舞台「ちょっと今から仕事やめてくる」橋本祥平&梅津瑞樹が考える“働くこと、生きること” (2/2)

生演奏やタップダンスで彩るエンタメ作品

──町田慎吾さんが演出を手がける本作には、橋本さんや梅津さんのように登場人物を演じるアクターが出演するほか、パフォーマーとしてタップダンサーやミュージシャンの方々が参加します。バイオリンやピアノの生演奏、映像演出などの要素を織り混ぜながら、ストレートの会話劇ではなく、エンタテインメント作品として舞台が立ち上げられていくそうですね。

梅津 町田さんとは舞台「紅葉鬼」(参照:陳内将・梅津瑞樹ら出演「紅葉鬼」続編が開幕、千秋楽ライブ配信&BD/DVD化決定)でご一緒させていただいたのですが、その際も生演奏の形式を取っていたんです。今回の公演では、さまざまな仕掛けがお芝居とどう絡んでくるのか楽しみですね。一対一で会話するシーンが多いので、舞台を彩る演出があると僕らとしてもすごく安心です。

橋本 この作品を上演すると聞いたとき、お芝居だけでシアター1010の大きな空間を埋められるのかな?と少し不安な気持ちがあったんです。かつ、青山の感情がダイレクトに伝わってしまって、しんどい思いをされるお客さんもいるんじゃないかなって。

橋本祥平

橋本祥平

梅津 確かに、静かな環境で祥平がずっと叱られているシーンが続いたら、心が痛くなって席を立っちゃうかもしれない(笑)。観に来てくださるお客さんの中には、観劇前日や当日に職場で嫌なことがあって、「今日の観劇こそが生きがいだ!」と思ってくれている方もきっといると思うんです。物語の内容をストレートに伝えてしまうと、そういう方々は特に「ここ(劇場)でもつらいことが起こるのか!」と感じてしまう可能性があるよね。

橋本 そうですね。だから、生演奏やパフォーマンスの力を借りて物語をエンタメに昇華させることによって、見やすい形で届けるのはすごく良い試みだと思います。

役を演じることで人生が変わっていく

──「ちょっと今から仕事やめてくる」では、ヤマモトと関わることによって青山の人生が変化していく様子が描かれます。お二人が俳優として活動する中で、ご自身の人生が変わるきっかけになった出会いや出来事があれば教えてください。

橋本 青山がヤマモトと出会ったように、誰と出会ったかがすごく大切なことだと思っていて。(本公演の主催である)トライフルエンターテインメントさんの公演で、初めて原作ものの舞台に出演したのですが、その現場で学んだことや、若い頃に先輩方から教えてもらったイズムを今でも大事にしていますし、やっぱりご縁は大切にしないといけないなと思います。

梅津 人生が変わった瞬間かあ……。僕は、割とすべてが地続きだと感じていて、あるタイミングで何かがバチッと変わるというよりは、積み上げてきたものによって、自分の方向性が変化していくんじゃないかと思うんです。「舞台『刀剣乱舞』」に出演させていただいたことが転機の1つだという話はインタビューでよくするんですが、多くのお客さんが梅津瑞樹という俳優の存在を認識したのが「舞台『刀剣乱舞』」であって、僕の人生はその前からずっと続いていた。「舞台『刀剣乱舞』」のおかげで陽の当たる場所に連れて来てもらったのは間違いないんですけど、何かしらの作品に携わるごとに、少しずつ人生が変わっていっていると思うんです。だって、今までつゆほど考えもしなかった思想が、キャラクターを通して自分の中に入ってくるわけですから。それが発芽して、あのときにあの役をやったから、今の自分はこんなことを考えるようになったのか、と思うことが多々ありますね。

梅津瑞樹

梅津瑞樹

橋本 確かに。そう考えると自分はかなり役に影響されているなと思います。以前、人間と人間ではないチームが敵対する作品に出演したことがあって、「どうしたら人間ではない生き物と仲良くなれるんだろう?」と考えたとき、やはりしっかり相手と向き合って対話することが一番だと気付いたんです。その作品がちょうどコロナ禍の真っ最中に上演されたこともあって、「できることなら、自分もウイルスと対話してどうにか現状を打破したい!」と思いましたね(笑)。

梅津 ははは! 「コロナよ、どうして君たちはこんなことをするんだ!」「発熱しても38℃いくか、いかないかくらいにしてもらえませんか?」って交渉するとか?(笑)

橋本 「せめてもう少し感染力を弱められませんか?」みたいな(笑)。

梅津 ……ってこれ何の話!?(笑)

左から梅津瑞樹、橋本祥平。

左から梅津瑞樹、橋本祥平。

余韻をかみ締めながら1駅長く歩いて

──働くこと、そして、生きることをテーマにした本作ですが、プレスリリースに「スカっとできて最後は泣ける、観劇後に元気の出る作品」という紹介文が掲載されていたのがとても印象的でした。最後に、観劇を楽しみにされている方々にエールをいただけますか?

橋本 日常生活を送る中で、皆さんそれぞれ大変なことがあると思うのですが、決して1人ではないということに気が付いてもらえたらうれしいですね。青山というキャラクターを通して皆さんに勇気を届けられるようにがんばりますので、ぜひ劇場にてご覧ください!

梅津 お客さんがみんな「私もちょっと今から仕事やめてこよう!」ってなったらどうしよう(笑)。

橋本 ははは!

梅津 今いる会社と水が合わない人もいると思うんですけど、もしかすると違う会社に行ったらうまくいくかもしれない。だから、別に辞めても良いんじゃない? 違う仕事を探しても良いんじゃない?って思うんです。逆もしかりで、ほかの会社に行ったからといって、必ずしもうまくいくわけではない。例えば、働くことは苦痛を伴うものだと割り切ったうえで、日常生活を豊かにするための取り組みを外部でやっている人もいますし、考え方は人それぞれだと思うんです。願わくば、観劇後に余韻をかみ締めながら1駅分長く歩いて、「明日からどう生きていこうかな」と考えてもらえるきっかけになったらうれしいなって。

橋本 それ、めっちゃ良い!

梅津 とにかく皆さんにお伝えしたいのは、「北千住にこぞれ!」ということです。ぜひ有給を使って観に来てください(笑)。

左から梅津瑞樹、橋本祥平。

左から梅津瑞樹、橋本祥平。

プロフィール

橋本祥平(ハシモトショウヘイ)

1993年、神奈川県生まれ。2013年に「陽炎ペイン」で舞台デビューし、2016年の歌劇「明治東亰恋伽~朧月の黒き猫~」で初主演を務めた。主な舞台出演作に、舞台「デュラララ!!」、舞台「機動戦士ガンダム 00」、「ミュージカル『薄桜鬼 真改』」などがある。2023年3月に「『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Party Live-」、6月に舞台「文豪ストレイドッグス 共喰い」、8月に「舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭 -夢語刀宴會-」に出演予定。

梅津瑞樹(ウメツミズキ)

1992年、千葉県生まれ。2015年から2022年まで虚構の劇団のメンバーとして活動。主な舞台出演作に、「舞台『刀剣乱舞』」、舞台「紅葉鬼」、「ミュージカル『薄桜鬼 真改』」などがある。2022年に初の随筆集「残機1」が発売された。2023年3月に公開される「映画刀剣乱舞-黎明-」、8月に開催される「舞台『刀剣乱舞』七周年感謝祭 -夢語刀宴會-」に出演予定。