権利処理のサポートを行うことを通して、舞台芸術の収益力や対外発信の強化を支援することを目的として活動している。

「EPAD 2024年度事業報告シンポジウム」で語られたこと

2024年度のEPADは「保存・継承」「情報の整理・権利処理サポート」「作り手と観客の新たなマッチング」「教育・福祉などへのパッケージ提供」「ネットワーク化と標準化」の5つの柱を中心に活動を展開。「EPAD 2024年度事業報告シンポジウム」では、それぞれの柱に対する2024年度の活動実績が報告されたほか、今後の課題が議論された。

なおシンポジウムは、3つのテーマごとにパネリストを変えて展開。主に舞台映像の収録・収集にまつわる課題について語られた①「舞台芸術アーカイブの到達点と展望~EPAD2024の成果から考える~」には、吉見俊哉(デジタルアーカイブ学会会長 / 國學院大学教授)、岡室美奈子(早稲田大学文学学術院教授)、福井健策(EPAD代表理事)が登壇し、EPAD理事の伊藤達哉が司会を担当。舞台映像の上映や地域での展開について語られた②「公立文化施設が舞台芸術デジタルアーカイブを活用する未来」には、2024年度に舞台映像の舞台芸術関係者向け上映会「EPAD Re LIVE THEATER」に関わった白井佳奈(神戸市文化スポーツ局)、坂元奈未(長久手市文化の家)、萩原宏紀(いわき芸術文化交流館アリオス)、久保田力(サザンクス筑後)、浦島浩史(北海道立道民活動センター かでるアスビックホール)が登壇し、司会をEPAD理事で三重県文化会館副館長の松浦茂之が務めた。教育現場での舞台映像の利活用について語られた③「教育分野での舞台公演映像活用の可能性」には矢内原美邦(ニブロール / 近畿大学教授)、横堀応彦(ドラマトゥルク / 跡見学園女子大学准教授)、緒方靖弘(寺田倉庫執行役員・アーカイブ事業担当 / EPAD理事)が登壇し、司会を有限会社quinada代表取締役でEPAD理事の三好佐智子が務めた。